2015年12月24日
"ご近所さん"の関係からはじめる、
都市で働く人をつなぐコミュニティ
interview 永倉慎太郎さん
株式会社パイロットの永倉さんからコーディングファクトリーへお問い合わせをいただいたのは、確か2013年の夏頃だったと思います。
その後も年に何度か案件依頼をいただいたり、モノサスのパーティーにも来ていただくなどしていたのですが…
今年永倉さんから、“代々木にオフィスがある会社で集まり、意見交換やコラボを生み出す土壌となるような繋がりを作りたいなぁ”と、メールをいただきました。そして「代々木WEB制作寄り合い」を開催していただきました。私は営業ですが、つねづね制作者同士がざっくばらんに情報交換できるような集まりがあったら良いんじゃないかと感じていたので、そんな思いを実行できる永倉さんに共感しました。是非今後ご近所付き合い感覚で、何かを一緒にやってみたいと思っています。(モノサス 奥山 秀野)
“IT業界”だからこそ
密なコミュニケーションを求めて
10年ほど前、ウェブ制作会社「パイロット」に中途入社しました。まだ会社が立ち上がって2年ほど経った時で、メンバーは10名ほどの会社。もともと僕は、大きな組織のIT企業にいたのですが、そこではそれぞれの部門ごとに専任がいて、僕らはお客さんと直接話す機会はほとんどもらえない。仕方ないことではあるけれど、どんな小さな仕事でも、僕はお客さんのことを出来る限り理解した上で進めたかったんです。でも、「もっとこうしたい!」と思うことすらできないほど全体像が見えないまま、ある一箇所の限られた部分だけを制作するので精一杯。そこに漠然と違和感をもっていたから、もっとお客さんとコミュニケーションをとれる会社へ行こうと思って転職しました。
今は、お客さんの声もダイレクトにくるし、社内でもスタッフたちと距離が近い。何かあればすぐに話せる関係でいられるのが、すごく良いなと思って。案件の規模が小さくなったとしてもお客さんと近い距離で仕事ができるほうがおもしろいと思っています。
飛び込んだ知らない世界を
紐解きながら伝えていく
生まれは宮城県の仙台市で、大学まで暮らしていました。文学部だったのですが、ちょうど就職氷河期で。いろんな人と話したり、売り込んだりするのはあまり得意ではないので、営業職はできないなあと思っていて……(笑)。
僕が専攻していた文化人類学は、まったく知らない世界に入って、それがどういう仕組みで成り立っているのかを紐解いていくような学問で、フィールドワークもよくやりましたね。IT関係には疎かったのですが、当時は、SEという仕事が増えてきて、基幹業務のシステムを入れる全盛期のような時代で。システムといっても、ユーザー側の業務の要件を文字に起こして伝えていくような仕事が多かったんです。それを考えると、無理やりかもしれないけれど、まったく知らないクライアントや業界に入っていってヒアリングをして、図にしたり文字に起こしていくことは、大学で学んできた事とつながるのかなあと思っています。
都市生活を考え直すきっかけは
地方での働き方、暮らし方
うちの役員が、もともと大阪のシェアオフィスで働いていて。そこで一緒に働いていたデザイナーがたまたま神山町のグリーンバレーにサテライトオフィスをもっていたんです。その方に、神山がおもしろいからと誘ってもらったのをきっかけに、今年の3月に僕も一緒に神山に行きました。最初はなんでこんなど田舎に……と思っていたけれど、行ってみたら、「ああなるほど!」と(笑)。まったく知らない企業同士が集まって昼は仕事して、夜は一緒に飲んで。その光景がすごくおもしろいなと思いました。その帰りに和歌山市にあるシェアキッチンに寄ったんです。カフェスペースを使って、市内の企業の人が集まってセミナーを開いたりイベントをやっていました。
神山と和歌山、ふたつを同時に訪れてみて、「地方がおもしろい!」と思いました。僕は東京に10年暮らしているけれど、そういうコミュニティに出会ったことがない。周りにある企業数はものすごい数なのに、なんで点と点でしか存在できないのかなと違和感をもちはじめて。
故郷の仙台も地方都市だし、それからは東京でずっと暮らしていたので、最初に神山に行った時に「こんな生き方があるんだ」と感動しました。この地域の中で仕事も暮らしも成り立っていくことがすごいなと。環境はすごく田舎で、大きな古民家があって。車で通ったら通り過ぎてしまう光景だけど、一歩家の中に入ってみると、PCやサーバーがずらーっと並んでいて、そこでみんな仕事している。そのインパクトがすごく強かった。おじいちゃん、おばあちゃんしかいないような場所で、夜な夜ないろんな会社の若手たちが集まって飲んでいて。自宅から徒歩1分でオフィスに行ける環境もすごくいいし、ストレスもまったく違うだろうなあって。実際に住んでみたらいろいろ大変なこともあるとは思うのですが。
神山にサテライトオフィスを作ったのは、グリーンバレーの方に誘っていただいたのもありますが、僕らとしても実際に神山にいってみて、こういう場所で、東京ではできない働き方を作っていきたいという想いが生まれたのが大きくありますね。
まずは“ご近所さん”から
つながりを作る「ヨヨモク」
僕は営業ではなく内部にいたので、なかなか外とのつながりを持つのは難しい。はじめのミーティング以外は、直接会わずにメールでやりとりすることも多いんです。このままではコミュニティをつくることなんて無理。セミナーやイベントに行って名刺交換したとしても、それだけで仲が深まることはほぼないですし。あとは、仕事がはじまる前の段階で相談してみたいことってたくさんあるんですよね。でも関係がないとなかなか聞きにくいので、そこに“ご近所さん”の距離感があるといいのかなと思って、このあたりで働く人たちが集まれる場として、毎週木曜日だけオフィスをコワーキングスペースとして解放する「ヨヨモク」をスタートさせました。
このあたりでお昼を食べて横のテーブルをみてみると「なんか同業者っぽいなあ」と思うことが多いけれど、出会うきっかけがない。でも、「ヨヨモク」で周りの企業に声をかけたら、数名来てくださったんです。今は近所で会うと挨拶したり、立ち話をしたり。ちょっとずつご近所さんになってきたかなと思っています。「ヨヨモク」に来てくださった会社同士で仕事が生まれていたりだとか、つながりができておもしろいなあと思っています。
10年間、毎朝大嫌いな通勤電車で通っていて(笑)、会社に来る意味ってなんだろうって思うのですが、最近こうして朝会社まで歩いていると、「ヨヨモク」で会った人に声をかけたり、挨拶したり、そういうコミュニケーションが少しずつ増えていくと、ここはここで居場所があるんだなあって思うこともあるので。そうやって出来る範囲でコミュニティを作っていけたら、会社に来る意味もあるのかなあと(笑)。同業者の事を「競合だ!」って構えることもあると思いますが、話してみるとそれぞれ違う分野でやっていたりすることも多くて。それぞれ補填しあえるっていうのが、中小企業には大切なことなのかもしれないです。
お互いの信頼を築く
ダイレクトな関係性
まだパイロットが代々木にない時からモノサスさんの「コーディングファクトリー部門」という存在は知っていて。うちの社内でも、コーディング担当はいるのですが、当時は品質も規格もバラバラでどうにか改善していこうとしている時で。その時、モノサスさんがやっているコーディングのセミナーに参加したんです。それもあって、大規模なサイトを制作する案件の時、モノサスさんに協力してもらいました。
はじめは、キッチリカッチリ!したマシンみたいだなって印象で。奥山さんのことも怖い人なのかなあって……(笑)。でも、仕事を一緒にしていると、いろいろ相談に乗っていただいたり、融通をきかせてもらったり。大きな規模の案件だと、細かく状況が変わっていくのですが、そこも柔軟に。そうしていくうちに印象がやわらかくなりましたね(笑)。流れ作業になるのではなく、ひとつひとつ疑問があれば質問してくれて、丁寧に対応していただきました。窓口の人からの連絡だけでなく、実際にコーディングをしている人から直接連絡をいただいたり。なんといっても近いですからね(笑)。こういう時代だからこそ、できる限り、顔を合わせて仕事させてもらっているので、すごく心強いです。代々木に拠点があって神山町でのつながりがあるっていう共通点はかなり奇跡的な縁があると思います(笑)。「代々木WEB制作寄り合い」をはじめる時も、すぐに社内から「モノサスさん巻き込んじゃおうよ」って話しが出てましたし。
「ヨヨモク」や「寄り合い」をやっていると輪が広がっている実感が湧いてきています。身近にいる同業者が出会うきっかけや、気軽に話せる場をつくっていきたい。そのためには僕自身の視野ももっと広げていかないといけないと思っています。そう言っている僕が一番人付き合いが悪いんじゃないかって、いつもソワソワしながらやってます。なので、モノサスさんにはこれからもご協力いただけたらと……きっと奥山さん得意分野ですよね?(笑)
永倉慎太郎さんのプロフィール