2016年02月26日
コーディングの仲間をふやしたいから
〜神山ものさす塾講師になって〜
コーディングファクトリー部の丸山です。
今年の1月から徳島県神山町でWebサイトのコーディングを学ぶ「ものさす塾」の講師をしています。
今回は、東京の仕事場を離れて講師をすること、神山で暮らす様子、苦労話などをお話ししたいと思います。
“コーディングの仲間をふやしたい”から
手を挙げた
昨年の秋頃だったと思います。
部長の伊藤から、
「神山塾で、モノサスもコーダーを育てるクラスを持つことになりました。講師をやってみたい人いますか?」
という提案がありました。
この言葉を聞いたとき、
「コーディングができる仲間を一度に何人もふやせるなんて、なんてワクワクする話だろう!!」
と思い、手を挙げました。
折しも、コーディングファクトリーにコーディングができる仲間がもっとふえるといいなぁと考えていた時期だったので、無意識のうちにそういった機会を欲していたのかも知れません。
ワクワクだけでは不十分、
現実を受け止め前へ前へ進む日々
Web系の勉強会で聴衆の前で技術的な発表をすることに、以前から憧れがありました。
また、コーダーどうしの社内勉強会でも、外部の勉強会や技術系サイトで仕入れてきた技術情報を共有することは好きだったので、
「自分が教えることで、コーディングを学びたい人々を成長させていくのか」
と思うととてもワクワクしていました。
また、根拠のない自信とやる気に満ち溢れていました。
今考えると、その根拠のなさが仇となったのだと思います。
12月には講師研修として、前任講師のヘルプで教壇に立ったり、演習中の塾生のサポートを行いました。
自分としては「まあまあヘルプ出来ているんじゃないか」と思っていた(今考えると、全然出来ていなかった)のですが、私の上司でもある前任講師の伊藤から、
「本気で講師をやる気持ちがある人の姿勢とは思えない。どうする?(講師を)やめる?」
と諭されたときは本当にショックでした。
そこからしっかりと現実を見据え、
「塾生がコーダーとして巣立っていくためには何が必要なのか」
「どういう分野の技術を教えていけば良いのか」
「どういうスケジュール間隔で進めていくか」
などを明確に、そして具体的に考えるようになりました。
スケジュールやカリキュラムについて、一緒に悩んでアドバイスをしてくれた上司の方々にはすごく感謝しています。
暗中模索の日々
1月に入り、伊藤と役割をバトンタッチしていよいよ講師としてデビューしました。
デビューした頃はガチガチに緊張していたこともあり、それはもう頭を抱えたくなるくらいひどい棒読みで、噛み噛みでした。
引き継ぎ期間の間は前任の講師にアドバイスをもらいながら、ときには厳しい言葉があっても歯を食いしばり、塾生がよりコーディングが好きになる・わかりやすくなるように悩み、自分なりの教え方というものを模索し続けていました。
そのうちに思い悩みすぎて、大学の教育系の論文を読みあさったり、学習塾のブログ記事があれば飛びついたりと、完全に思考が迷走していました。
ふとしたきっかけで
見つけた講義スタイル
完全に思考が煮詰まってしまっていましたが、Googleで検索したときに、ふと、「アクティブ・ラーニング※1」という単語が目に留まりました。
アクティブ・ラーニングの有名なスタイルというと、教員と学生との双方向のディベート(『ハーバード白熱教室』のような講義スタイル)や、グループ学習があります。
ただし、そのままでは今回のものさす塾に取り入れることはできないと思いました。
コーディングは前提として「知識」や「経験則」を持っているかどうかで、生み出される結果がかなり変わってくると、私自身は思っています。
そこで、まず講師から、対象となるレイアウトに対して、現場で使っているコーディングパターンと、実装の元となる理由や理論・実装方法(「知識」と「経験則」)を塾生たちに教え、そのうえで小演習に取り組んでもらいました。
そのなかで、塾生に不明点や疑問点が出てきたらそのつど回答し、解決へ導く流れにしてみました。
しっかりと理由を教えてから実装するので、塾生側の理解が深まり、また講師側もある程度ソースコードの統一ができるため、管理やアドバイスがしやすいなど、メリットの多いスタイルを確立させることができ、得るものが多く、大変よかったと思っています。
塾生たちのアイデアを
取り入れる
カリキュラムに少し余裕が出てきたので、2月からは塾生たちの得意分野を伸ばしたり、苦手分野を克服する「パワーアップデー」という特別授業の日をつくりました。
その日は、カリキュラムに沿って進めていく通常の授業とは異なる「塾生が能動的に学習していく日」にしようと思いました。
「WordPressをやりたい」
「JavaScriptをもっと学習したい」
「こういう学習をしても良いか」
など、塾生から要望や提案を聞いて、私は技術に関する教科書を作成したり、参考ページや書籍を見つけたり、課題を作成したりと、塾生たちを良い方向へ導けるようにしました。
彼らの提案を取り入れることで、コーディング意欲を折らずに上昇させることができ、各々の得意不得意も把握できる、良いアイデアだったと思います。
自分に起こったよい変化
コーディングの講師をやっていく中で、私自身にも良い変化が起こりました。
・他人のソースコードを読むのが苦手だったのに読めるようになった
・参考書などのソースコードが以前よりすらすら読めるようになった
・自分の中のコーディング手法や理論にあまり迷うことがなくなった
塾生たちが演習中に困ったら、各々の異なった書き方のソースコードを素早く解釈し、それに対して適切なアドバイスを返さないといけません。言うなれば、ソースコードレビューを1日に何十回も行っていたようなものです。
また、塾生から「これってこういう意味らしいですよ」と逆に教わることもあり、自分の中に知識が逆輸入されて、良い感じにインプットとアウトプットが繰り返されたこともよかったと思います。
また、日々塾生たちから投げかけられる質問の中には、自分の中で迷っていて白黒をつけにくいコーディングの手法や、現場で曖昧なまま使っていたテクニックなどもけっこうありましたが、講師が迷っていては塾生も困ってしまうので、理由や理論をつけてはっきりと明言するように心がけました。
そうするうちに「迷ったものがあったら調査する」「迷いがなければ言い切る」という判断力が、以前より上がった気がします。
このような良い変化は、今後のエンジニア生活においても非常に役立つ経験になったと思います。
神山での暮らし
話は変わり、神山での暮らしについてお話ししたいと思います。
現在は、ものさす塾が開講されている神山町の農村改善センターから徒歩約5分の住居に、神山塾生の「やまちゃん」とものさす塾生の「キムさん」とルームシェアをして生活しています。基本的には、気づいた人がご飯をつくり、食器を洗い、ゴミを出して...と役割分担し、すごく良いバランスで生活を営むことが出来ています。
私個人の話をすると、大学卒業までずーっと実家暮らしで、上京してから一人暮らしをはじめました。
週末はずっと部屋に閉じこもって一人でアニメを視聴したり、コーディングをするという根暗生活を送っていた人間だったので、ルームシェアで暮らすという話を聞かされたときは、
「えぇ〜...ルームシェアとかネットで調べても嫌なことしか書かれてないし、自分そんなのしたことないし、無理無理!!」
と思っていたのですが、仕事で疲れて帰ってもご飯があるありがたさや、リラックスできる環境で仲間と談笑できる安心感は非常に心地よくもあり満足感もあり、「ルームシェアもわるくないかもなぁ」と考えるまでに成長できました。
神山での講師生活を通して
「OJTで後輩を育てたくらいの教育歴しかない」
「むしろ一人でコツコツコーディングしているほうが長い」
そんな自分が今、神山で塾生たちにコーディングを教えています。
「講師をやる」という決断がなかったら、ここまで自分が変わることはなかったでしょう。
講師をやると決めてからは大変なことや辛いことは山のようにありましたが、自分が変わるきっかけを得られたのは本当にありがたいことだと思います。
講師生活も残すところ1ヶ月。
「みんなも成長して、自分も成長する」
そんな有意義なものにできるように頑張っていきます!