2016年02月29日
Open Marketing の連載にあたって
これまでのように、自分たちの「よさ」を
相手におしつけるかのように主張するのではなく、
自分たちの会社のあり方、考え方、行動を
正直に伝えるという「ひらく」行為によって
ゆっくりと感じとってもらう。顧客を集めるのではなく、集う。
売るのではなく、価値を交換する。
つなぎとめるのではなく、つながる。
はじめに
みなさん、こんにちは。
モノサス代表の林です。
ものさすサイトオープンから3ヶ月あまり、
ようやく私も連載をスタートさせることができました。
この連載は Open Marketing というひとつの考え方を、みなさんにご紹介するものです。
Open Marketing という言葉は、私たちモノサスが
これまで自社やクライアントのマーケティングをする中で
少しずつ育んできたひとつの考え方で、
すでに世の中で認知されたマーケティング専門用語ではありません。
(このふたつの単語の組み合わせがオリジナルという意味ではありませんし、
海外で別の意味で使用されている例はあります)
この、ふたつの英単語を組み合わせたシンプルな言葉は、
私がこれまでマーケティングコンサルタントとして、経営者として、
そしてひとりの人間として生きてきた中で育んできた
ひとつの考え方のようなものです。
私はこれまでの15年のキャリア全てを
マーケティングコンサルタントとして過ごしてきました。
11年前からはモノサスという会社の代表も経験してきています。
実は、このふたつのキャリアを同時に経験してきたことが
Open Marketing という考え方を語る上で
とても重要な要素となっています。
コンサルタントという仕事は、端的に言えば
客観的にクライアントの会社を観察して、
その会社の強みを見つけ、具体的な施策を提案する仕事です。
一方で経営者という仕事は、
自分の実現したい理想を、自らリスクを冒して
世の中に問いかけるという仕事ではないかと思っています。
両者とも会社の業績を向上させることが仕事であることに
違いはないのですが、スタンスは真逆であると
言ってもよいのではないかと思います。
コンサルタントは客観的に見ることが仕事です。
だから、合理的かどうか、効果が出るかどうか、
そういったことが重要です。
ですが、経営者の仕事は
自分の理想を実現すること、自分の想いを形にすることなので、
とても主観的なものです。
合理的であることよりも、効果的であることよりも、
理想に近づいているかどうかという物差しを
重視する経営者の方が多いようです。
極端な言い方をすれば、たとえ業績が上がるとわかっていても、
「その方法はイヤだ」と言いだしたりするのが
経営者だということです。
そのふたつのキャリアを同時並行で進めてきたことは、
私にとって多くの気づきを与えてくれました。
そして、この一見矛盾するかのように見えるふたつの価値観が、
一定の条件を満たせば、反発することなく同居し、
さらにはとても大きな効果を産み出すことを目の当たりにしてきました。
この連載では、私が Open Marketing という考え方に
至った経緯、そしてそれをコンサルタントとして、経営者として、
どのように実践しているのかということを紹介しながら、
まだまだ発展途上のこの概念を、
みなさんと一緒により深めていきたいと考えています。
また、Open Marketing という考え方自体が
経営者や経営方針というものと切っても切り離せない概念であることもあり、
私自身が経営者であることを、ずいぶんと棚に上げて書いていかなければ
ならない部分が出てくるのではと思っています。
中には「偉そうに書いているあなたの会社はできているのですか?」と
言いたくなることもあるかと思いますが、
私自身もモノサスという会社を通してこの概念を実践しつつ、
見えてきたことを、一人称でみなさんに共有していくようなつもりでいます。
ですから、コメントや、ご質問、反対意見なども大歓迎です。
Facebook での「いいね!」だけでなく、
「読んだよ!」といった簡単な感想でも結構ですし、
「ここがよかった」「ここをもっと知りたい」といったコメントは
次回以降の内容にどんどん反映させていきたいと考えています。
込み入った質問や、もし何か不快に感じられた点などがあった場合は
お知り合いの方は DM していただくか、そうでない方は
当サイトのお問い合わせフォームなどにコメントを寄せていただけると幸いです。
Open Marketing とは
まずはみなさんに少し唐突な質問をしてみたいと思います。
あなたは自分自身が何のために生きているか、そしてどんな人間であるかを
はじめて会った人に60秒で説明できますか?
そしてその内容は、あなたの行動や状態と正しく一致していますか?
さらにそれは何年も、何十年も一致し続けさせられるものですか?
おそらく大部分の方が、難しいとお答えになるのではないかと思います。
しかし、このことを強要され、それを語ることでしか、
社会の中で自分の居場所を確保できないとしたら・・・
突飛な表現だなぁと感じられるかもしれませんが
しかしこの質問の主語が、「自分自身」から「自社」に
置き換わったとしたらどうでしょうか。
もしくは「自社の商品・サービス」でもよいかもしれません。
ビジョンが明確でなければならない。
そして自社の強みや、他社より優れているポイントが
顧客にも、自社のメンバーにも、正しく、そして魅力的に、
しかも、一瞬で伝わらなければならない・・・。
少し大げさかもしれませんが、
企業においてマーケティングに携わる方は
多かれ少なかれ、このような強迫観念にも似たような感覚を
お持ちになったことがあるのではないでしょうか。
私がこれまでに接してきた
経営者の方、マーケティング担当の方の多くは、
次々と去っていく顧客をつなぎとめるための CRM 施策や、
永遠に続くかのように思われる新規客の獲得施策に
疲れているように見えました。
私の偏見かもしれませんが、
すごく楽しそうに、幸せそうに、
自社のマーケティングを語っている人、
あまり見たことがないのです。
セミナーや講演会などで
成功事例としてお話されている方でも
「明日はどうなるかわかりませんから・・・」
という危機感が常につきまとっている。
ビジネスって、仕事って、本来もっと楽しいものなんじゃないだろうか。
しかも、自慢の自社のことを世間にアピールする
マーケティングという仕事は、もっと
ワクワクしながらやってもいいんじゃないだろうか。
さらに、自分の理想を追求して仲間と一緒に働くという
経営者って、最高の職業なんじゃないだろうか。
こんなことを疑問に感じながら
自分自身でもそう思いきれずに
コンサルタントと経営者という仕事をしてきた私が
少しずつその原因を究明しながら解決するための仮説を検証し、
個人的に確証のようなものを得、
コンサルタントとしてクライアントに提案し、
経営者として自社で実践しはじめたのが、
Open Marketing という取り組みです。
冒頭でもご紹介しましたが、
Open Marketing は、
これまでのように、自分たちの「よさ」を
相手におしつけるかのように主張するのではなく、
自分たちの会社のあり方、考え方、行動を
正直に伝えるという「ひらく」行為によって
ゆっくりと感じとってもらう。顧客を集めるのではなく、集う。
売るのではなく、価値を交換する。
つなぎとめるのではなく、つながる。
ということを日々考えながら
マーケティング活動をしていくことだと思っています。
書いてみると、とても単純な内容です。
しかし、実践するのは思っているよりも難しい・・・。
次回から、少しずつ具体的に、Open Marketing の詳細な考え方や、
実践方法についてみなさんと一緒に深めていきたいと考えています。