2016年03月28日
手をうごかす前に考えること
〜 デザイン部 座談会 # 01 〜
私たちデザイン部は、経歴やスキルが異なる6名のデザイナーが、それぞれの持ち味を生かしつつ、日々Webデザインについて探求しながら制作を進めています。
けれど制作は時に孤独なもの。個々でデザインについて思うことはあっても、部のメンバーみんなで話しあうことは滅多にありません。
そこで、本腰を入れてデザイン部座談会をひらくことに。第1回目は「デザイナーが手を動かす前に考えること」を軸に、「ヒアリング」「デザイナーの役割」「デザインコンセプト」にまで話が広がりました。
INDEX
デザインの「遊び」を探る
〜クライアントへのヒアリングについて〜
ーデザインの依頼があったときに、クライアントやプランナーにヒアリングすると思いますが、どんなことをポイントにしていますか?
小野木 部長という立場だからかもしれませんが、まず費用について確認します。費用感がわかると制作範囲を考えることができるので。次にクライアントの業種。業種によってにそのサイトの目的やあげたい効果を想定します。
その他、いま何が問題になっているのか尋ねます。問題を確認しながら、それに対する提案やデザインの形を考えているんです。
今井 僕はデザインのイメージマトリックスを頭に浮かべながら話を聞きます。
クライアントによっては、「かっこいい」などのざっくりなイメージしかない場合も多いので、相手からキーワードを引き出すというよりは、普段見て記憶していたWebサイトを頭の中のマトリックスに分類しながら、参考サイトをピックアップします。
上森 僕の場合は、クライアントがやりたいことが明確なのか、曖昧なのか注意しながらヒアリングします。それによって、自分が提案できる範囲はどこまでか、どこに「遊び」を入れていけるのかを考えます。
ー遊べる遊べないって何でしょうか?
上森 要望がフワッとしている場合であれば、最近のトレンドを提案したり。こちらから提案できる要素が多いのか、少ないかという部分ですね。
榛葉 遊びって、デザインを細部まで説明できるロジックがあってこそ生まれる"間"ではないでしょうか。たとえば、ある程度デザインが固まったところで、ちょっとした動きをつけたり色の組み合わせをひねってみたり、デザインをさらにブラッシュアップさせるもの、そんな気がします。
今井 基本の要望をクリアしたうえで、プラスαとして、クライアントの予想を超える提案が「遊び」なのかもしれません。情報にたどり着くための UI / UX がしっかりデザインされている上で遊びを加えると、クライアントは結構おもしろがってくれます。
榛葉 サイトを訪れた人に、単なる情報だけじゃなく、つよい印象を残すには「遊び」が必要なのかもしれませんね。
小野木 要望に添ってキレイにまとめるだけじゃ記憶に残らない。じゃあ、記憶に残る部分ってどこなんだろう、というのが「遊び」かもしれませんね。
デザイナーの仕事って
どこまで広がる?
〜デザイナーの役割〜
ークライアントは、デザインの要望以前に、集客、採用、ブランディングなど、デザインよりひとつ上のレイヤーの話をされることが多いですが、デザイナーができることってなんでしょうか。
今井 たとえば「売上を上げるには?」という問題に対して、デザインでどうやって解決できるか、という話ですね。
小野木 結局、デザインがカッコいいことと、クライアントの目標が達成できるかどうかは別の話なのかなと。サイトのデザインがよいからといって、必ずしも集客が上がるわけではなく、マーケティング、プランニング、SEOなどが総合的に合わさってはじめて達成できるものだと思います。Webデザインをする上で、お客様がどういうところを狙っているのか考えるのは重要だと思います。
中庭 いきなりデザインするのではなく、問題を解決するためのプランをしっかり練ることが大切ですよね。それを具体的なカタチに落とし込んでいくことがデザイナーの仕事かなと。
榛葉 僕はサイトを設計する時に、お店に置き換えてイメージすることがあります。トップページは入りたい建物かどうかを見極めるエントランス。たとえば5階の洋服屋さんへ行く時に、いろいろ見たい人はエスカレーターを、トイレに寄りたい人は階段を、必要なものが決まっている人は直に行けるエレベーターを使いますよね。それってWebサイトの導線にも置き換えられるなと。
中庭 Webサイト制作ってリアルな場所づくりに近いと思うんです。だから私もWebサイトは建築に似ていると思っていました。たとえば家を建てるとして、漠然とした理想はあるけど、実際に何を選べばいいか分からないとき、建築家からこんなキッチンはどうですか、リビングはこれくらい広さがあるといいですねと、具体的に提案されると楽しいですよね。Webデザインの提案も似ているなと。デザイナーはバーチャルな建築家みたいなものかもしれません。
デザインを言葉で表現することは必要か?
〜デザインコンセプトについて〜
ーデザインをつくったら、さまざまな立場の人に言葉で説明する機会がありますが、制作前にデザインコンセプトは必要だと思いますか?
小野木 将来的にアートディレクターになるのであれば、デザインコンセプトはしっかり組み立てられるようになるべきだと思います。コンセプトを言葉に落とし込んで、クライアントに一言でそれを伝えることがアートディレクターの仕事だと。
中庭 コンセプトがないとデザインは作れないですよね。どちらにしろ、デザインのロジックは言葉で説明できるように心がけています。
小野木 多少なりともブランディングの要素があるときは、コンセプトを立てることがとても重要になってきます。たとえば、東京工業大学のサイト制作では、最初にワーディングしたデザインコンセプトを元に、ロゴの使い方や書体、写真やデザイン、コンテンツの方向性を決めました。企画が進むにつれて本来の目的からずれてしまうこともあるので、指標となるコンセプトが不可欠になってきます。
榛葉 "古くなったから新しくしたい"というようなサイトリニューアルのコンペで、先方の要望やイメージの情報がそれほどない場合、あえてコンセプトを作らず、主流に乗ったデザインをベースに予測される提案ポイントを付け加えていくこともあります。
小野木 コンペ段階ではあまり決めすぎない方がいいケースは、過去にも多々ありました。必ずしもコンセプトが必要であるわけではないかもしれませんね。
ちなみに、今井さんはいつも新しいことを取り入れていますよね。僕はお客さんに合わせて、必要であれば古いものも取り入れていくんだけど、今井さんは常に新しいものでクリアしていく意思がデザインに感じられる。どうやって脳内でコンセプトのロジックを固めていくんですか。
今井 クライアントに提案するときに「普通のものではないもの」を出す、ということに自分のモチベーションがあるんです。基本的なことは守るけど、もう少し他の会社と違うことをしませんか、という提案で差を付けたいんですよね。
座談会をおえて
今回のテーマ「クライアントへのヒアリング」「デザイナーの役割」「デザインコンセプト」について、語りだすとキリがないほどのさまざまな意見が飛び交いました。お互いの意見や体験を聞けたことで、視界が広がり、次の案件で応用できるヒントも多く見つかった気がします。
また、各々の経験や感性に寄って道筋は違っていますが、「クライアントがよろこぶサイトを作りたい」という想いは、共通していることが分かりました。
次回のデザイン部座談会では、もう少し実践的なデザインの話題について話し合う予定です。それではまた。