2016年03月31日
自分たちの会社のあり方、考え方、行動をひらく
みなさん、こんにちは。モノサス代表の林です。
前回は Open Marketing という考え方の概要をお伝えしましたが、
今回は、Open Marketing という考え方の中心にある
「ひらく」ということについてお話したいと思います。
Open Marketing では、
自分たちの会社のあり方、考え方、行動を「ひらく」行為によって
ゆっくりと自社のことを感じとってもらう
ことを大切にしています。
従来のマーケティング活動では、明確なビジョンに基づいた
自社の強みや、他社より優れているポイントを、顧客にも、自社のメンバーにも、
正しく、そして魅力的に、しかも一瞬で伝えなければならないという、
切迫感のようなものが存在するのではないかと思っています。
この考え方は、否定されるべきものではなく、
ビジネスの立ち上げ時や、スピードをあげて事業を拡大していく際には
むしろ非常に有効な方針なのではないかと思います。
一方で、このような方針で進め、ビジネスがある程度の規模になると、
この方針だけでは苦しくなってくるのではないかと思います。
理由はいくつかあります。
ひとつめは、当初はインパクトがあって、新鮮だった訴求ポイントが
時間が経つにつれ、風化してしまうこと。
さらに、当初のインパクトを超える次なる切り口を、同じビジョン、
同じビジネスを維持しながら何度も上回りつづけることの難易度が非常に高いこと。
さらに、企業の利益が多くの場合、新規顧客ではなく、既存顧客によって
もたらされることです。
これまでのマーケティングが抱える課題
私は、企業と顧客の関係性も、個人と個人の関係性も、
築きかたに大きな差はないのではないかと考えています。
なぜなら、「この人と関わりつづけたい」と思うのも個人の感情であり、
「この会社・サービスと関わりつづけたい」と思うのも個人の感情だからです。
にもかかわらず、これまでのマーケティングでは
「この人と関わってみたい」と思わせるために最適化されてきたように思います。
ここまでお話しすると、CRM ( Customer Relationship Management )という
考え方があり、新規顧客獲得( Acquisition )のマーケティングと、
既存顧客固定客化( Retention )のマーケティングというように領域を分けて
研究と実践がなされ、これまでも十分に取り組みがなされてきている
という反論が聞こえてきそうですが、Open Marketing では、少し違う考えかたに
基づいています。
そもそも Acquisition 領域と、Retention 領域というように、
領域をふたつに分けて考えること自体に少し不自然さがあるのではないかと思うのです。
なぜなら、「この人と関わりたい」と思わせる担当と、「この人と関わりつづけたい」と
思わせる担当が違うからです。
人間関係を構築する際に、こういったことはありえません。
「仲良くなりませんか?」と声をかけておいて、
「仲良くなったあとは私が代わりますね」といって
別人が出てきたら、関係性の構築もなにもありません。
しかし、従来のマーケティングではこういったことが当たり前のように行われてきました。
顧客との良好な関係性をつくることに、
力を集める。
ここまで何度か「関係性」という言葉が出てきていますが、
Open Marketing では、企業と顧客の良好な関係性から、利益はもたらされると
考えています。
企業は、顧客との良好な関係性を構築することに集中すればよく、
それによって長期間にわたり、適切な利益と、働きがいのある環境が
構築できると考えているのです。
先ほど、これまでのマーケティングでは「この人と関わってみたい」
と思わせることに最適化されてきたことが課題だと述べましたが、
もう少しこのことをわかりやすく理解するために、もう一度、
企業と顧客の関係構築を、人と人との関係構築に例えて整理してみたいと思います。
先ほどの例えでは「この人と関わりたい」と思わせる担当と、
「この人と関わり続けたい」と思わせる担当が違うという、
少し大げさな例えをしましたが、私はこのやり方に、
これまでのマーケティングの根本的な課題があると考えています。
人と人が関係構築をする際、いろんな出会い方、いろんな関係構築の仕方があります。
しかし多くの場合、人と人の関係はゆっくりと構築されていきます。
初めて会って、いきなり意気投合し、良好な人間関係が長期に渡って
維持されていくことはごく稀なのではないでしょうか。
「初めて会った」と言っても、その人について事前に全く情報が
入っていないことは、珍しいのではないではないかと思います。
ただ何度か見かけたことがあったり、誰かの紹介で事前にその人について
いろいろ聞いていたり、友人の知り合いで、その人についていろいろ情報を聞いていたり。
もしくは相手がちょっとした有名人で、こちらが一方的に知っていることも、
その逆もあり得ます。
また、初めての会話で意気投合したとしても、その後も継続的に
コミュニケーションをとり続けるのはお互いに努力が必要ですし、
何度か会っているうちに「やっぱりほんとにいい人だなぁ」となることもあれば
「ちょっと私とは根本のところでは合わないかも・・・」なんて、
少し距離を置きはじめたりすることもあるでしょう。
つまり、人と人との関係というのは、初めて会話する前からお互いもしくは
少なくとも片方の視界に入っていることが多く、その時点からお互いの
情報収集は始まっていて、また、初めて会話した際に関係性が
出来上がることはあり得ず、継続的なコミュニケーションの中で
徐々に構築されていく性格のものだということです。
こういった観点で、企業がマーケティング活動の中で行っている
顧客との関係性の構築がどのように行われてかを見てみると、
大きく異なる部分があります。
人格の乖離が、
関係性をこわす
これまでの多くのマーケティングで重視されてきたのは、
初めて会った人に、自分がいかに魅力的で、自分以外の人と関わるよりも
メリットがあるかを、アピールするようなことです。
さらにその場で「私と友達になりませんか?」と迫るのです。
そして、「わかりました」と相手が頷くと、また次の人に対して
自分の魅力をアピールし、「私と友達になりませんか?」と迫っていく。
こういった手法が抱える問題はいくつかありますが、私が最も問題視しているのは、
「関係性を構築する前と、関係性を構築した後の人格に乖離があること」です。
短期間で見込み顧客を顧客に転換しなければならないために、
やはり短期間で、自社の魅力を伝えなければならなくなります。
そこで、「すぐに伝えるための脚色」が必要になります。
短い時間で相手にものを伝えようとすると、
センセーショナルなコピーや、何気ないことをすごいことに見せるための文章、
完璧な角度から撮った写真をさらに加工する、といったことがどうしても
必要になるからです。
人間に例えるならば、ビシッとスーツを着て、スポットライトを浴びながら
プレゼンテーションをしているような状態です。
しかし、関係性は、スーツを着て、プレゼンテーションをしている人と
構築するものではありません。
スーツを着てずっとプレゼンテーションをし続けられるのであれば
それもよいかもしれませんが、会うたびに毎回インパクトのあるプレゼンテーションが
できる人はそんなにいるものではありません。
では、プレゼンテーションを信じて関係性を構築しはじめた相手は
一体どうなるでしょうか?
当初期待した良好な関係性は築けず、騙されたとまでは思わなくとも、
普段着の姿を見て、普通の会話の内容に違和感を持ち、多くの場合、
関係性は解消されてしまうでしょう。
急いで伝えるのではなく、
伝わるのを待つ
Open Marketing では、急いで伝えることをやめ、
自分たちの会社のあり方、考え方、行動を「ひらく」行為によって
ゆっくりと自社のことを感じとってもらう
ことが大事だと考えています。
急いで伝え、既成事実をつくるかのように関係性を無理にこじあけるのではなく、
人間関係を構築するのと同じように、自分たちが何者で、どんなことを考えていて、
どんな行動をしているかを相手に感じてもらうこと。
そしてそのためには、プレゼンテーションをするのではなく、
自分たちの考え、自分たちの行動を「ひらく」こと。
それによって、顧客を集めるのではなく、集まるような状況になり、
顧客をつなぎとめるのではなく、つながっている状態が生まれ、
企業が発展していく。
人間同士であれば、実際に会話がなされ、行動をともにすることが可能ですが、
企業と顧客が会話や行動をともにするのは、サービス提供時に限定されるケースが
ほとんどですし、人間同士のように1対1のコミュニケーションに時間をかけられないのが
企業です。
そこで、企業と顧客が、1対多数の関係性を良好に構築するための
やり方が必要になります。
そのための考え方のひとつが Open Marketing なのではないかと思っています。
次回は、「ひらく」の具体的な取り組み方をお話したいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
今日はここまで。