2016年11月15日
食欲の秋、テーマは「食べ物が登場する本」。今日は食堂読書会。
〜モノサスの「読書会」#09〜
図書委員長の村上です。
先月は「文化の秋」ということで、映画にちなんだ本をテーマに読書会をしました。
今月は「食欲の秋」にかこつけて(?)食べ物にまつわる本をテーマにしたところ、なぜか全員が漫画をチョイスするという展開に。せっかくなので、登場する料理もできるかぎり用意することにしました。
さぁ、実際にテーブルに並べて、読書会開始です。
参加者紹介
-
冬は帽子とぐるぐる巻きのストールがマーク、和田(ディレクター)
-
赤羽と狸小路の飲み屋ならこの人に聞け、上井(プロジェクトマネージャー)
-
とあるハッカソンからビールの未来を毎日考え続けている、中庭(デザイナー)
-
音のしない特殊な歩き方で知らぬ間に人に近づくことができる村上(品質管理部リーダー、図書委員長)
の4名。
それでは、読書会スタートです!
発表タイム
40分間の読書タイムを終えたら、ひとり5分間でその本を紹介します。
-
餃子を美味しくする妖精、ギョーザ男。魔法の世界は異形なキャラたちの饗宴。
『ドロヘドロ』(紹介者:和田 亜也) -
深夜の食堂は人間交差点。ちょっと懐かしい行きつけのお店の感じ。
『深夜食堂』(紹介者:上井 正之) -
人生はごはんと葬式、お金から逃れられない。海街に暮らす四姉妹の日常。
『海街diary』(紹介者:中庭 佳子) -
「さあ、捌いて食べよう」人の皮を剥ぐ漫画のつみれ鍋とはいったい…
『ゴールデンカムイ』(紹介者:村上 伊左夫)
餃子を美味しくする妖精、ギョーザ男。魔法の世界は異形なキャラたちの饗宴。
『ドロヘドロ』(紹介者:和田 亜也)
- 和田
-
料理漫画じゃないんですが『ドロヘドロ』を持ってきました。
魔法使いの世界と人間界が存在している世界で、魔法の実験台にされた人間が顔や姿を変えられている。この表紙のワニっぽい(トカゲ?)頭の男も記憶が無くなっていて、なぜ自分がこんな姿になったのかわからなくて原因を探っていく、という話です。
物語が進むに連れてたくさんのキャラクターが出てくるんですが、それぞれにまたストーリーがあって…とにかく魅力的なキャラクターが多くて、今までで一番好きな漫画です。
で、主人公(ワニ頭の人)の友達の女の子が「ハングリーバグ」っていう食堂をやってるんですけど、そこの大葉ギョーザがめちゃくちゃ美味しくて、彼の大好物なんです。
- 和田
-
5巻の最後には、主人公が大葉をつんできて、実際に大葉ギョーザの作り方を紹介しているコーナーがあるんですけど、ネット上でも「漫画を読んで作ってみました」とかあげてる人もいて。私もこの漫画を読んでから、家で餃子を作るときは大葉を入れてますが、実際すごく美味しい(笑)。
お店のまかないで、ギョーザハンバーグを使ったギョーザバーグ丼とかも出てくるんですが、これもすごい美味しそうなんです。
結構グロテスクな描写も多くて、なんかこう、えげつない感じの漫画なんですけど、料理に関してはすごく美味しそうで。ふだんグロテスクな分、ギャップがあってそう見えるのかもしれないですけど、毎回美味しそうだなぁって思いながら読んでます。あと、ギョーザ男っていう餃子の妖精?みたいなキャラもいて。餃子を美味しくするために店に住み着いてて、「こいつはタダ食い!」「食い過ぎ!」とかギャーギャー怒ってるんだけど、みんなには見えない。
- 和田
-
料理漫画じゃなくて魔法の謎が深まっていく漫画なんですけど、変なキャラだったり、なんというか…餃子が印象に残る話なんです。
- 村上
-
これ表紙の紙って、ワニの皮みたいになってる?
- 和田
-
そうですね、結構ザラッとしてますね。
- 中庭
-
とりあえず、召しあがりながら。
- 和田
-
これ、わざわざ大葉(シソ)入りのを買ってきてもらったみたいで。
- 中庭
-
そう、ふつうの餃子にシソを入れて焼き直そうと思ってたんだけど、結構メジャーなんだね。
- 上井
-
あ、おいしい。
- 和田
-
主人公は、疲れたらこの餃子を食べるんです。
この漫画、年に1回くらいしか出なくて最近21巻が出たんですけど、20巻頃でやっと意味がわかってきたというか。それまでは何がどうなってるのか謎が謎を呼んで…実は主人公には何重にも魔法がかかってて、ワニの顔の中にまた人がいて…とか、何が何だか。
こういう話です、って説明するのが難しいんですけど、でもホントにキャラクターが魅力的で面白いんです。
- 中庭
-
和田っち、異形なもの好き?前に紹介してた漫画(歯が主人公)も。人間以外のものが好きみたい(笑)。
深夜の食堂は人間交差点。ちょっと懐かしい行きつけのお店の感じ。
『深夜食堂』(紹介者:上井 正之)
- 上井
-
ドラマや映画にもなった『深夜食堂』に出てくる、バターライスです。
原作の漫画は、ゴールデン街をイメージした場所を舞台に、眠らない街の飯屋さんに集まる人々の人間模様が、そのときに食べる食事とからめて一話完結型で描かれています。ドラマも好きなんですが、漫画ならではのキャラクターの深みや面白さもあって、それぞれ楽しんでます。
私も以前、横浜に住んでた頃に通っていたお店があって。商店街のちょっと外れで、商店街の人たちがお店を閉めたあとに来るようなお店なんですが、夜仕事が遅くなったときに晩御飯を食べに行くと、いつもいるお馴染みの人達がいて。そんな記憶をちょっと懐かしく思いながら読み始めたのがきっかけです。
- 上井
-
なかでも、一番印象深かったのが、このバターライス。読んだときに「すげーうまそうー!」って。どこそこのバターとあの醤油を組み合わせて…とか始めたらキリがないと思いつつ、ずっと覚えてて。今日は初めて食べられるので楽しみにしてきました。
- 中庭
-
じゃあ、いただきましょうか。
醤油をちょろっとかけまわして…どうですか?
- 上井
-
ん。あ、おいしい。醤油がおいしい。
- 中庭
-
醤油は、小豆島の醤油でたまご掛けご飯用のものです。
- 和田
-
これ、ちょっとめんどくさいけど、ご飯あるときに絶対やったらいいですよね。
- 上井
-
飲んで帰ったときとか(笑)。
- 中庭
-
これって、グルメ漫画なんですか?
- 上井
-
いや、グルメじゃないと思う。
さっきの横浜のお店も、カウンターだけのお好み焼き屋さんで、粉が切れてたらおしまい、ママさんが「今夜は〇〇があるよ」「それ食べます」って言うと焼いてくれてるようなお店で。この深夜食堂もそういう感じ。豚汁定食しかメニューがなくって、頼まれて材料があったらなんでも作るっていう、そんな食堂なんです。
人生はごはんと葬式、お金から逃れられない。海街に暮らす四姉妹の日常。
『海街diary』(紹介者:中庭 佳子)
- 中庭
-
去年映画化もされた『海街diary』ってご存知ですか?
鎌倉に住む三姉妹が、腹違いの末妹を引き取って…そんな四姉妹を中心にした人間模様が描かれている漫画です。その昔、お母さんを捨てて家を出たお父さんが亡くなった、そのお葬式から物語ははじまります。お父さんの再婚相手は数年前に亡くなってて、残された腹違いの妹は一人ぼっちになってしまって。
妹とはいえ、自分たちのお母さんを捨てて再婚した相手との子どもなので、色々複雑な感情はあるんだけど、お葬式ではじめて末妹に会った三姉妹は、鎌倉に帰る列車ギリギリのところで「私たちと一緒に暮らさない?」と言って、末妹を引き取るんです。作者の吉田秋生は「BANANA FISH」や「吉祥天女」とか、わりと重めの作風で有名ですが、時を経て、今はほっこり系の漫画っぽい感じなんですけど、やっぱり底にはシビアな視点があって。
- 中庭
-
常に、人の死とお金の問題が出てくるんですね。病院で働く看護士の長女や、地元の信用金庫で働く次女の話とか、人の死とお金の話をセットに物語が進んでいくんです。で、それと一緒に食べ物もすごく出てくるんですよ。
四姉妹の家にある梅の木で、みんなで梅酒を作ったり、カレーを作ったり。近所のおばちゃんがやってる海猫食堂っていうお店のめっちゃ美味しいアジフライ定食とか。
そのおばちゃんは病気で死んじゃうんですけど、そこに遺産相続の問題があったりとか。そういう、食べ物と、死と、セットの漫画。なかでもイチ押しは「しらすトースト」。中学生のすずちゃんと、お互いちょっと好きみたいな感じの男の子が、2人でよく行く喫茶店で出てくるメニューなんです。
すずちゃんは女の子なんだけど、サッカーがすごく上手で、その男の子と同じチームでプレーしてる。その2人が地元の喫茶店で、しらすトーストとジンジャーミルクティをセットで食べてるのが、いつもすっごい美味しそうなんです。うちがモデルだって言ってるお店が実際にあって、わたし鎌倉に食べに行きました(笑)。
ということで、食べ物が出てくる本といえば、このしらすトーストしかないでしょう!と思って、持ってきました。
- 村上
-
鎌倉ってしらす名物なんですか?
- 上井
-
しらす有名ですよ。釜揚げとか。
- 村上
-
知らなかった。のりの風味がすごい。
パンにしらすって組み合わせ、はじめてです、私。
- 和田
-
和風っぽくなって、すごくおいしい。
- 中庭
-
よかった。ごはんと葬式の繰り返しなんですよね、この漫画は。人の交流には食べ物があって、人生には死とお金がつきまとう、やっぱりそれがテーマなんですよね。
「さあ、捌いて食べよう」人の皮を剥ぐ漫画のつみれ鍋とはいったい…
『ゴールデンカムイ』(紹介者:村上 伊左夫)
- 村上
-
『ゴールデンカムイ』という漫画なんですが、このまえ家族旅行したときに面白いって聞いて。「人の皮を剥ぐ漫画」って紹介されたんですけど(笑)料理の話もでてくるので、旅行の帰りに駅で買ってきました。
- 村上
-
舞台は日露戦争直後の北海道。亡くなった戦友の病気の奥さんのために大金がほしい主人公が、アイヌの人たちが隠した金塊の話を聞くところから始まります。
アイヌ人たちが和人に対抗する武器を買うために集めた金塊が、皆殺しにされたうえ行方不明に。殺した犯人は捕まって網走刑務所に入りますが、外の仲間に金塊の隠し場所を伝えるために「脱獄できたら山分けしてやる」と囚人達をそそのかして、暗号の紋様を彼らの体に入れ墨で彫るんです。入れ墨は背中から胸の方にも回りんでいて、切って広げないと暗号はつながらない、それで「人の皮を剥ぐ漫画」なんですね。
その話を聞いた直後、主人公はヒグマに襲われるんですが、間一髪で勇猛なアイヌの女の子に助けられて、その少女と一緒に金塊を探し始めることになって…
で、肝心の料理なんですが、このアイヌの女の子が、野生の動物を罠とかで捕まえて食べるんです。たとえばこれ、リスに罠を仕掛けて、捕まえたら皮をはいで、内蔵を洗って、肉を骨ごと包丁で叩いて…アイヌ人は生のまま食べるんだけど、主人公は和人だから「お前に合わせてやる」って言って、つみれ鍋にして出してくれるんです。
- 村上
-
で、前のページでは「脳みそ食べろ」と。
そのときの表情が「お前ちゃんと食べろよ(真剣)」っていう顔で。アイヌでは、野生の動物とか役に立つものは、みんな天から動物の姿をして遊びに来ている、毛皮や肉を持って遊びに来ているんだっていう考え方があるそうなんです。
作品の中でも折に触れて、アイヌの文化や知識が詳しく紹介されていて、すごく取材してあるなぁと。時代背景も面白いし、料理して食べてるところが非常に表情豊かで、とても美味しそうに食べるんですよね。
- 上井
-
あ、カワウソだ。
- 和田
-
「さあ、捌いて食べよう」って(笑)
- 村上
-
この可愛い顔で、このためらいの無さ(笑)。
自分も小さい頃、親が釣ってきた魚を捌くのをよく見てたんですが、そういうの思い出して、ちょっと懐かしいというか。
さすがに哺乳類を捌いたことはないですけど、たぶん、そんな感覚なんだろうな、と。
読書会をおえて
おいしいものも、食べたことのないないもの紹介された読書会。
本を読んでいるだけでは物足りない!と、実際食べながら行ってみました。
すると、メニューのせいか、ちょっとだけ居酒屋風な雰囲気に(お酒は入ってません)。
なんだか楽しい、五感を刺激する読書会となりました。
次回は「My Best Book 2016 〜私が読んだ今年一番の本〜」をテーマに読書会を開く予定です。それではまた!