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16
Jan,2017
小野木 雄
投稿者:小野木 雄
(デザイナー)

2017年01月16日

ものさす年賀状2017
デザインの裏側

デザインの目のつけどころ

小野木 雄
投稿者:小野木 雄(デザイナー)

こんにちは。デザイン部の小野木です。

モノサスでは「ものさす年賀状」を毎年送付させていただいています。お客様に多数送られるであろう年賀状に埋もれないために、1年のお礼と翌年のご挨拶を兼ねて、年明けではなく前年末に、ほんの少し大きめのサイズでお送りしています。
年賀状制作は毎年の恒例行事と化しており、11月に行われる周年パーティーが終わる頃になると、「あぁ、この季節が来たか・・・」とソワソワします。例年だとあまり会社のことは気にせずに自由にデザインさせていただいていましたが、モノサスサイトがリニューアルして1年経った今、、「モノサスってこういうカンジだよね!」という会社のトーン&マナーが見えてきたため、今年の年賀状では「モノサスらしさ」をもう少し伝えられたらと考えました。

今年は「酉年」ということで、「鶏」をテーマにしたデザイン。もらっておしまいではなく、モノサスの何かを知ってもらい、ほんのちょっと「へぇ」と思える工夫をしましたので、今回はその裏側を紹介します。
 

テーマは「食」

「来年モノサスは “食” の事業をするわけだから、それにちなんでもいいかもね。」

昨年から進めている「地産地食」をテーマにした事業 “ Food Hub Project ※” という新事業の支配人、真鍋(プロデュース部部長)からのアドバイスです。昨年も、ものさすサイトリニューアルに伴い、年賀状の方向性について助言をもらいました。

※神山町地方創生戦略を考えるワーキンググループがきっかけではじまったプロジェクト。神山町役場、神山つなぐ公社、(株)モノサスが共同で会社を設立した「株式会社フードハブ・プロジェクト」が運営している。「育てる・つくる・食べる・つなぐ」を行動指針とし、2017年3月には「かま屋」「かまパン&ストア」がオープン予定。

さらに、いろんな会社様から頂いた年賀状や、フリーペーパー、雑誌などを並べて、どんなものが届いたら嬉しいか考えます。

食、鶏・・・・・・焼き鳥・・・とか? アイディアとして安直な気もするし、絵として成立するのか?という疑問が湧きます。ですが、それ以上のことが頭に浮かばない私です。

真鍋「世界の鶏をずらっと並べたら? いや、鶏料理を並べよう!」

「いいんだっ!」と内心ツッコミを入れつつ、いざ描いてみるとあまりないデザインだから面白いかもしれないと考え直し、「とりあえずやってみる!」というデザイナーとして正しい行動に出ることにしました。
 

落とし所は「拠点×地鶏=??」

デザイン着手にあたり、世界の鶏料理を調べます。初感としては「すべて茶色い」。ひとつだけイラストを描いてみますが、いろんな料理を並べることを考えると、大きさも制限されるし、色味も一辺倒になりそうだったので、この線で進めるとマズいと判断しました。

料理ではなく鶏を並べるという案もあったと思い出しながら、「食のコンセプトが薄れるかもなぁ」と自問自答します。

こうやって悩んでいるときには、モノサスメンバーの岩木に相談すると、何かしら解決の糸口が見えてきます。岩木はプロデュース部のメンバーで、業務管理やものさすサイトの校正など、職種不明だけれども、とても大事な仕事を複数掛け持っているマルチプレイヤーです。もともとアートやデザインを見るのが好きで、相談するといろんなアイディアで相談に乗ってくれます。

岩木「そういえば林さん(弊社代表)の奥さんが、周年パーティーのときモノサスの拠点にちなんだ飾り付けのケーキを用意してくれてたよね。」

徳島県神山町に新しくサテライトオフィスが完成し、拠点が4つになるモノサス。ここで初めて「地域」という考え方が加わります。
地域と鶏といえば「地鶏」。モノサスの拠点がある土地の地鶏をデザインの主役にすれば!とひらめきます。合わせて土地にちなんだ農産物も配置すれば、土地と食の関係が強調されそうです。

しかし、地鶏と特産物だけレイアウトしても少し味気ない。もう少し土地と地鶏を視覚的に分かりやすく表現する方法がないだろうか?と考えた結果が「図鑑」でした。地図を背景に地鶏をレイアウトし、その特徴と紹介を記載する。こうすることで、ただもらって終わりではないプラスαになるのでは?と思い至りました。

大きなコンセプトから、具体的なデザインの落とし所が見えてきました。

進めていくうちに、気づいて良かった落とし穴

まずは、サテライトオフィスが新しく新設されるということで、神山の銘柄鶏である「神山鶏」から描き始めます。「水がきれいな山間部でないと育てられないこと」、「メスの平飼いしかしないこと」など、その鶏の詳細も調べながら、あとで文章を起こすことも意識して描き進めます。


左)最初に線で下書きし、Webや資料を見て丁寧に特徴を捉えながら塗っていきます。トサカって結構気持ち悪い・・・。
右)背景の地図は、「Waterlogue」というスマホアプリを使用して水彩っぽく写真加工しました。

で、大阪の地鶏は「葵之地鶏(あおいのじどり)」。しかし、よく見るとそのサイトが全く更新されていないことに気づきます。他の資料で「葵之地鶏」について調べても情報が少ない・・・。「この地鶏本当にあるのか?」という疑問が生まれました。そこで、生産者として記載されている企業に電話したところ・・・

「申し訳ございません。すでに数年前から生産しておりません。」

聞いたところ、元々、和歌山から雛鳥を仕入れて育てていたもので、現在、大阪では生産していないことが判明。危うく自信満々で誤った情報をばらまくところでした。過去に大阪の地鶏として販売されていた事実は変わらないので、コンセプトを大きく見直す必要はありませんでしたが、なんでも情報を鵜呑みにするのは避けた方がよいという教訓になりました。
 

些細なことでも本気で向き合ってくれるモノサスメンバー

デザインの全体の調整をしながら、地鶏や特産物の説明文を入れていきます。色々調べながら文章案を書きますが、年賀状のデザインの邪魔にならない文章量で調整するのがとても大変です。

私は文章を書くことにとても自信がないので、調べたことの誤りがないかモノサスメンバーの上村にチェックしてもらうことにしました。上村も岩木と同様、プロデュース部のメンバーで卓越した文章力の持ち主です。

ここで上村のリサーチ力が光ります。私もそこそこ調べたほうだと思っていましたが、それ以上に鶏について調べ上げ、ただ地鶏の説明をしていた文章から、「どう食べたら美味しいか」というプチ情報を交え、より「食」というコンセプトに近い文章を書き上げてくれました。彼女とは過去にも某大学の案件を一緒に携わったことがありましたが、サイト構成を徹底的に調査し、プロジェクトに大きく貢献したのを覚えています。

完成間際になると、上村、岩木、小野木でちょっとした鶏談義ができるぐらい詳しくなっていました。上村曰く「まだ全然書き足らない、もっと鶏について語りたい」とのこと。見るのも食べるのも大好きという上村の鶏愛が溢れます。


「東京しゃもってさー、ロードアイランドレッド種と交配させたあと、また純系軍鶏と交配させるって手間がすごいよねー」「つまりはクォーター?」という謎の会話。
 

完成。「人と、地域と、ものさす。」


イラストも描き終わり、文章も完成して、全体は図鑑のような体裁でデザインしました。裏面には今年から本格的にスタートするFood Hub Projectとお店の紹介が入っています。

メインコピーは「人と、地域と、ものさす。」

年賀状デザインの最後のフィニッシュを代表林の言葉で締めくくります。この言葉のためにデザインされたような、しっくり感です。(「小野木くーん、書けないよー」と1週間ほど当初の納期が遅れたのは内緒です。)

今年は、いろんなメンバーの助言やアイディアを積み上げて完成となりました。
会社が大きくなり組織全体のモノの考え方や伝え方も変わってきました。年賀状もそのひとつで、数年前まで私や降旗が好き勝手デザインしていた頃と違い、会社にあわせて進化したように思います。

じっくりでなくてもいいので、他の年賀状よりほんのすこし眺める時間を取ってもらえれば幸いです。また来年もお楽しみに!

この投稿を書いた人

小野木 雄

小野木 雄(おのぎ ゆう)デザイナー

デザイン部の部長を退き、ひとりのデザイナーとして修行中。現在は主にデザイナー目線でプランニングに入ったり、UI / UXに深く関わってみたり。何のプロフェッショナルになるか模索しているけれど、イラスト仕事だけはずっと携われているのが心の救い。

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