2017年04月27日
「好き」が尊重される社会に
ものさす学習モード LGBT研究報告
はじめまして。品質管理部入社5か月目の乾です。
モノサスにはWeb業界に限らず様々な経歴を持った人が多くいますが、私も入社前までLGBTを研究テーマに大学院進学を目指していました。
現在はおかげさまで楽しく社会人生活を送っていますが、受験勉強中に学んだことをどこかでアウトプットしたいなと思っていました。そんなある時、中庭編集長から記事執筆のお誘いが。願ったり叶ったりで今回の記事ができあがりまして、今後も連載することになりそうです。どうぞよろしくお願いします。
LGBTを学びたいと思った理由
LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)ゲイ(男性同性愛者)バイセクシュアル(両性愛者)トランスジェンダー(体と心の性が一致しない、性別越境者)の頭文字をとったもので、セクシュアルマイノリティの総称として使われています。
学びたいと思ったきっかけは、さかのぼること高校時代。私が通っていた高校は校則がゆるく、ピアスもメイクも髪を染めることもOK。渋谷が徒歩圏内だったので学校帰りに遊びに行くこともありました。まさに「東京の高校生」というところでしょうか。特に女子は華やかなタイプが多かったです。しかし私はそういった雰囲気とはかけ離れていて、学校帰りにみんなで渋谷へプリクラを撮りに行くよりも、早く家に帰ってゲームをしたい派でした。
次第に居心地が悪くなり、通学中におなかが痛くなり、とうとう通うことすらできなくなってしまい2年生の春に中退しました。
これをきっかけに心の問題に興味を持ち、大学では心理学を専攻します。高校時代の悩みの原因がわかるかもしれないと期待していましたが、全く糸口がつかめず、だんだんと心理学への興味は薄れていきました。
原因がわからないモヤモヤを感じながらも、解決策を探していたときに必須科目にあったジェンダー論を受講します。そこでビビッときたのです。
ジェンダーとは、元来は言語学において名詞の性別を意味する用語でしたが、現在では生物学的性差(セックス)ではない、男らしさや女らしさ、男とは/女とはこうあるべきという考えである社会的文化的性差として広く知られています*1。
ジェンダー論を受講して、私が高校時代に感じた居心地の悪さは、周囲になじむために「女の子らしく」しなければいけないという思い込みからきていたものと気がつきました。
モヤモヤの原因がわかり、しかもそれが学問として成立していることに感動しました。
そんな夢中になったジェンダー論の授業で、LGBTについて取り上げられたのです。
授業では当事者インタビューのDVDを見たのですが、そこでは学生時代いじめられた経験や、周囲の理解が得られないことなど様々な苦労が語られていました。
私が高校というせまい世界でも辛かったことが、対社会となることを想像すると胸が痛みました。何かサポートできることはないかと考え、小さい頃から研究者になりたいという夢もあったため、大学院でLGBTを学ぶことを目指しました。
学んで見えてきたこと
本格的に受験勉強をはじめてから、ご縁があって他大学のLGBTサークルに入ることができ、当事者の方たちと関わりながらLGBTについて学ぶことができました。最初に感じたことは、みんなどこにでもいるような「ふつう」の大学生だということ。同時に「自分とは違う人」と無意識のうちに壁をつくっていたことに気がつきとても反省しました。
共通の趣味をもっていたり、くだらない話で盛り上がったり、すぐに仲良くなることができました。今でも映画をみにいったり、食事にいったりと良い関係が続いています。
ここで具体的なデータを紹介します。
全国約7万人を対象にした電通LGBT調査2015では、国内の7.6%、約13人に1人がLGBT当事者という報告がされています*2。意外と多いと感じる人もいるのではないでしょうか。私が出会ったサークルメンバーのように見た目では判断できないからこそ、今まで周りにいたとしても気がつかなかったということがあるかもしれません。
しかし、LGBT当事者の68%がいじめや暴力を受けた経験があるという調査結果*3や、性同一性障害当事者における58.6%が自殺念慮を持った時期があり、28.4%が自傷・自殺未遂にいたっているという報告もされています*4。
可視化されにくいのに、事態は深刻であることが理解できるかと思います。
デリケートな問題であるため慎重にならなければいけませんが、早急な対策が求められています。私たちにできることは何でしょうか。
私が誰でもすぐにできると感じたことを紹介します。
LGBTをタブーにしない
サークルに入った当初、私が構えすぎていたところもありますが、どんな関わり方をすればいいか、何と呼べばいいのかなど悩むことがありました。そんなある日、おもいきって正直に聞いてみることに。すると意外にも「わからないことがあれば何でも聞いてほしい」と答えてもらえました。
また、あるサークルメンバーからは「触れちゃいけない空気をだされるほうが困ってしまう」という声が。もちろん、言いたくない、他の人には秘密にしてほしい、ということもありますが、そのあたりはマイノリティ/マジョリティ関係なくコミュニケーションの問題になってくると思います。
「わからないから」と壁をつくらずに、互いを尊重しあいながら関わることができれば、新しい価値観もみえてきます。
「周りにいるかもしれない」という意識を持つ
「LGBTは知っているけど、“自分の周りにはいない”と思われていることが多くて悲しい」という話も聞きました。こんな意識でいると、なかなか関心が向かないものです。
それゆえ、知らぬ間に差別的な言動をとっていることがあるかもしれません。
例えば、「ホモ」や「オネエ」という言葉は差別用語とされています。本人の悪意がなくても、嫌な思いをさせていることがあるかもしれません。
もちろんLGBTを嘲笑するなんていうナンセンスなことも絶対にやめましょう。
13人に1人はLGBT当事者という先ほど紹介したデータの通り、本当はとても身近なことです。もしかしたら周りにいるかもしれないという意識を持つだけでも、言動に変化がでてくるはずです。
最後に
私は「好きなものを好きといえる」ことがどんなに幸せで、素晴しいことかLGBTを通じて学ぶことができました。人でも物でも、わくわくと心が動かされることは、その人にとって常に正しいはずです。それぞれの「好き」が尊重される社会となることを願っています。
近年はLGBTに対して理解が広がりつつあるとされていますが、まだまだ差別や偏見が残っているのも事実です。しかしだからこそ、明るい気持ちでい続けることが何よりも大切なのではないかと感じています。LGBTの支援をおこなう企業や自治体も増えてきました。
その中でもポジティブな発信をおこなっているNPO団体の東京レインボープライドをご紹介します。
「らしく、たのしく、ほこらしく」をモットーに活動されていて、毎年5月に代々木公園で「TOKYO RAINBOW PRIDE 」というイベントを開催されています。今年は5月6日、7日に行われます。
また4月29日~5月7日はレインボーウィークと題して様々なイベントが催され、街でレインボーフラッグを目にすることもあるはず。
これを機会にLGBTについて考えるきっかけとなればと思います。
そんなTOKYO RAINBOW PRIDEに私もいってまいります!
次回は取材報告です。会場の様子や雰囲気をお伝えできればと思っています。お楽しみに!
<参考文献>
*1 江原由美子/山田昌弘2008『ジェンダーの社会学入門』岩波書店
*2 電通ダイバーシティ・ラボ2015『電通LGBT調査2015」(PDF)
*3 いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン2013『LGBTの学校生活に関する実態調査(2013)』(PDF)
*4 中塚幹也2010『学校保健における性同一性障害 学校と医療との連携』日本医事新報No4521 60-64
TOKYO RAINBOW PRIDE2017
今年のテーマは「CHANGE-未来は変えられる-」
開催概要
開催日 2017年5月6日(土)、7日(日)10時~18時
パレード 2017年5月7日(日)詳細は後日発表
会場 東京都代々木公園イベント広場&野外ステージ
各コンテンツの詳細はこちら
http://tokyorainbowpride.com/about-trp2017/parade-festa
レインボーウィーク
開催日 2017年4月29日(土・祝)~ 5月7日(日)
会場 東京都内を中心に全国各所
各イベントの詳細はこちら
http://tokyorainbowpride.com/about-trp2017/rainbow-week