2017年10月13日
今とこれからを考える時間
神山での学びと暮らし
〜神山ものさす塾・3期生便り〜
はじめまして。神山ものさす塾3期生の岩井です。
7月に塾が始まり早3ヶ月。スキーランドでの1ヶ月の共同生活を経て、10人が5ヶ所の家に生活拠点を移し、生活にも慣れてきたかと思えばすでに折り返し地点を迎えています。第1期のコーダー育成、第2期のWebライター育成に続き、第3期ではフロントエンドエンジニア育成プログラム。現在、全国から集結したメンバーで、 HTML / CSS から幅広く学んでいます。
今期の塾生は日々どのようなことを学び、暮らしているのか。勉強面はもちろん、生活面も含めて気になっている方もいるかと思います。そこで今回は、3期生がつづる記事のトップバッターとして、“神山での学びと暮らしの今”を私視点で紹介します。
今回の神山ものさす塾レポーター
-
岩井 くるみ:
カメラと離島、自由気ままな旅が好き。お気に入りの島は北の礼文と南の波照間。写真に写るより写したい派。航空業界からIT業界への転身を目指して、ものさす3期生として神山へ。
ものさす塾に入るまで
「なぜ神山に来たの?」
こちらに来て度々聞かれたのは、「なぜ神山に来たの?」という質問。塾生10人がそれぞれの思いや経歴を持ってやってきていますが、そんな全員に共通している点は、以前の仕事や生活から何らかの“変化”を求めてやってきたということ。私もその一人です。
今年の塾生の特徴はWeb制作の勉強がメインで、たまたま縁あって行き着いた場所が神山だったというメンバーが多い印象です。ですが、温かい住民の方との交流を通じて、個々で茶摘、稲刈り、鹿をさばくなど、ここでしか得られない貴重な経験をする機会を得ながら日々楽しく暮らしています。
私が神山に来た理由ー環境を変えたかった
ものさす塾に入る前は、新卒で働きだした会社で国際航空貨物の仕事をしていました。深夜早朝に及ぶ空港での不規則なシフト勤務で人の出入りも多い業界。3年目を迎え、仕事にも慣れて落ち着いてきた頃、まわりの同期の間では転職する人がちらほら出てきました。物流での仕事を通じて経験してきた"こなす"仕事をするうちに、本当にやりたいことは何かと考えたとき、"つくる"仕事に関わりたいという思いを抱くようになっていました。
終身雇用制度が崩れ、転職をすることが一般的になりつつある今、柔軟な働き方を求めるならWebを使った仕事が良い。そんなことも視野に入れつつ、さまざまなモヤモヤを抱えながら、今後の働き方や人生についてふと立ち止まって考えたとき、以前旅先で知り合った方に教えてもらった「日本仕事百貨」というサイトを思い出して見はじめました。
その中で、フロントエンドエンジニアを目指すという、「ものさす塾」の募集に出会いました。私の Webやパソコンに関するレベルはというと、コーディングに関しては全くの未経験。そして趣味の写真や旅動画の編集、Office、Macの操作には慣れているといった感じでした。今とは全く違う環境に身を置きながら、未経験でも経験豊富な Web制作会社から実践的に学べる貴重な機会。今しかない!という勢いも重なって思い切って応募することにしました。入塾が決まってからは、1ヶ月あまりで退職・引越しとバタバタの1ヶ月を過ごし、みんなより1週間遅れで合流しました。
環境を変えたいと思っても、自分から行動を起こさなければ現状維持のまま。神山の自然に癒されながら、のびのびとできる環境で今後のことをじっくり考えてみても良いのではないかと思ったのが、私が塾生になった正直な理由です。もともと旅が好きで、国内の離島を中心にあちこちと行っていたので、知らない環境に飛び込む勢いと行動力だけはあったのかもしれません。
ものさす塾に入って 3ヶ月経って
1. 授業面
カリキュラムの詳細はこちらに掲載されていますが、この3ヶ月間で学んだ具体的な内容を塾生視点でまとめてみます。
まずは、これまでの授業内容を箇条書きに。
- HTML / CSS の基礎と応用
- jQuery の基礎
- リキッドデザイン / レスポンシブデザイン
- 課題サイトの忠実な再現
- テーマに沿った自作サイト制作
- クライアント側と制作側に分かれたロールプレイ形式でのサイト制作
- ディレクター・デザイナー・コーダーに役割分担し、他グループに依頼されたサイトを制作するグループワーク
- 代々木本社のサイトチェック業務体験
最初の1ヶ月は講義中心で、その後は実践型。課題で出されたページの再現や自作デザインのサイトを繰り返し作って練習しています。本を読んでインプットするだけでなく、実際にサイトを作ってみることが一番力になっているように感じます。ひとまず作ってみて、行き詰まったら質問する。塾長の伊藤さんは、自分で解決する力を身につけていく実践型スタイルを重視しています。そのおかげで、塾生の大半が初心者でしたが、今では、入塾した当初と比べ格段にできる幅が広がりました。
また、制作側だけでなく、クライアントの目線、完成したサイトをチェックする担当の目線など、異なる視点からのロールプレイも行い、サイト制作全体の流れを経験しました。
普段の授業以外にも、時々ゲスト授業もあります。これまでに、モノサス代表の林さん、周防大島でサテライトオフィスを運営する副社長の永井さん、フードハブ・プロジェクトを手がける真鍋さんが、働き方と暮らしに関する考え方やモノサスに至るまでのキャリアについて話して下さいました。
"つくる・教える・書く"の仕事を軸に、働き方研究家として活動される西村佳哲さん主催の4塾合同(神山塾・えんがわ塾・Week塾・ものさす塾)のワークショップも開催されました。ワークショップは神山で同時進行する他の塾生が一同に顔を合わせ、交流を深める場となりました。やはり最初はお互いに「なぜ神山に来たの」という会話からはじまります。さまざまな経緯があって集まったメンバーの話を聞くことは興味深く、面白いものでした。
このように、ただスキルを学ぶだけでなく、神山に集まるさまざまな人に話を聞き、交流する中で生き方や働き方、卒塾後のことを考えるための時間もまた、大切な学びの場でもあります。
2. 暮らし面
スキーランドホテルでの共同生活
7月の1ヶ月間、初めての場所で出身地も方言も年齢もばらばらなうえに、初めて会ったメンバーと過ごしたスキーランドホテル(通称 スキーランド)での生活は、合宿のようで不思議な感覚でした。平日の朝晩はみんなで一緒にご飯を食べ、ロビーで教えあいながら課題に取り組み、夜には皆で星空を眺めた日々も(タイトルの星空の写真はスキーランドで撮影)別々に暮らす今では既に懐かしいです。
スキーランドのお父さん、お母さんの優しさと温かさに触れ、決まった時間に美味しくバランスのとれたご飯を食べる。山と川に囲まれた自然の中で癒されながら、タイムプレッシャーに晒された以前の生活とのギャップ、そして、時間の流れ方の違いを常に感じていました。休日はBBQに餃子パーティー、以前の神山塾生が作ったピザ窯を使おうということで開かれた本格ピザパーティー、プロジェクターを借りて特設映画鑑賞会など週末ごとに何かしらのイベントがあり、充実した1ヶ月はあっという間に過ぎていきました。
「西分の家」での暮らし
8月から塾生3人ですみはじめ住宅※「西分の家」に引っ越しました。
共有スペースには広いキッチンがあるので、料理好きな塾生がやってきてみんなで一緒にご飯を作って食べたり、椅子作り体験やすだちドリンクパーティといったイベントも開かれ、家にいながらにして自然と人との交流やつながりが持てる環境で暮らしています。
また、引っ越してきてからは、アイリッシュ音楽好きである同居人の塾生2人に影響され、ティンホイッスルという小さな笛を始めました。時々、塾生かどっちのバイオリンと私のティンホイッスルでお互いに好きな曲を一緒に演奏するのがとても楽しいです。彼女は聞いたらすぐに弾ける特技を持っていて、リクエストした曲もすぐに弾きこなしてしまいます。朝起きて授業に行く前、バイオリンの音が聞こえてくると、とても優雅な気分になります。
授業後や休日の過ごし方
最初の1ヶ月はスキーランド滞在後の家探しのため、情報を得てはあちこちに内見に行っていました。家がみつかってからは農作業のお手伝いもし、阿波晩茶の茶摘や稲刈りを体験しました。夏休みには、徳島といえば阿波踊り!ということで桟敷席最前列で活気溢れる踊りを楽しみました。阿波踊りのリズムと踊りの組み合わせはなぜだかずっと飽きないです。そして、夏の終わりの焼山寺での「おこもり法要」。山頂から打ち上げられた、想像を超える至近距離の花火はこの夏一番の衝撃でした。おそらく日本一を誇る近さだと思います。他にも、神山の珍スポット幸福神社に行ってみたり、日帰りドライブで祖谷のかずら橋、かかしの里、剣山と一通り巡りました。
神山にきて感じたこと
神山にきてさまざまな人に出会い、過ごしているなかで感じていることが二つあります。
一つは、時間の流れ方の違いです。豊かな自然の中で暮らしていると、ゆったりとした時間感覚になります。そのおかげか、以前より疲れにくく健康的な生活が送れるようになりました。もう一つは、予想以上に外国の方が訪れる町であると感じました。招聘アーティストが2、3ヶ月神山に滞在して作品づくりを行う神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)が毎年開催され、地域一体となって国内外のアーティストを歓迎しています。国内外からITやアートに関わるクリエイティブな人が神山を訪れるのは、光ファイバー網が整備され、山奥でもストレスなくインターネットに繋がる環境という点が大きいのではないかと思っています。
写真は先日行われたKAIRのオープンアトリエの様子。10月末の作品展覧会が今からとても楽しみです。
最後に
言葉だけでなく、自身で見た景色や神山での日々を写真でも伝えたいと思い、出かける際にはきまってカメラを持ち歩いています。今回の記事を通じ、徳島県内や神山で暮らしながら見つけた美しい風景、そして、私視点での塾生の学びと暮らしの様子が伝われば幸いです。
7月から12月までの半年間もあっという間に折り返し地点。環境を変え、”つくる”仕事に携わる学びを得たい、という思いで辿り着いた神山。どのアプローチでものづくりに携わっていくのかは未だ模索中ですが、現段階では、まずは現場でWebの経験を積んではじめて柔軟な働き方を追い求めることができるのではないかと思っています。
残りの期間も、今しかできない目の前の学びを充実させながらも、卒塾後のことをもう少しじっくり考えながら過ごしていきたいです。