Tue.
31
Oct,2017
林 隆宏
投稿者:林 隆宏
(相談役)

2017年10月31日

Open Marketingのはじめかた
Step.3 力を集める -その1-

Open Marketing

林 隆宏
投稿者:林 隆宏(相談役)

みなさん、こんにちは。モノサス代表の林です。

今回からはコアカスタマーを集めるための方法へと進みたいと思います。
Step.3、「力を集める」についてお話しします。

Step.1、2では、自分がやってきた商売を評価し、支えてくれてきた
コアカスタマーの存在を認識し、彼らが評価してくれている、
自社の大切にしてきた価値観、商売のやりかたを自らが信じることの
大切さについてご説明してきました。

今回からは、コアカスタマーを増やしていくための
アプローチについてお話ししたいと思います。
 

コアカスタマーを、コアカスタマーたらしめているもの。

どのようにすればより多くのコアカスタマーとお付き合いすることができるのかを
考えるためには、まずコアカスタマーとそれ以外の顧客の違いを知る必要があります。
以前の回で、コアカスタマーを計測可能な形で数値化し、
具体化しましたが、購入金額が高いことや、購入頻度が高いことが
コアカスタマーをコアカスタマーたらしめているわけではありません。

何度も何度も繰り返しおなじ商品・サービスを利用しつづける顧客には、
それなりの理由があります。

その理由を探っていくと、コアカスタマーは
共通する似たような体験をしていることがわかります。

少し実例を交えてお話しします。

【高級ヘアケア用品】
高級ヘアケア用品の会社では、10年以上にわたってその会社の商品を
使い続けている顧客にインタビューを実施しました。
そこでわかったのは、いずれの顧客も、使用しはじめてから
数ヶ月経った際に、「髪質が改善した」と感じていることがわかりました。
また、そう感じるのは、くせ毛や、うねりなど、髪質になにがしかの
悩みを感じ、これまでに様々な手段で髪質の改善に取り組んできた過去を持つ
女性顧客たちであることが明らかになりました。

【インテリア雑貨店】
インテリア雑貨の店舗を展開する会社では、毎週のように店舗に通い、
一度の滞在時間が1時間近くにわたる熱心な顧客にインタビューを実施しました。
その顧客たちに共通しているのは、お店に物を買いに来ているのではなく、
店舗に身を置くことで、自分の家のインテリアについてのヒントをもらい、
また、そのおかげで、人を招いたり、家でつくる料理が変化したり、
人にギフトをあげるようになったりと行動に変化が起こっていることが
わかりました。
また、通い続けるうちに、自らが「センスがよくなった」と実感し、
それによって周囲との人間関係にまで変化が起こっていることが明らかになりました。

かなりかいつまんだ紹介ではありますが、
コアカスタマーの分析をしていくと、このような似通った体験があぶりだされてきます。
わかりやすくするためにデフォルメしている部分はありますが、
これまで重ねてきた様々な企業のコアカスタマーへのインタビューのほとんどのケースで
これらの共通点が見つかっています。

私たちはコアカスタマーに共通する体験のことを
「コア・エクスペリエンス」と呼んでいます。

少し話題が横道に逸れますが、コアカスタマーとコアエクスペリエンスの
発見の順番について触れたいと思います。
説明の都合上、先にコアカスタマーについて解説をしましたが、
実際のところ、私たちが先に言語化したのは
コアエクスペリエンスの方でした。

当初はインタビューをする際に、インタビュイーをクライアントと選別するにあたって
「売上や購買頻度ではなく、自社がこれからお付き合いをしていきたい
 客層を抽出しましょう」
とだけ決め、顧客名簿を上から下までなぞって見ていくなど、
かなり手間をかけてインタビュイーを抽出していました。
抽出の精度が粗いのはインタビュイーの人数を多めにすることでカバーしていました。

インタビューをしていくなかで、「これは本当にいい顧客だ」と感じる顧客には、
上記のような共通する体験があることが徐々にわかってきて、
それを「コアエクスペリエンス」と呼ぶことにしたのです。

そして、コアエクスペリエンスという共通体験を経て
固定客として買い続けてくれている客層のことを、
のちにコアカスタマーと呼ぶようになりました。
 

コアエクスペリエンスは万人に訪れるものではない。

コアエクスペリエンスという存在を見つけたことは
Open Marketingという考えを発展させるうえでは、
非常に大きな意義がありました。

すべてのコアカスタマーが完全に共通したコアエクスペリエンスに
たどりついているわけではありませんが、
様々な背景をもった顧客が、似たような体験を通して
コアカスタマーへと変化していくのは非常に興味深いものです。

そして、コアエクスペリエンスの発見は、同時に、
「すべての顧客・見込み顧客がコアエクスペリエンスを体験することはない」
ということの発見にもつながりました。
むしろ、様々な企業のコアエクスペリエンスを可視化していくと、
コアエクスペリエンスにたどりつくのは、非常に限られた客層であることが
わかってきたのです。

「全ての顧客を満足させる商品・サービスはない」
というフレーズはよく聞きますが、
この言葉のニュアンスは、一部の「あわない」客層を諦めるようにも理解できますが、
実際には、非常に限られた、「あう」客層しかコアエクスペリエンスを経て、
コアカスタマーにはなり得ないことがわかったのです。

さきほど例であげたヘアケア製品では、
くせ毛や、うねりなど、髪質になにがしかの悩みを感じ、
これまでに様々な手段で髪質の改善に取り組んできた過去を持つ女性であることが
コアエクスペリエンスにたどり着く可能性の高い客層であることがわかりました。
(実際にはさらに細かい条件や、少し違った客層も存在します)
言葉にすると簡単そうですが、出現率は決して高くない客層です。

コアエクスペリエンスが可視化できてくると、
マーケティングの課題も同時に見えてきます。

今月も最後までお読みいただきありがとうございます。
次回は、コアエクスペリエンスの発見による
マーケティングの課題の変化についてお話ししたいと思います。

この投稿を書いた人

林 隆宏

林 隆宏(はやし たかひろ)相談役

長野在住で、東京、徳島、ときどきタイを行き来する生活。好きなことは木と歌と料理と宴会。木を使ったDIYが好きすぎて、ついには木材の販売事業を立ち上げてしまった。

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