2017年11月15日
ランチタイムに映画の本を持ち寄って
〜モノサスの「読書会」#19〜
こんにちは。図書委員の村上です。
いつもは仕事が終わったあと、夜にひっそりと開催している読書会ですが、今日は社内からのリクエストに応えて、初のデイタイム開催。その名も「ランチ読書会」です。明るい日差しのなか、午前中の仕事を終えたメンバーが、「映画と本」をテーマにした本を持ち寄りました。
お昼ごはんを片手に参加してくれたメンバーも。リラックスした雰囲気のなか、読書会スタートです。
発表タイム
今回も読書タイムは設けず(読んでくること前提)。ひとり5分間で本を紹介します。
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言葉の海を旅しよう
三浦 しをん(著)『舟を編む』(紹介者 村上 伊左夫) -
私たちの話す言語が、思考になる
ドゥニ・ヴィルヌーヴ(監督)映画『メッセージ』劇場用パンフレット(紹介者 乾 椰湖) -
女に逃げられる天才的監督
四方田 犬彦(著)『ゴダールと女たち』(紹介者 和田 亜也) -
個性爆発の北欧エッセイ
片桐 はいり(著)『わたしのマトカ』(紹介者 井上 真理子) -
略奪された黄金の絵画
ジル・ネレー(著)『クリムト』(紹介者 羽賀 敬祐)
言葉の海を旅しよう
『舟を編む』(紹介者 村上 伊左夫)
- 村上
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三浦しをんさんの『舟を編む』です。出版社で辞書づくりに携わる人々を描いた作品ですが、少し前に松田龍平さん主演で映画化されましたよね。
実は昨日買ったばかりで、まだ20ページ位しか読んでないんですが、最初の部分を読んだだけでもすごく引き込まれてます。
冒頭、定年間近のベテランの編集者が幼いころ、買ってもらった辞書をめくって、言葉の意味を飽きることなく眺めてるシーン。あぁ自分も似たようなことをやってたなぁと思って。私の場合は、英和辞典が好きで、時間があればめくって単語の意味を眺めるのが好きでした。
たとえば「右」という言葉の意味をどう説明するか、など、こんなことを考えながら仕事をしてる人達もいるんだなぁと。言葉に対して、ふだん考えてなかったような見方ができるというか、これから読み進めていくのが楽しみです。
- 羽賀
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僕、映画化されたのを観ました。題材として派手じゃないんだけど、こんな仕事あるんだ!って、知らない世界を垣間見てるようで、発見があって面白かったです。
- 乾
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松田龍平さんのポスター、印象に残ってます。
- 村上
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ひとつのことを突きつめる仕事っていいですよね。そういえばこの作品、アニメ化もされてるようです。文庫の帯に載ってて初めて知りました。
私たちの話す言語が、思考になる
映画『メッセージ』劇場用パンフレット(紹介者 乾 椰湖)
- 乾
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今春公開された映画『メッセージ』のパンフレットです。表紙に穴が空いててカッコイイんですけど、この穴の形をした巨大な宇宙船のようなものが、世界各地に出没して…というところから物語が始まります。
主人公の言語学者ルイーズは、他の科学者達と国の調査団として派遣されます。彼女は言語学的アプローチから未知の生命体と接触し、タコに似た外観の彼らを「ヘプタポッド(7本足)」と呼び、彼らの言語と思考を解き明かしていきます。
彼らの言語には時間という概念が無くて、段々とルイーズの時間の概念もなくなっていって..いろんなシーンが過去や現在や未来がよくわからないまま出てきたりして、観てる私たちも「これはいつのこと?」とわからなくなっていくんです。
映画を観た後に、町山智浩さんのトークショーがあって、そこで物語の謎を解説してくれたので、すごくスッキリしました(笑)。
町山さんの解説によると「その人の話す言語が、その人の思考になる」と。たとえば、英語は結論が先だから議論に適していて、アジアの言語は結論が最後に来るから、曖昧な表現が多いんだそうです。言葉とか、概念とか、いろんな意味で「メッセージ」を考えさせられる映画でした。
- 羽賀
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単純なSFというよりは、言語学とかいろんな側面がある作品なんですね。
- 乾
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最初はウィルスとか汚染とかすごく警戒してるんだけど、ルイーズがアプローチしていくうちに、除々に彼らとコミュニケーションが取れていって…でも国家間の陰謀や争いも出てきたり、それを言葉の力で解決していこうという…
- 和田
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テレビでCMやってて、観たいなぁと思ってました。
- 乾
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ぜひ!あ、でもパンフレット読まずに観てくださいね、ネタバレしちゃうので(笑)。ちなみに原作は、テッド・チャンの『あなたの人生の物語』です。いずれ読んでみたいなと思ってます。
女に逃げられる天才的監督
『ゴダールと女たち』(紹介者 和田 亜也)
- 和田
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ヌーヴェルヴァーグの代表的監督、ジャン=リュック・ゴダールと、5人の女優たちの関わりを紹介した新書『ゴダールと女たち』を持ってきました。
「新しい波」を意味するヌーヴェルヴァーグは、1950年代に始まった前衛的・実験的な映画の呼称です。難解なストーリー、即興演出、斬新な構図などが特長ですが、監督のミューズともいえる女優たちの存在もすごく大きいんです。
自分が監督した作品の主演女優と結婚する人も多くて、ゴダールもそう(笑)。結婚しては別れ、また次の人と結婚して…そんな5人の女優たちとの、出会い、映画、プライベートがそれぞれに紹介されています。
なかでも、私はアンナ・カリーナが好きで、彼女が出演したゴダール作品も観てるんですが、代表作の「気狂いピエロ」を撮影したときには、実は2人は別れてたんだ…とか、裏話的なこともわかって面白くて。ゴダールの映画と併せて読むと、すごく楽しめる本だと思います。
- 村上
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表紙に「女に逃げられるという天才的才能」って書いてあるのは…(笑)。
- 和田
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ゴダールがどんどん新しいことを求めるので、女の人はもう無理、ついていけないって逃げちゃう。この時代の監督と女優さんって、付き合っては別れ…がホントに多いんですよね。一番キレイに撮ってもらって、はいサヨナラみたいな。
- 井上
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男女のラブストーリーが多いんですか?
- 和田
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ラブに重きは置かれてないですね(笑)。出会って、逃避行して、撃たれて死ぬ、おわり、とか。死も重くないし、感動とかもない。でも映像がすごくカッコイイ。雰囲気や世界観が好きなんです。
個性爆発の北欧エッセイ
『わたしのマトカ』(紹介者 井上 真理子)
- 井上
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映画がテーマということで、私の好きな「かもめ食堂」に出演していた、片桐はいりさんのエッセイ『わたしのマトカ』を持ってきました。北欧が舞台の映画ですが、撮影後もしばらくフィンランドに滞在した彼女の日々が描かれてます。
はいりさんは個性派女優として有名ですが、エッセイでも個性が爆発してて(笑)。独特の「はいり節」が面白すぎて、電車で読むとニヤニヤして危険なんです。
事前情報なしに旅をする彼女らしい、計画されてない面白さというか。特に、フィンランドの国民的お菓子「サルミアッキ」の驚愕的な味の描写とか、それを克服してついには、サルミアッキのお酒まで飲めるようになった話とか、ホント面白い。
最近、笑ってないなあという人におすすめしたい1冊です。
「かもめ食堂」の裏話的な内容も載ってるので、かもめ好きな人もぜひ。
- 羽賀
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そのお菓子、どんな味なんですか?
- 井上
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飴ドロップみたいな感じ…見た目はドス黒くてのど飴のような…味は想像をはるかに超えて「タイヤのゴムに塩と砂糖を入れたような」とか言われてる。でもフィンランドの人は大好きなんです(笑)。
- 村上
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フィンランド、1回行ってみたいですね。
- 井上
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映画を観たのは10年以上前だと思うんですけど、今観ても全然古びてない。私も死ぬまでに絶対、フィンランドに行きたいです。
略奪された黄金の絵画
『クリムト』(紹介者 羽賀 敬祐)
- 羽賀
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画家グスタフ・クリムトの作品集です。2015年に公開された「黄金のアデーレ 名画の帰還」という映画を観たんですが、登場する名画がクリムトの作品で、それにちなんで持ってきました。
映画は実話を元にしていて、80歳を超える老女がオーストリア政府を相手に、絵画「黄金のアデーレ」の返却を求める裁判を起こします。彼女の一族はユダヤ人で、第二次大戦中ナチスにより、アデーレを所有していた叔母の財産は没収。戦後もオーストリアの美術館の所蔵品となってしまいます。
アデーレのモデルとなった叔母、彼女の唯一の形見となる絵画は、はたして本来の持ち主に返還されるのか。ナチスによる略奪絵画を巡るドラマを描いた作品ですが、すごく面白かったです。
クリムトの絵は、5年前にMoMA(ニューヨーク近代美術館)で初めて実物を観ました。
黄金のアデーレのように金箔を多用した作品は、日本の琳派の影響を受けていると言われていたり、独特の世界観があって好きです。この本は、タッシェン出版社の「ニュー・ベーシック・アート・シリーズ」ですが、値段も手頃なので、気になるアーティストなどいろいろ集めて楽しんでます。
- 村上
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映画は、実話なんですね。
- 羽賀
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はい。僕、実話を元にした映画に弱いんですよね、やっぱり描写がリアルというか。ちょっとネタバレになるかもしれませんが、現在この絵画は、ニューヨークのギャラリーで常設展示されて、一般公開されてるそうです。
- 井上
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MoMAで見たクリムトの作品、どうでしたか?
- 羽賀
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だいぶ前のことなので、詳しくは覚えてないんですけど(笑)女性を描いた素敵な作品がありました。そういえば、来年ちょうどクリムトの没後100年なんです。記念の展覧会とかあると嬉しいですね。
読書会をおえて
5名の参加者を迎えて、にぎやかに行われた初のランチ読書会。それぞれのチョイスが光る「映画と本」が集まりました。仕事の合間に、明るい日差しのなかで、好きな本を語り合うのも良いものですね。今度は「3時のお茶」にあわせてやるのも楽しいかもしれません。
次回はどんなテーマになることやら。それでは、また!