2017年12月13日
ジャズとアートワークと私
リード・マイルスのジャケットデザインに見るカッコよさ
こんにちは。デザイン部の濱端です。
みなさん、ジャズ好きですか?
自分は、高校を卒業後、音楽の学校に進学したんですが、入試の課題曲になんとなーくジャズを選択して以来、かれこれ20年くらいジャズを聴いてます。
入学した音楽の学校も、ジャズの理論がベースにあるカリキュラムが多かったので、自然とジャズが身近な存在になってました。自分はベースを弾いていたのですが、当時は仲間内でジャズっぽい感じのセッションとかをよくやってたような気がします。
その後、20代中盤くらいで、お遊びながらグラフィックを作ったりするようになって、気づきました。
ジャズのアートワークちょーかっこいい。
モノクロの写真に、タイポグラフィ、ドンッとしたインパクトのあるあの感じ...。
そんなわけで今回のデザインの目のつけどころは、ジャズ専門のレコードレーベル、ブルーノート・レコード(以下 ブルーノート)で数々のアートワークを担当し、ジャケット・デザインの第一人者でもあるリード・マイルスの作品を、ジャズ好きなら結構知っているウンチクとともに紹介したいと思います。
ちなみに、ブルーノートの中でも名盤の多い、生産番号1500番台、4000番台のアートワークはほとんどリード・マイルスが担当していたり、若かりしアンディ・ウォーホールがリード・マイルスの元でイラストを書いていたりと、けっこう伝説的な人なんです。
それでは、リード・マイルスのアートワークを私が大好きなものからピックアップしてご紹介します。
情熱的なグルーヴを象徴する、踊るタイポグラフィ
Dippin / Hank Mobley
まずは、テナー奏者ハンク・モブリーの名盤「dippin'」のアートワークから。
赤味のかかった陽気な色合いと、踊っているかのようなタイポグラフィが、軽快ながらも情熱的なグルーヴが収録されたこの作品を象徴してますね。写真の配置も絶妙。
こういう単色をのせたモノクロ写真とタイポグラフィの組み合わせのデザインパターンって、ジャズをあまり知らない人でも、なんとなくジャズっぽさを感じる人も多いんではないでしょうか。こういうスタイルが生まれたのは、予算の理由から、フルカラーを使えずモノクロでしか作れなかった事情からですが、今では王道のスタイルになりました。
泥臭い演奏に添えられるクールで大胆な数字の羅列
Us Three / Horace Parlan
こちらも大名盤。ホレス・パーランの「Us Three」は、アルバムタイトルが「Three」だから数字を全面に押し出してるのかどうかはわかりませんが、タイポグラフィのみの大胆な構成は今でもまったく色褪せない。数字のトリミングのセンス、ビジュアル的なリズムの取り方...、アートワークはこんなにクールなのに、荒々しくて泥臭くて超グルーヴィな演奏とあいまって強烈にしびれますね。
青い余白でつくる絶妙なバランス
Volume 1 / Sonny Rollins
続いて、ソニー・ロリンズのブルーノート第一作目。収録曲のFマイナーのブルース「Decision」と、たっぷりとブルーで余白をとった印象的なアートワークが、哀愁感あふれるこのアルバムの雰囲気を決定づけてるように思います。
今では当たり前かもしれないですが、英字の縦書きって、このアルバムが発表された1956年当時ではすごい大胆なレイアウトなんですが、再発版では横向きになってしまい、かなり残念なことになってしまいました...。間の取り方も独特で、左側に大きくとった余白が絶妙なバランスを生んでます。
こういう間の取り方って、一見簡単そうに見えて、実はめちゃめちゃバランスとるの難しいんですよね。
時代を超えるバランス感覚
In'n Out / Joe Henderson
お次は、ジョー・ヘンダーソンの「In'n Out」。
「in」と「out」が絡み合ったタイポグラフィは、テナーサックスのジョー・ヘンダーソンとこのアルバムにも参加しているトランペットのケニー・ドーハムの名コンビを表しているかのようです。リード・マイルスの作品でよくみられる、アーティストの写真を文字や図形の一部分に小さく収める手法と、タイポグラフィを全面に使ったデザイン。一般的に面の下部に余白をとり上部に重さを持ってくると、不安定なバランスになってしまいがちですが、そこは余白の達人リード・マイルス。バランス感覚がほんと素晴らしいですね。1964年発表の作品なんですが、今見ても全然時代を感じないですよね。たしか、ユニクロのTシャツにも採用されていたはずなので、見たことがある人も多いかも。
写真の使い方、タイポグラフィ、間の取り方、どれも勉強になります。
ギターワークを可視化した完璧なレイアウト
Midnight Blue / Kenny Burrell
最後は、言わずと知れたブルーノートの大名盤、ケニー・バレル「Midnight Blue」のアートワークを(上記で紹介してきたアルバムも全部大名盤ですが...)。個人的に自分が一番好きなアートワークで、ケニー・バレルの最高にエロティックなギターワークを完全に可視化してます。色の組み合わせも、絶妙のサイズでトリミング・配置されたアーティスト写真、完璧にレイアウトされたタイポグラフィも非の打ち所がないですね。
有名な話ですが、リード・マイルスはジャズにあまり興味がなかったみたいで、サンプルとしてブルーノートから貰ったレコードを売って、そのお金でクラシックのレコードを買っていたそうで、そういう意味では、リード・マイルスのジャズへの執着の無さが自由で独創的なデザインを生み出したとも言えるんじゃないでしょうかね。
時にはアートワークを片手に音楽と接してみては
というわけで、リード・マイルスのアートワークをほんと簡単に紹介させてもらいました。いやー、かっこいい。
最近は、音楽との接点がほとんどデータなので、アートワークとの関わり方も希薄気味ですが、自分が思春期の頃は、アートワークから音の世界を想像し、さらに妄想の世界が広がり、ドーパミンじゃんじゃん分泌。みたいな音の聴き方だったので、音楽におけるアートワークのポジションは自分にとってかなり重要でしたが、みなさんはどうでしょうか。
たまには、iTunesではなく、棚の奥に閉まってしまったCDやレコードを引っ張り出し、アートワークを手に取り音楽と接するのも、なかなかいいもんですよ。
ではまた。