2017年12月21日
大人になっても自由になれる?
「自由」の身体感覚を共有した徳島行き
モノサスにとって、11月は創立記念を祝う特別な月。
これまでは、お世話になったゲストを代々木のオフィスにお呼びして、企画から料理まで、DIY精神をフルにして周年記念パーティーを開催するのが恒例でした。
ですが、13周年の今年は、ちょっと違ったパーティーでした。
二泊三日で社内メンバーで徳島県へ向かったのです。
初日は、神山町にあるフードハブ・プロジェクトの食堂かま屋でパーティーを行い、翌日からは自然スクールTOEC(トエック)で過ごしました。
TOEC(Tokushima Outdoor activity Education Center)
田んぼと畑のなかで、子どもも大人もスタッフも共に育ちあう場所として1985年に誕生。それぞれの「今、やりたいこと」を子ども、スタッフで相談して1日をデザインする「フリーキャンプ」をはじめ、カリキュラムや時間割のないフリースクール(ようちえん・自由な学校)を運営。誰もが「のびやかに自分になってゆく」場づくりをサポートしている。
トエックでは身体をつかって思い切り遊んだり、好きなものを作ってみたり、音楽を演奏したり、何もせずのんびり過ごしたり…。
社員研修でもなく、社員旅行でもない、ちょっと不思議な時間を過ごしたのでした。
(くわしい様子はこちらの記事をご覧ください)
初日に代表の林から「褒めたり叱ったり、というのはある意味コントロールしている状態だから、これからの時間は他人を裁いたり、裁かれたりしない、安心して発話できる時間にしていきたい」という話もあったせいか、みんなどこか安心感を持って過ごしたように思います。
しかし、終わってみて思うのは、あの時間って、なんだったんだろう?ということ。
印象に残る時間だったからこそ、代々木、神山、タイ、大阪。それぞれの場所にもどって、日々の業務に追われると、ふとした疑問が浮かびます。
そこで代表の林に、どんな考えがあって今回の徳島行きを決めたのか、改めて聞いてみることにしました。
そもそも周年記念パーティーとは
ーー 今回の徳島行き。すごくよい時間でした。ですが、終わった直後から、これをどう普段の生活にもって帰ったらいいんだろう、という疑問もあって。どんな考えのもとで今回の徳島行きを決めたのか、改めて聞きたいです。
林
まずはパーティーのそもそものはじまりを言うと、創立記念パーティーは、モノサス黎明期を支えてもらったお客さんやメンバーみんなに感謝したいっていう想いではじまったんだよね。
10年前、代々木のオフィスに移転してきたと同時に社名も「モノサス」になった。創業からの本当に苦しかった3年間を乗り越えて、それまでお世話になった親会社から独立した、いわばインディペンデンスデイだったんです。
だから、はじまりはほんとうに単純に僕がみんなに感謝をしたくて。自分たちが作った料理で、ゲストと社内メンバー全員で食卓を囲む、という時間を作りたかったんだよね。
でも、昨年のパーティーが終わった段階で、代々木ではこれ以上発展させられる気がしなくなっちゃって。
ーー これ以上代々木では発展しそうにないというのは?
林
はじめは自分と料理が得意なメンバーが中心になって50人くらいのゲストとメンバー15人くらい、約70〜80人をもてなす、という手触りのあるものだったんだよね。あまり同じことはしたくないので、毎年エスカレートと言ってもいいくらいブラッシュアップをしながら進化させて(笑)。
一方で、会社のスペースもメンバーもゲストも増え、途中からはメンバーに企画もお願いしたりと、個人的な「おもてなし」から会社の「正式なイベント」という色合いが強くなってきた。
毎年、パーティーが終わった段階で翌年のことを考えはじめるんだけど、昨年のパーティーが終わった段階で、何か形を変えるときがきたのかな、同じ形ではもうできないかもしれない、という感覚が生まれたたんだよね。
ーー 同じ形ではもうできないかもしれない、という感覚ですか?
林
フードハブのメンバーに来てもらったり、つきあいのある料理人に来てもらって料理をしてもらったり…。一旦この場所ですることはいろいろとやりつくしちゃったのかなという感じになって。あと会社の様子も変わってきたんだよね。
ーー 変わってきたとは?
林
ここ5年くらいはパーティーの企画をしてくれるメンバーに、基本的にはお任せしてたんだけど、やはり大切なゲストが来るパーティーだし、200人以上が参加する大きなイベントなので、失敗させるわけにもいかないのでディレクションに入ってしまうことも多くて。でもそうやって入ることも違うのかなと思うようになった。
あと、パーティーをするとき、楽しんでいるメンバーもたくさんいるんだけど、なかにはそういうにぎやかな場から距離を置きたいと思っているメンバーもいる。以前は、いつかそういうメンバーもこっちにきてくれる、という思いがあって、その「距離を置きたい」ということを許容できてなかった。でも今年になって、そういうことが自分自身のなかで放っておけなくなって。そういうメンバーにとっても、喜ばしいパーティーにしたいと思うようになったんだよね。
そういった、代々木のオフィスで行う周年パーティーの次の姿が見えなくなったこともあって、変化の発展的昇華と言ったらいいのか…もっと別の軸を立てて新しい方向にもっていきたい、というのが今回の徳島行きにつながったと思ってるんだよね。
でも簡単に言ったら直感。もちろん確信のある直感だけど。
ものさす化の深化と自由
ーー にぎやかな場所からが距離を置きたいというメンバーのスタンスを許容できていなかったことが、今年になって「放っておけなくなった」というのは、何故なのでしょうか?
林
今年、2017年は、自分の言葉で言うと、ここ数年の「ものさす化」とも言うべき会社の変化が進んだ年だったんだよね。
大きいのはやはりフルフレックスを導入したこと。働く曜日も時間も基本的には自分で決める。つまり、働く時間の縛りがひとつ抜けたことで、時間の「自由」をみんなが使い始めてる。そのことも関係してくるのかな。
会社の制度って、まず「価値観」があって、それに基づいて制度設計されていくんだけど、その「価値観」が明確に会社のシステムに落とし込まれてきたのが今年だった。
ーー その価値観って具体的にどういうことでしょうか?
林
これまで自分がやってきたコンサルの仕事や、毎月書いている「Open Marketing」とか、形を変えながら伝えようとしていることで、モノサスをはじめる前からなんとなく思っているんだけど、一言で言うと「ビジネスを自由にしたい」ということ。
ビジネスって自分を蔑ろにして成り立っていくと思いがちなんだけど、そうではなくて、自由を感じるビジネスには、自然と人が集まってくると思うんだよね。そして、自分自身が自由でないと「自由なビジネス」になっていかない。だから、うちのメンバーが本当の意味で「自由」であることはすごく重要なんです。
その「自由」の一つとして制度が実現し、はじまったのがフルフレックスだった。
で、その自由を使うことで社内も変化がおこってきているように感じてる。
ーー どんな変化でしょうか?
林
たとえば朝の朝礼。「今月の感謝」のコーナーは(朝礼当番がその月に感謝したい人を一人選んでその理由を言う)朝礼をはじめた当初は、たまにしんみりするくらいいい時間だったんだけど、朝礼が形式化して、フルフレによって参加する人も減ってきてしまったよね。
ーー 確かに、以前に比べて参加者は減っていますね。参加メンバーも固定化されてきているかもしれません。
林
それで、朝礼を続けていくかどうかということは、役員の間でも考えていて。でも、「ただ終わらせる」ということはしたくないし、次のステップになるような、新たなものにしたくて。そんなときに、もしかしたら何かヒントがあるかも、と思ったのがトエックさんの※モーニングミーティングだったんだよね。そこでとりあえず、役員だけでも参加させてもらうことにしたんです。
※モーニングミーティング
トエックの「ようちえん」「自由な学校」で、子どもたちとスタッフが実施している毎朝のミーティング。全員が集まって「それぞれの身体、生活、心で困っていること」「みんなに話したいこと」「今日やりたいこと」、この3項目を話しあい、一日のプランをデザインする。自分の気持ちや他者の気持ちに耳を澄ませて、分かちあうための大切な時間です。
ーー トエックさんとは元々どういう経緯で繋がってきたのでしょう?
林
紹介してもらったのは、西村佳哲さんで、いまでもなんで紹介してもらったのか聞いてないや(笑)。モノサスとトエックの共通項のようなものをなんとなくみつけてくださったのかな。1年半くらい前からほぼ毎月お会いして、少しずつ関係を深めてきたんだけど、共感する部分も多くて。なによりトエックは「自由」を体感できる場所だった。10月に役員だけで行ったときに、トエックスタッフの方が、かま屋のパンを「みんなで食べに行きたい」と言ってくれて。それで自分も「モノサスのスタッフをここに連れてきてもいい?」と聞いたら、「大人70人のフリーキャンプがしたい!」ってトエックの他のスタッフの方も言ってくれて「いぇーい」みたいな。ちょっとノリだな(笑)。
でもそれだけじゃなくて、頭で理解するのではない「自由」を、ここで体感してもらいたいとうのが一番にあった。たとえば、きちんと作られた本当に美味しいものって、食べ終わったあとに満足感があるし、身体が軽くなる感じがあると思うんだけど、それと同じように、口でいくら説明しても伝わらないものは、いっそ体感してもらおう、というのがみんなで一緒に行った大きな理由になるね。身体感覚で「自由」を共有したかったんだと思う。
「自由」を身体感覚で共有すること
ーー 確かに、のびのびと思い思いに過ごしたり、自由に話してもいいという感覚は、それぞれの人で感じ方は違っても、何かが残っている気がします。でも、これから社内で何かそういったことを継続的にしていこうという考えがあるのでしょうか?
林
特に今のところは考えてないかな…。
でも、人って、一緒に見た風景とか、一緒に何かをした経験がすごく大事なように、「自由」な感覚を共有したことというのは、今後必ず生きてくると思う。
ーー なるほど。終わってみて、何かみんなで自由な感覚を共有できているという感触はありますか?
林
たとえば先月からはじまった、フルフレックス改善のためのワーキンググループのときとか、みんなも「裁かれない」という共通の認識があるからか、結構言いたいことを言ってるし、言いながらもほかの人の自由を壊すことは避けようとしてる感じがあって、すごく楽しい時間になってる。
こんな感じで、すぐにとはいかなくても、「自由」の感覚をベースにした会話ができるのって、やはり身体感覚で共有できたからこそかな、と思ってて。
トエックは「のびやかに自分になっていく」がテーマで、それは自分自身になっていくということなんだよね。それって、これからの会社にもものすごく重要なことだと思う。子ども時代って「自由な自分」を育むすごく大切な時期にもかかわらず、基本的には、自分で選ぶことができないよね。
子ども時代に自分の「自由」を育めなかったから大人になってもそのまま、というのは辛いなと思って。社会に出てからも「自由」に近づいていく環境が必要だと思うし、モノサスがメンバーにとってそういう役割のひとつを担えたらいいなと思う。そして、関わる会社さんも「自由」になっていくお手伝いができたらいいなと思ってるんです。
社会に出てからも「自由」に近づいていく。
そしてモノサスがそんな役割のひとつの場になれたらということ…。
私にとっては新鮮な考えでした。
そして、今回の徳島での時間。何かもっとわかりやすい形で取り入れて(たとえばトエックの方法をモノサスでそのまま取り入れたり)社内の変化を目指すのかな、と思っていましたが、なにより大事なのはトエックを訪れて「自由の身体感覚を共有する」ということだったのでした。
メンバーが徳島に行くことで持ってかえった「自由」の種ともいえる身体感覚。今後どう育っていくのか。自分自身も含めて楽しみになってきました。また、「自由の種」が育っていく様子をお伝えできたらと思います。