2018年03月08日
自然スクールトエックから学ぶ「自由」になれる場。- 前編 -
話し手:伊勢達郎さん、林隆宏 / 聞き手:西村佳哲さん
今日のめぐるモノサシの話し手は、NPO法人自然スクールトエック(TOEC)※1 代表の伊勢達郎さんと、モノサス代表の林。聞き手は西村佳哲さんです。
伊勢さんと林の関係は、西村さんが林へ、トエックのWebサイト制作のご相談を持ちかけてくださったことがはじまりです。
トエックの在り方、人との関わり方にどんどん魅了されていった林。その想いの強さは、昨年11月にモノサスメンバーほぼ全員を徳島県にあるトエックに連れて行ってしまったほど。
それから1ヶ月後には、足かけ2年でリニューアルしたトエックのWebサイトも公開しました。
トエックとモノサス、伊勢さんと林、この二年の間に一体どんなことが起き、どんな変化があったのか。
双方をつなぎ、今もあたたかく見守る西村さんに、ふたりへインタビューしていただいた様子を、前後編に分けてお伝えします。
(インタビュー構成:中庭佳子)
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話し手:伊勢達郎さんプロフィール
TOEC代表。徳島県阿南市出身。学生時代よりカウンセリング・キャンプを学び、(財)青少年野外活動総合センター指導部を経て、1985年「自然スクールTOEC」を設立。個人やグループのカウンセリング及び、沖縄無人島キャンプなど、たくさんのフリーキャンプ(自由なキャンプ)を展開。90年「TOEC幼児フリースクール(ようちえん)」、98年「TOEC自由な学校(小学校)」を設立。社会に新しい学校のスタイルを発信・提案している。大学や看護学校の非常勤講師なども務める。
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話し手:林隆宏プロフィール
モノサス代表。経営コンサルティング会社、制作プロダクションを経て2005年に会社設立。東京、徳島、バンコクの3拠点をぐるぐるまわりながら、モノサスという会社を通して、次の社会と会社の在りかたを勝手に模索中。
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聞き手:西村佳哲さんプロフィール
建築分野を経て、"つくる・書く・教える"の三種類のお仕事を主軸に活動。ここ2年ほど、町と立ち上げた「神山つなぐ公社」の仕事にドップリ。
トエックとモノサスのなれそめ。
西村さん(以下敬称略)
じゃあなれそめからいきますか。
ちょっと僕が最初話します。伊勢さんとの出会いってどれくらいなんだろう。2002年の「全国教育系ワークショップフォーラム」※2 ですかね。
伊勢さん(以下敬称略)
そのときインタビューしてくれたよね?あれが『かかわり方の学び方』※3 という本に。
※3 西村佳哲 著『かかわり方の学び方』筑摩書房 2012年 Amazon
西村
そうです。僕はこの15年、伊勢さんからいろんなことを学んで来たけれど、一緒に時間を過ごして来た年上の友達、みたいな気持ちもあります。
それで伊勢さんたちがこのトエックをやってらっしゃって、僕もすごい好きで。
だけどとにかくWebサイトが大変で。ふなちゃん(トエックスタッフ・渡邊有紀さん)が、アプリケーション買ってきて組み立てていったけど、ブラウザによっては同じように表示されないとか、クリックできないとか、だんだん解体しながら飛んでいく鳥みたいに崩れていって(笑)。
そこはもう予算をとってWebサイトを作り替えましょうよと、2年位前に気合いをいれて提案したんです。というのも僕も躊躇があって。Webサイトをリニューアルすると、必ず知り合いの自然学校間で「あれいくらかかったの?」と評判になる。その額が300万、あるいは100万でも「うわ、高!」と言われそうな界隈です。
でも、ちゃんとやろうと思ったら費用はかかるわけで、どうしたもんかなと。
ちょうどその頃、モノサスさんが、神山町のWebサイトを作ったりと、より本格的に神山に関わりはじめてきて。
林
そうですね。
西村
林さんのこともここ数年の関わりあいの中にいて。
僕は仕事をする時に、自分のところで働くスタッフも、誰かを引き会わせる時も、スペックじゃなくて相性なんですよね。この人たち、連日晩ご飯食べても気詰まりがない、というような(笑)。
話すことが特になくって、沈黙の時間とかあっても、大丈夫そうな人。でまあ、林さんとはそうだったので、つないでみたという。そんなところです。
林
そんな軽い感じだったんですか?
西村
軽い感じです(笑)。
僕、好きな人にはトエックを紹介したいと思うので、林さんとも、単純に一緒に遊びに行ってみたいなと。
あと、制作費についてもなにか相談できるかも?っていう、そんな遠慮がちな意図でした。僕の意図を超えた展開は、お二人の間で起きたことだと思っています。
そのあといろんなことが始まってきますが、今日は実際どんなことが起こっていったかということと、それぞれがお互いに思っていることを語りあってもらえたらと思います。
はじめてのトエックの印象
「お、この子たち、立ってるぞ」
西村
林さんは最初トエックに来たとき、どんな印象でしたか?
林
初めて来た時に、トエックにいる男の子と女の子とちょっと関わったんです。男の子に絡まれて、木の棒でバンバンたたかれたんですけど(笑)。
西村
それが最初の関わり(笑)。
林
あと女の子何人かとしゃべったときに、それが気持ちよかったんです。なんかこう…ひとりの人としているなと。子どもと関わると依存してくるというか、「わたし遊びたいから、君を利用したい」みたいにやってくるんです。
伊勢
遊んでちょうだいって感じだよね。
林
そうですね。だけどトエックの子どもたちは、お、立ってるぞ、という感じがすごくしたんです。
西村
そうすると気持ちがいい。
林
すごく気持ちがよかったです。僕は人に依存されるのもするのもあんまり好きじゃなくて。子どもって捉えて離さないというか、それに引きずりこまれる感じがするときがあって、すごく嫌なんですが、トエックの子たちはそうじゃないな、と思って。
西村
なるほど
林
どうしてそうなるんですか?と根掘り葉掘り、達郎さんに聞いたんだけど、スルスルかわされて…。あとから聞くと、あの日ひどい二日酔いで答えるのが面倒臭かったと(笑)。
西村
なんとまぁ(笑)。
伊勢
何年かに一回レベルの、相当ひどいのだったんだよね。でも濃い〜〜質問をしてもらったのは覚えてる。まぁ、林さんとは続くな、という予感はしたから、今、そんなにいい応答しておかなくても、なんとかなるなと。
でも「子どもが立っている」は嬉しい言葉よね。逆の人もいるんですよ。
西村
逆の人?
伊勢
子どもの依存心を呼び起こすような人。自分が必要とされると嬉しいからつい遊んじゃう。道具になっちゃう。これは一般の教育界でもよく起きることなんです。しかも過剰に来られると嫌だから突き放したりするのね。それで子どもはどう振舞っていいか分からなくなる。
ちゃんとその子が「立ってる」のをみてくれる人は、そういうのを子どもに求めないし応えないから、いい距離感というか。双方にいい感じで居られたんだろうなと思って。
西村
で、林さんの質問は、なぜ子どもたちが立てているんでしょう、みたいな質問だったの?
林
もう深く覚えてはないんですけど、そうですね。そんな質問をした記憶があります。
その時って、Webサイトを作るかも、という話もあったので、この方達はどんなことをしてるんだろうとか、そういうインタビューでもあったと思うんですよ。
伊勢
なんで授業はないの?スタッフは何をしてるの?みたいなことを聞かれたんですけど。僕、確かに面倒臭そうに、「プロセスを切りたくないんですよね」みたいなことを答えて。これすごい説明がいる言葉なんです。で、そこから更に聞かれたんだけど、まぁいろいろですね、みたいな感じで。
スタッフは、これまたいい加減な答えで、「邪魔しないことは心がけてますね」くらいの、極めてざっくりしたことを言って。当然「その心は?」みたいなことを聞かれたと思うんだけど、そこをグダグダっと。
西村
えっと…。今日は大丈夫ですか?
伊勢
フフフ…
“途中” にこそ学びがあるし、おもしろい。
西村
「プロセスを切りたくない」、とは?
伊勢
効率的にやるというのは、分けていくこと、デザインしていくこと、構成していくことだと思うんですよ。野球の練習だろうが、学業だろうが、ありとあらゆることは分業していくことで、効率化して均一にして大量にこなそうとするんだけど、僕らはその逆をやりたいわけです。
西村
逆をやりたい?
伊勢
逆をやりたい。そもそも体験学習というのは逆をやりたかったはずなんだけど、体験学習こそタチが悪い。こうしたらこうなるでしょ、みたいな手順や構成書が用意されていたり、下手すりゃ料理番組みたいに、本当は5分間煮るんだけど、できあがったものが用意されている、みたいなこともあって。
ワークショップだろうが体験学習だろうが、プロセスよりも、ちゃんと進めることにどう貢献するかが指導力や教育効果であると言われていて。ファシリテート力と言ってもいいんだけど。
でも、成果物よりも “途中” にこそ学びがあると、僕は思う。人がどう反応しあって、どんなことをやって、というプロセスの中で、そこにいる人たちの意図や思惑を超えていくものなので、そっちの方がワクワクするし、おもしろい。この差は大きいと思う。
ハプニングが起きたとき、僕らはワクワクするけど、構成的なことしかやってない人は、そこで固まってしまって、元の流れに戻そうと右往左往したり、それがまた指導力って言われたりするわけだ。かなり似たようなことをしているけど違うと思うのよね。
そうは言っても、構成であれ非構成であれどこかのフレームの中のこと。だけど、極力フレームはゆるくあった方が、おもしろいことがたくさん起きるんだよね。あらかじめつくられたデザインを超えて個々が生きてきて、調和的という。その場はものすごく美しかったり、エネルギッシュだったりってね。
なので、できるだけプロセスを切らないほうがいい。
何気ないこと、たとえば「あと1時間くらいでご飯できるよ」とか「どこ行くの?」っていうのも、プロセスを切るじゃないですか。そういうどうでもいいことは、いっぱい言ってしまうんですよね。
まぁ、あまり教条的になっているわけではないんだけど、切るものが少ないほどプロセスは面白いところへ運んでいってくれる。だから全員集合を極力少なくしたり、ご飯もその子の体のチャンネルに合わせてそれぞれの流れでとるようにしている。
そっちの方が面白いことがあるし、教育力があると僕らは思っていて。自由で学ぶというより、自由のプロセスの中に教育力があるんです。こっちが何かするんじゃなくて、プロセスがお仕事をするというのが、かなり軸になっていると思います。
ただこのことは、生産力向上とは相入れないと思うんですよ。産業社会や企業体としては悩ましい所ですよね、この着地点は。
西村
期待されるゴールのために一生懸命やるとか、部品化して効率的にやるのでなく、起こることが起きて、なるものになっていく。そんなプロセスを知っているか知らないかで、だいぶ自由度が高くなるというか。
伊勢
僕がすごい尊敬している人の言葉か忘れたんだけど、「なっていく自然」という言葉があって。例えば人工物でもね、壊れて転がっていくと、ちょうど一番強いところで止まるんだって。あの醜いテトラポッドですらね、60〜70年も経つと、結構いけてるんですよ。
西村
悪くない。まわりと馴染んでいる(笑)。
伊勢
プロセスを切らずに進むと、結果的に強くなったり美しくなったりと、全体がある程度いい所へ運ばれて行くんだよね。
「いそがない」Webサイト制作。
西村
そんな最初の出会いがあって、トエックに関心を寄せながらも、サイトリニューアルの仕事を受けるまでのプロセスを聞かせてください。
林
たしか最初の出会いの1〜2ヶ月後にもう一度会っているんですよ。
そこで、達郎さん(伊勢達郎さん)に、トエックの経営状況みたいのを根掘り葉掘り聞いたんです。生徒が何人いて、園児が何人いて、どんなことに困ってますか、そんな話を聞いて。その場で「給食代をもらわなきゃだめですよ」みたいなことを言いました。
西村
いきなり経営(笑)。
林
その時、実は僕の中で大きい話があって。
達郎さんが、スタッフのぷーさん(仲本桂子さん)や すがさん(利根清子さん)に、子ども達だけじゃなくて、教育者を教えるようなこともしてもらいたいなと、ボソッとおっしゃってたんです。
その話を聞いた時に、達郎さんの中で、トエックでやっていることをここで留めておきたくないんだ、という気持ちがあると強烈に感じたんです。僕が勝手に感じたんだと思うんですけど。でもこの学校そのものを大きくするつもりはない、みたいなこともなんとなく受け取っていて。1年半くらい自分の中で寝かせてました。
西村
伊勢さん、そこはどうですか?
伊勢
イエスともノーとも言えないところがあるね。けど、閉じ込めたい気持ちはさらさらないし、そういうのが僕の中で浮上してきているのは確かやね。まとめることで、社会とか子どもたちとか、いろんなところで貢献できるなっていうのは、大きくはなってきてる…。
西村
トエックに教わりたいとか、学びに来たいっていう声は、ずっとあるでしょ?
伊勢
あるねぇ。特にここ数年、すごくあるねぇ。
林
あの時、幼稚園の定員に少し空きがあってそれは困るんだみたいな話をしてたんですけど、僕の中ではWebサイトの費用をどっから捻出するんだ?というのが常にあって。何かできることないかな?っていつも探るんです。
あと、有料メルマガとかやったらどうですか?という話をしたら、初回はあんなにテンションが低かった達郎さんのテンションが、一瞬ものすごく上がったんですよ。すごい食いついてきて。
伊勢
今もある!
西村
(笑)
林
まぁそういうのも考えてたんですけど、いったん普通にWebサイト作ろう、という話に落ち着いて。だけど、あの時燃え上がった達郎さんのモチベーションをどうしよう、なんか俺、たきつけちゃったしな、と思ってて(笑)。
伊勢
覚えてる。今も上がってしまうけど。
林
で、そのあとは、1、2ヶ月に1回とかの打ち合わせを1年近く交わしてたと思います。
西村
制作の過程で気をつけたことは?
林
いそがない、ですかね(笑)
西村
いそがない?制作を?
林
僕があんまりどっぷりと案件に関われなくなってきたというのもあるんですけど。あとは、予算が無いなら無いで、スタッフの糧にしようというのがありました。デザインを西村さんにみてもらおうとか、社内にトエックのことを学んでもらうとか。プロセスを長く取った方が「紆余曲折できる」というのが、ひとつあります。
もうひとつは、いそがない方が、良いものができることが最近多くて。期限が切られちゃうと、納めにいくプロセスが走って、これ誰が決めるんですか?ってなるんです。だけど時間をかけると、誰が決めたわけでもないけどコレだよね?という状態になることが多い。
トエックさんとは、リニューアルした後も違和感なく向きあってもらえるようなサイトを作りたかったので、何度もやりとりしながら進めました。例えば、デザイン案を出して、達郎さんはいいって言ってるのに、僕らの方で勝手に作り直すとか、2、3回あって(笑)。
伊勢
1回目のミーティングは衝撃的でしたね。おもしろかった!ダイナミックで。もう、うちのスタッフが総力あげても出ないような素晴らしいデザインが3つ出てきて、どれもいいんですよ。
ライトなのと、中庸なのと、アウトドア志向が強いガツンとしたのと。
どれもわかりやすくて洗練されて、ちゃんと立ってて。素人の僕が見ても素晴らしいと。選べって言われても難しいな、困ったなぁと思って。これはちょっとアウトドア志向が強いし、これかなぁ、とかすったもんだやってたら、最終的に3つともボツになったの。
西村
みずから(笑)。
伊勢
はぁ?!みたいな感じ。こんないい仕事させておいて、ボツの理由が「わかりやすいのはよくない」と。なんというコンセプトだと思ってね。目からうろこ…。僕たちは、散々自爆するようなビラを作りまくって、1ミリでもわかりやすくすることにやっと手がかかったかな?とか言ってるのに、そこ?みたいなね。あれはおもしろかった〜。
西村
林さんが言ってた、“ゆっくりいそがない”っていうプロセスは、どんな風に感じてますか?
伊勢
もうそれ自体がとっても面白いし、仮にホームページが完成しなくても面白いくらい。
西村
そのころ、モノサスはどんな会社に見えてましたか?
伊勢
えっと、まず外側とか洗練された感じ。地方の神山にオフィスがあっても綺麗だし、いる人もシュッとしてるし。Webデザインとかコンサルタントとかいう仕事は、僕らからもっとも遠い世界なんですね。1回だけ博報堂に行ったことがあるんだけど、こんな人達うちの周りにはひとりもいないって感じで。
それと同類のものを感じていたんだけど、しゃべり始めたら、対応というか空気が、あら近い(笑)。ガツガツしてないというか、あんまりビシビシ切り替えないとか。ええ感じやなと。
西村
最大効率で、最短距離で、賢くいこうっていう、そういう感じはなさそうだなと。
伊勢
そうそう。そこじゃない価値をちゃんと意識してやってるんだなと。
西村
そんなことを感じつつ、仕事を続けていく中で山場だったところってありますか?
林
ないですね。
西村
ないですか。ゆっくり進んでいく。
林
ゆっくり進んでいく。これでいっか、みたいな。
「本当はどう在りたい?」を丸ごと聞く。
西村
それでまぁ、去年の12月に公開してみて、まわりはどんな反応でした?
伊勢
うちに来てる人に関して言うと、すごく面白いとか、ゆっくり読むわとか、食いつく人はすごい食いつく。「斬新やね〜」みたいなことも何人かに言われた。
ふなさん(以下敬称略)
育児の隙間に読み溜めているとか、よく聞きますね。
あと、こんな方法があったのか、とか。
西村
こんな方法って?
ふな
ホームページって最初に写真や映像がバーンとでてきて、その印象で活動に興味を持ってもらう、みたいな見せ方が多くて。今回トエックのホームページづくりもそういうもんかな?と思ってたんです。
けど、トエックって画像だけでは伝えきれないものがあって。せっかく足を運んでもらっても、建物やひと、やっていることを表面的に見て”ギョッ”とする人もいて。なんか違うなぁとも思っていました。
林さんに「ここで流れている中身みたいなものをちゃんとわかってもらえるサイトにしないと」と言っていただいて「読ませるサイト」になったのは、とてもしっくりきていて、周りからも「いきなり文字!ってびっくりだけど、読むほどにいいねぇ」とか、嬉しい反応が多いんです。
あと、達郎さんが書き溜めてきたものの厚みがあるのがいいね、といわれたり。ちゃんと歴史を感じながら読めるのがいいって言ってもらえたり。だから、狙い通りだなと。
西村
狙いでいうと、フリーキャンプとかワークショップの研修とか、ぷーさんやすがさんが教える機会を育てていきたいっていう、そっち側の反応はこれからだと思うけど、いま何か感じているものがあれば。
ふな
公開されたばかりなので、まだ手ごたえは少ないですね。ただ、ホームページが完成した今、モノサスさんとの毎月のミーティングが少なくなるのがさみしくて(笑)。つくる過程で林さんの言葉から刺激を受けて、運営やプログラムに反映したこともあります。すがさんやぷーさんをもっと前に出すみたいなことも、やっぱりそうかって。
西村
林さんが、Webをただ作るんじゃなくて、業務改善、あるいは組織のあり方とか経営とか、そういうとこにも関わっていくのは割といつものことなんですか?
林
そうですね。大企業なんかだとできない時もありますけど、基本は関わるようにしてます。
西村
その心は?
林
自分の会社のマーケティングを自分でやるようになったんですよね。それがすごく大きくて。
マーケティングにはメソッドがあって、これをやっておけばある程度反響が読める、みたいなお手軽なものもあるんですよ。心理学的にこうやれば人って動くよね、とか、世の中でこういうのがヒットしているから、それに乗せるとこうなる、みたいなものはあるんです。
でも、自分で自社のマーケティングをしようと思ったときに、何も書けなくなっちゃって。こんなこと書きたくないと。キャッチコピーひとつ取っても、こう書けば問い合わせはいっぱいくるってわかってるんだけど、どうしても書けなかったんです。
西村
自分のことになると。
林
なると(笑)。で、ものすごい時間をかけて苦しみながら書いたんですけど、逆に、自分は今までお客さんに、そんなことをさせてたんだなと。たぶん本人としては言いたくないことを、無理やり全世界に向けて発信させてしまってたんだと思って。その体験はすごく大きかったですね。
そこから、こう言えばあなたの会社の売り上げはあがるかもしれないけど、それはきっと言いたくないんですよね?みたいなことを聞き始めました。
林
あとWebじゃないんですけど、本当に自分が思ってる気持ちとか、お客さんのこと大事にしたい、みたいなことを、自社のニュースレターで発信したことがあって。それを送った時に、「あなたみたいな会社と仕事がしたい」って、わざわざ返事をくれた人が現れたんです。そのあと順調に売り上げが走り出したということがあって。
それで、これはひょっとすると、その会社とか団体が、本当はどう在りたいんだとか、世の中とこういう風につきあっていきたいんだ、みたいなことを表現した方が、売り上げも立つんじゃないかという仮説ができたんです。そうすると「Webをどう作りますか?」という取材だけじゃ成立しなくなっちゃって。
「どうしてこういうビジネスをされてるんですか?」とか、「本当はどんなことを伝えたいんですか?」とか、「例えばこういうのどうですか?」とか、見せた時の反応とかをみながら、割と全人格的につきあうみたいになっていったんです。
<後編に続く>