2018年03月19日
建物から考える「美しい」と「良い」の違い
こんにちは。プロデュース部の藤原です。
現在はモノサスの一員として、ある IT 企業のクライアント先に常駐していますが、以前は注文住宅会社で、自社製品の PR を行っていました。
製品の特徴を活かして、どんなお家にするか。
施主と建築チームが構想から四苦八苦し完成させた「ハコ」に人が住み「家」になるさまを見るにつれ、建物の良し悪しがハコの完成度だけでなく、利用する人にも委ねられていることに面白みを感じるようになりました。
今回は「良い建物とは何か」考えてみたいと思います。
良い建物とは
私なりの「良い建物」の条件の 1 つとして、 建物がその地域の暮らしに溶け込んでいるか、“人” と “建物” の性格がマッチしているか、ということがあります。
例えば、石川県の「金沢海みらい図書館」。
シーラカンスK&H(工藤 和美氏と堀場 弘氏の建築ユニット)設計の公共図書館で、低層住宅街に突如、壁一面に穴ぼこの開いた、白い大きな四角い姿を現します。
姿は奇抜ですが威圧感はなく、特に中の心地良さは特有のもの。ほの明るく広く、海のなかのような大空間と、自分の時間に静かに集中する利用者の空気がマッチした、安心感の満ちた場でした。利用者には子供も多いことから、この図書館は地元の人に好かれ、よく活用されているのでしょう。穏やかな良い建物でした。
最近では、今年の年始に台湾の「台北市立図書館北投分館」を訪れましたので、こちらもご紹介したいと思います。
世界も注目!「台北市立図書館北投分館」
「台北市立図書館北投分館」は、地上 3 階建ての木造建築。緩やかに傾斜した屋根、広いバルコニー、大きな窓が印象的です。「世界で最も美しい図書館 上位 20」にランクインするほど世界から注目されている図書館ですが、雑木林の緑とまだ新しくシャープな木造建築のコントラストが、自然素材同士で調和しながらもお互いを際立たせています。
アクセスは、最寄りの新北投駅から歩いて 10 分ほど、台湾随一の温泉街「北投温泉」の公園内にあります。
この図書館は、エコロジー建築としても注目されています。
独特な形状がエコ建築として理にかなっているのです。
広い屋根には太陽光パネルをのせて電力を館内でまわし、傾斜で集められた雨水はリサイクルされトイレの排水や植物に使われています。大きな庇兼バルコニーは、台湾の強い日差しを遮り館内と距離をつくることで、外気の影響を緩和させる目的がある様子。
大きな窓から見える緑と肌にあたる風で、自然を感じられます。
私が訪れた 1 月は冷暖房のいらない時期でしたが、おそらく真夏に行っても気持ちのよい自然の空気が取り込まれているのだろうなと予測できました。
館内は、大きな吹き抜けを囲むかたち、1 階は児童書、2-3 階は一般書のフロアの 3 層でなっています。
本棚は壁際以外はすべて低めに設定されていて、大人なら目線が本棚の上に。
このため空間が広く感じられ、決して広大なフロアではありませんが窮屈感・閉鎖感がまったくありませんでした。館内のライトがほっとできる暖色系なのも好印象です。
有名な建築だけあり、利用者は観光客も多いものの、それ以上に地元の人が多いような気がしました。どこの席も満席で、子供から大人まで利用していました。
冒頭で紹介した、金沢の「金沢海みらい図書館」とは趣の異なる図書館ですが、建築として心地よい空間づくりに気を遣われていて、利用者がその空間をあますことなく堪能・活用していることに、ここもまた良い建物と思える場所でした。
あえて言うならば、「エコ建築」として、この建物が世界に発信できることはもっとあるかなと感じました。なぜ今こういう建物が必要なのか。その役割をどう実現させているのか。これらをしっかりと伝えることができれば、訪れる人が多い分、社会へのエコ意識を高めるきっかけになり得ると思います。
「良い建物」とは、「ハコ」だけでは成立しません。
建物と人、それぞれが調和したとき、その建物は「良い建物」といえるのだと思います。
きれいな建物でも、人と建物がマッチしていなかったり、建物に期待されていた役割が果たせていなければ、その建物は「美しい建築」であっても「良い建物」ではないのではないでしょうか。
改めて考えると、物事は、完成したあとが本当に面白い。と言えるかもしれません。
台湾、小話。
台北市立図書館北投分館、いかがでしたでしょうか?
ぜひ台湾旅行の際は、立ち寄ってみてください!
他にも、台湾には面白いものががたくさん。気になるスポットやおすすめグルメをご紹介したいと思います。
1. 工場をリノベーションした「松山文創園区」
日本統治時代のたばこ工場をリノベーションしたこの施設。元工場だけあって敷地は広大です。
中には、現代作家たちの作品の展示や販売スペース、カフェ、本屋、アートギャラリー、会員制図書館などがあり、現代のカルチャーが集まる場所となっていました。
歴史ある旧い建物が、新たに現地のカルチャーを共有する場所として生まれ変わる。台湾を舞台にした新旧が織りなすギャップが松山文創区の面白さであり、多くの若いひとたちに親しまれているのだと思いました。
(雨の遅い時間に訪れたので、次は日中に行きたいです。)
2. 台湾グルメ
グルメは旅の楽しみ!おすすめグルメをご紹介します。
青菜の炒め
台湾で「青菜」というと、空芯菜のことを指すようです。どこのお店にもあります。シャキシャキした食感が美味しいです。ニンニクが効いていますが基本塩薄味。薄味ながらもお店によって味が違うので「私はこのお店が好き」などと楽しむのも面白いですよ。
福州元祖胡椒餅
パワースポットとして名高い「龍山寺(ロンシャンスー)」近く、「ここ本当に入って大丈夫...?」と思われる路地裏を進んだところに「福州元祖胡椒餅」はあります。
朝、龍山寺にお参りして小腹が空いたところで食べるのがおすすめ。スパイシーなおやき、と言えば想像がつくかもしれません。胡椒の匂いとちょうど良いボリュームで、ちょっと幸せになれるおやつとしてどうぞ。
無老鍋
デザイン部の上森 から「まじうまい」と薦められた無老鍋。前評判通り、まじうまい鍋でした。薬膳やスパイスがふんだんに入ったスープに、野菜、お肉、と好きな具材を入れていきます。ヘルシーで美味しくお腹いっぱい食べられる。独特な薬膳が日本にはない味です。
本場台湾で味わってください!
ご飯と角煮のどんぶり
屋台グルメのひとつ。お店もメニュー名も忘れてしまいましたが、濃い味付けの角煮と煮卵、そのお汁がたっぷりかかったご飯、このザ・B級グルメ感がたまりません。
台湾の屋台グルメは、外せませんよ!
今回のお話はここまで。
建物を見るときは、実物の完成度に加え、人との関係や風土にも着目して「良い」と感じるかどうか、考えてみると面白いと思います。読んでくださったみなさんの「ものの見方」に、新たな視点が加わるきっかけになれば嬉しいです。
私自身これからも、日本だけではなく世界のいろいろな場所を訪れて、自分なりの感覚を育てていければと思います。