2018年03月27日
新年度を前に、ちょっとひと息。
〜モノサスの「読書会」#22〜
いよいよ3月もラストスパート!まもなく新年度がはじまりますね。
今回の読書会は、ちょっぴりあわただしい年度末の空気のなか「ちょっとひと息」というテーマで、ランチタイムに開催しました。
ぽかぽか陽気にさそわれて、お昼どきの会議室に集まったメンバーは3名。リラックスした雰囲気のなか、ひとり5分間で本を紹介します。
今回紹介する本
- 『おかしな家族』ジャン・コクトー(著)講談社
- 『お化けの愛し方: なぜ人は怪談が好きなのか』荒俣 宏(著)ポプラ社
- 『こねてのばして』ヨシタケ シンスケ(著)ブロンズ新社
それでは、読書会スタート!
遠慮はいらない!自由な感性で楽しもう
ジャン・コクトー(著)『おかしな家族』
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紹介者:羽賀 敬祐
ジャン・コクトーが手がけた絵本『おかしな家族』を持ってきました。普段ほとんど絵本は読まないんですけど、装丁が素敵だったのと、コクトー自身に興味があって、数年前に購入しました。
コクトーは19世紀のフランスで活躍した芸術家で、詩人、小説家、映画監督など、マルチな活動をした人です。とにかくいろんなジャンルで作品を残してるんですけど、絵本だけは生涯で一冊しか作らなかったんですね。それがこの絵本です。
冒頭に「幼い読者諸君へ」というメッセージがあるんですが、これがすごく良くて。「もし、この本の色が気に入らないならば、君の色鉛筆で好きなように塗りたまえ。ー遠慮はいらない。」という言葉があるんですが、感性で自由にしてくれ!っていう感じがいいですよね。日本語/フランス語併記のレイアウトや、コクトーが描いた挿絵も可愛いんです。
内容は、太陽と月の夫婦のあいだに生まれた子どもを、犬に教育してもらうという話。すると、首輪をはめて散歩をさせられたりして「これはイカン!」と、最終的に子どもの世話を星にまかせて一件落着という。なんというか…発想が独特で、こういう自由さ忘れていたなぁと(笑)。子どもの心を失わないように大事にしたいなと思える絵本です。
- 乾
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ジャン・コクトー、初めて知りました。
- 羽賀
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本当に多才な人で、ピカソとも親交があったみたいです。コクトーのデッサンを絶賛していたとか。
- 村上
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太陽と月の夫婦は、自分たちで子育てしないんですね。
- 羽賀
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ね、なんか忙しいみたいです(笑)。
知の巨人がいざなう「お化け」の世界
荒俣 宏(著)『お化けの愛し方: なぜ人は怪談が好きなのか』
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紹介者:村上 伊左夫
本屋で目に留まってタイトル買いした、荒俣 宏さんの『お化けの愛し方』です。内容は、お化けとの付き合い方というか…ホラー的にとらえるだけじゃなくて、お化けと恋愛したりコミュニティをつくったり、そういうことも可能だよ、みたいなことが書かれてて。「一体どういうこと?」ってなるんですけど(笑)。
日本の怪談の元は、中国の志怪(しかい)小説だとか、日本の有名な怪談「牡丹燈籠(ぼたんどうろう)」の元ネタ「剪燈新話(せんとうしんわ)」との比較とか、いろいろな考察があって面白いです。
中国では、お化けを封じるためのお札に「急急如律令(法律に従え)」という言葉があったそうで、お化けに対して法律を守れと言ってる。それが日本だとお坊さんの説法によって成仏する、とかに話が置き換えられてて、興味深いなと思います。
あと、会社近くの平田神社に祀られている、平田篤胤(ひらたあつたね)のことも載っててビックリしました。死=穢れ、というイメージを払拭するような教えを説いていたようですね。
- 羽賀
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著者はどんな方ですか?
- 村上
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博物学者で小説も書いてて、神秘学や風水とか妖怪にも詳しい。大学でも教えてるのかな。博覧強記な人ですね。
- 乾
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奇妙な感じがする本が好きなんですね。
- 村上
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小さい頃からファンタジーは好きかも。ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』やジャンプで連載されてた『アウターゾーン』とか。読むと気分転換できるのでいいですよ。
こねまくって、のばしまくる。その奥深さ。
ヨシタケ シンスケ(著)『こねてのばして』
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紹介者:乾 椰湖
以前、青山ブックセンターで原画展を見て、気になってた絵本を買いました。
表紙を見るとパン屋さんっぽいんだけど、何屋でもなくて、名前もでてきません。
朝起きて「今日もはじめます」と、ただただ、こねつづける。こねてる物体が何なのかも、最後までわからないまま。ひたすらこねる。こねてこねて、ちょっと放っとくと、ふくらんで破裂して、それを集めてまたこねて。こねてこねてこねて…そして終わるという(笑)。
『こねてのばして』というタイトルの通り、こねてのばす以外、なんの説明もないんですけど、見てるうちに、どんどん想像がふくらむんです。質感は?重さは?ネバネバしてないんだろうな、サラッとして柔らかくてしっとりしてるんだろうなとか、ぼーっと眺めてるだけで楽しくなります。
おそらく毎日こねてるんだろうけど、こんなに楽しそうにやってるのを見ると、私も毎日同じことでも楽しくやりたいな、と思えるというか。「ちょっとひと息」というテーマにピッタリだと思って持ってきました。
あと、ヨシタケさんの絵がホントに可愛くて。この帽子のフチにある点線とか、給食係の帽子のゴムみたい。あー可愛い。お店でも目立つところにあったので、人気なんだろうなと思います。
- 村上
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こねてる物体がわからないままなのがイイですね。どんな感じなんだろう...
- 乾
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いろんな形にのびて、お布団みたいにもなるし。箱にも入るんです。
- 羽賀
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読む人の想像をふくらませる本ですね。
- 乾
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ホントにこねてるだけ。登場人物も一人で、なんの事件も起きない。でも楽しいんですよね。とにかく万能のコネですよ(笑)。
読書会をおえて
芸術家が描いたシュールな物語に、知の巨人によるお化け論、思わずこねこねしたくなる楽しい絵本。まさに「ちょっとひと息」にピッタリな本が集まりました。
次回はどんなテーマになることやら。それでは、また!