2018年05月17日
東京喫茶店めぐり
〜モノサスメンバーのお気に入りをご紹介〜
みなさんには、一息つきたい時や、ほっとしたい時に立ち寄るお気に入りの喫茶店やカフェはありますか?
買い物の途中や、仕事の合間、もしくは仕事帰り。
お気に入りの場所で、美味しいコーヒーやお茶でほっとするひとときは、なにげないけれど、日常のいろいろなことをこなしていくモードから自分のペースに戻り、頭や気持ちがゆっくりと切り替わる大切な時間のような気がします。
今回は、モノサスメンバー2人のお気に入りの喫茶店をご紹介。
ほろ酔いの深夜に立ち寄った築地にある昔ながらの純喫茶「愛養」と、放課後の空気を懐かしく思い出す、先生をされていた方が営む「私立珈琲小学校」です!
築地「愛養」の“ハーフ”トースト&半熟卵
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羽賀 敬祐(プランナー)
「ちょっと歩いて築地まで行ってみよう」
25時、中野。
駅前の飲み屋街は、終電過ぎにもかかわらずサラリーマンや若者で溢れている。
飲み会の終わり、終電をなくした友人と思いつきで企てたのが始まりだった。
「築地に早朝から開いてる渋い喫茶店があるらしい」と私は言った。
距離にして12㎞、歩いて3時間の道のりだ。
シラフでは、間違いなくそんな事をしようなんて思わない。お酒の魔力は恐ろしい。その時は、絶対に行ってやるんだと意気込んでいた。
青梅街道を通り新宿を抜け、四ツ谷を過ぎ、ようやく皇居にたどり着く。
何度「もうやめよう」と思ったことか。
しかし男たるもの、一度言い出したことを今さら撤回もできない。
後半からは、はやる気持ちで足早にゴールを目指していた。
築地に着いたころ、既に辺りは明るくなり始めていた。
「ここだ」
“珈琲の店 愛養”
それはまるで、古い映画のワンシーンに出てくるような年季の入った看板だった。
店内は細長く、カウンターと両端に幾つかのテーブル席がある。両端とも出入口になっており、心地よい風が通り抜けていた。
カウンターに腰掛け、メニューに目をやった。どうやら食事は“トースト”一種類のみのようだ。
「トーストと珈琲で」と私は言った。
すると、店主は「トーストは普通?ハーフ?」と言う。
「…?ハーフで」
数分後。出てきたのは、丁寧に8つにカットされ、いちごジャムとバターが半分ずつ塗られたトーストと、エッグスタンドに上品に乗せられた半熟卵だった。お皿には“ A I Y O ”と控えめに、しかし存在感のあるフォントで記されている。
これがまずい訳はない。しかし、特別に美味いという訳でもない。
どこかで食べた覚えのある、懐かしい味なのだ。
また来よう。この雰囲気が移転して、なくなってしまう前に。
私は疲れなど忘れ、洋々とした気持ちで帰路についた。
愛養 (アイヨウ)
営業時間:3:30~12:30
定休日:日曜・祝日・休市日
住所:東京都中央区築地5-2-1 築地市場6号館
代官山「私立珈琲小学校」の珈琲小ブレンド
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杉江 夏季(ディレクター)
週末の昼下がり、息をふうっと抜きたくなると、無条件で足が向いてしまう場所。
「私立珈琲小学校」。通称、珈琲小。
名前に小学校とつくのは、店主である吉田さんが元々小学校の先生をされていたことに由来している。珈琲小に来る人は皆、吉田さんのことを『先生』と呼ぶ。先生は、お客さんのことを『生徒』と呼ぶ。その呼称が交わされる度に、ほんのりと温かな気持ちになる。
行くと決まって座るのはカウンター席。お店の中も外も、先生が珈琲を淹れる姿も、全て見渡せる特等席。ぼんやりと眺めて過ごすこともあれば、隣に座った人と自然と会話が始まっていることもある。
放課後って、こんな感じだったかもしれない。誰もいない教室で意味もなく佇んでみたり、先生や友達と取り留めもない会話を楽しんでみたり。そんなことをふと思い出させられることが、時々ある。
この日は、珈琲小ブレンドを頼んだ。豆を挽いた後、ドリッパー&サーバーに向き合うまでは、流れるような小気味よい手さばき。くるりと背を向けたら、ハンドドリップが始まる合図。そこから時間の進み方が、フィルターを伝って落ちていく珈琲のような、そんなゆっくりとした感覚に。
「お待たせしました」と、淹れたての一杯。取っ手がないカップだからこそ、手で覆うようにして口に運ぶ所作が、一杯の有り難みをより感じさせてくれる気がする。
息をふうっと抜きたくなるということは、内にあるものを外に出したくなることの表れでもある。それは、気持ちが寛げて安心できる場所だからこそ出来ること。私にとっての珈琲小は、そんな場所なのである。
私立珈琲小学校
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月曜日
住所:東京都渋谷区鶯谷町12-6 LOKO ビル1F
いかがでしたでしょうか?
深夜に3時間歩いてたどり着いて食べるトーストの味は、きっと何ものにもかえがたい思い出の味になったのでしょう。築地市場はもうすぐ移転。50年以上つづく老舗の雰囲気を味わえるのはあともう少しです。そして、元学校の先生が営む喫茶店で、店主を「先生」と呼びかけてほっとしながら飲む珈琲は不思議な安心感がありそうです。
お気に入りの喫茶店、またご紹介できたらと思います!