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Jun,2018
赤嶺 繭子
投稿者:赤嶺 繭子
(Webディレクター)

2018年06月25日

2018年言語の旅
人生に言語というスパイスを

仕事と暮らし・タイ

赤嶺 繭子
投稿者:赤嶺 繭子(Webディレクター)

Hello!サワディーカ!チョムリアップスォー!アニョハセヨ!シンチャオ!你好!モノタイディレクターの赤嶺です。

私がこれまで触れてきた外国語は様々ですが、興味が尽きることがない私の唯一の趣味?と言っていいのが、言語を学び探求することです。学校に行って本格的に学んだことがあるのは英語、タイ語だけですが、TVドラマから学んだ韓国語、現地の人と話したクメール語、憧れで始めたベトナム語、旅行で訪れる国の挨拶などがきっかけとなり、その他の言語も興味津々です!そこで今回、言語の不思議や国によって異なる言語の特徴、そしてプロフェッショナルから学ぶ言語を探求したいと思います。

言語の不思議

私は現在、生活の中で3種類の言語に触れています。
英語:タイ人コーダーさんとのやり取り、自宅でフラットメイトとコミュニケーション
タイ語:タイ人コーダーさんと日常会話、お店や大家さんとのやり取り、タイ語学校
日本語:お客様とのやり取り、日本人ディレクター、家族、友人とコミュニケーション


モノタイメンバーで One Day Tripへ。業務のときと同じく、タイ語、日本語、英語が行き交います

割合で言うと、おそらく英語3割、タイ語3割、日本語4割といった感じでしょうか。
特別に何語が突出しているというわけではないです。ところがです、日本人以外と話さなければならないとなった時にとっさに出てくる言語は何だと思いますか?
なぜか、「タイ語」なのです。話す時間でいえば日本語が一番長いですし、うまく使える第2言語は圧倒的に英語です。なのになぜ??これはいつも私の中の不思議として存在していました。あくまで私の推測で導き出した答えですが、日常生活の中で一番多く耳にする音が潜在的に蓄積されて新しい記憶から順に出てくるのではないか、と思っています。第3言語という新しい領域に人生で初めて触れたので、自分でも頭の中で瞬時に切り替えができていないのは意識的にわかっていますが、それにしてもとっさに出てくる言語がタイ語という不思議に正直驚いているところです。

言語が変わると人格も変わる?

私が日本語を話しているとき、英語を話しているとき、タイ語を話しているとき、それぞれ少しだけ人格が違う気がしています。
日本語は真面目でシリアスな性格、英語はテンション高めのストレートな性格、タイ語は穏やかで落ち着きのある性格。これらは一般的なイメージだとは思いますが、不思議なのはその時使っている脳も違う気がしているのです。思考が変わるので、いつもなら A という答えを出すのに、英語で話すと B という答えになったりと、出てくる結果が異なることまであります。様々な研究などでは「そのときに使っている言語に思考も依存する傾向がある」と言われているのですが、事実日本にいる時よりも心穏やかに生活できている気がするのは、気のせいではないのかなぁと思っています。

プログラミングという言語

私がフロントエンドの世界に興味を抱いた理由、それは HTML / CSS / JS たちが言語だったからです。私の中では今でもその感覚は変わらず、例えば英語を話すまでの過程と、HTMLたちも同じプロセスを経ていると思っています。言語は私にとってコミュニケーションツールですが、HTML / CSS / JS も私にとってはコミュニケーションツールです。英語はグラマーというある一定の法則に沿って単語を並べていくと、いつの間にか文章になり、それが相手の理解できる言語になります。イメージ的には、HTML に基礎的な単語を入れたら、CSS が形容詞や副詞の役割をして、JS が動詞の役割をしている感覚でしょうか。そして Web サイトという結果で目に見えてくる。コミュニケーションの完成です。
はじめにプログラミングを言語と呼んだ人は、うまいこというなぁと勝手に感動したのを覚えています。しかもプログラミング言語は世界共通の言語なのですから、私たちがカメルーン人でもウズベキスタン人でも同じ言語を使ってコミュニケーションが取れるなんて、素敵だと思いませんか?

タイで話される英語の面白さ

さて、次は英語にまつわる”タイあるある”を一つ。
タイでは日常の中で日本よりも英語に触れる機会が多く、レストランやタクシーなど不特定多数の人が行きかう場所では、英語が聞こえてきます。しかし、私がタイに来た時に受けた印象は「全然英語が通じない!」でした。多国籍都市バンコクなら普通に英語が通じるだろうと勝手に思い込んでいたのですが、コンビニでもタクシーでも英語を話すと、「Ahn?」と言われて終わるのが落ちですし、相手の言っていることも聞き取れませんでした。でもこれにはきちんとした理由があって、事実英語を話せるタイ人は日本より圧倒的に多いです。ではなぜ私の英語が通じず聞き取れなかったのか。その理由は発音とアクセントの位置にありました。

1. 最後の音節にアクセントがくる ※単語によります

(例) interesting 
 →[発音] íntərəstiŋ 「イ」にアクセントがくるのが正しい
 →[音節] in・ter・est・ing 4つの音節に分かれています

通常は「イ」ンタレスティングと発音しますが、タイではインタレス「ティン」と発音します。(最後のグは消えます)

2. 音節の終わりの音の変化がいろいろある ※「」はイントネーションの位置

  • Lの音をNで発音 
    → Appleはアッ「プ」ンと聞こえます
  • Sの音をTで発音 
    → Officeは「オ」フィッと聞こえます
  • Fの音をPで発音 
    → Offは「オ」ップと聞こえます
  • 連続する子音が語尾にくる時は発音しない 
    → Send / Sends / Sentはセ「ン」と聞こえます
  • 二重母音( oi、 au 、 ai )の後の子音を発音しない 
    → Oilは「オ」ーイと聞こえます
     

わかりやすいYouTube動画

詳しくあげればキリがないのですが、おおまかに言うと「語尾を上げる」「消える音がある」という特徴を持つタイの英語に慣れるまでは非常に大変でしたが、今では予測して聞き取れるようになりましたし、実際今ではタイ語英語を話しています。今ではタイ語英語に慣れすぎて正しい発音やグラマー(語順)で話せなくなりました。(困った!)
実際に聞いてみるとわかるのですが、タイ人の話す英語はとても柔らかく優しく聞こえます。お国柄や声調を持つタイ人特有の柔らかい話し方が今では気に入っています。
また、フラットメイトの話す英語もフランス英語と韓国英語なのですが、彼らの英語も特徴があって実に興味深いです。

通訳さんの頭の中

言語の切り替えやその国の言語の特徴などをあげてきましたが、それらの壁をスイスイと越えていくプロフェッショナルの職業といえば、「通訳」そして「翻訳」です。
普通に訳せるというのと、通訳・翻訳するというのは大きな差があると常に感じてきましたが、うまく表現できずにいました。今回我らがモノタイのベテラン通訳 Fonさんにお話を伺ってその差が何なのかを知ることができました。

赤嶺
日ごろから気になっていたことがあるんです。私は日常会話や仕事の簡単なやり取りで英語を使いますが、今この場で通訳を!と言われてもそれはできません。でもその”できない”理由というのは単に言語習得能力だけじゃない何かなんです。通訳さんって特別な能力がある気がしていて。

Fon
能力かどうか分からないけど、私もすぐにできたわけじゃないですよ。最初は Webのことなんて全然わからなかった。初めのころは川村さんたちが丁寧にゆっくり時間をかけて説明してくれたり、コーダーさんにもいろいろ教えてもらいました。少しでも意味が分からない場合は、どういう意味かを都度確認したり、単語をメモして後で自分で Web関連の記事を読んで理解を深めたりもしています。

赤嶺
そうなんですね、今のFonさんからは想像もできないですね。でも専門用語を知ってるから通訳・翻訳ができるっていうものでもない気がしていて。

Fon
もちろんそれだけじゃなくて、現場の仕事を理解しないとその人の言いたいことのニュアンスまでは伝えることができないですね。話している人が自分の中で整理がつかない状態で話し始めることもあるので、まずは日本語でもタイ語でも、一旦それを自分の中で整理するようにしています。その方が伝わりやすいです。

赤嶺
いやー私も日ごろ言いたいことばかり言ってしまって、整理してないなー。すみません。あとついつい説明したい気持ちが先走って長く話しちゃったり…

Fon
はい、長い文章を通訳しなければならないので、記憶しながら通訳しています。全部が全部覚えなくても、絶対に伝えなくてはいけないことだけは覚えたり、キーワードは忘れないようにしています。

赤嶺
つまり相手の言うことを聞きながらこれは伝えるべき内容かどうかを同時に判断しているってことですよね。

Fon
そうですね、もちろん長すぎる場合はちょっと待ってくださいといいますよ(笑)。

赤嶺
そうだとしても通訳って一定のスピードの中でしなきゃいけないじゃないですか。瞬時に判断してるのがすごい!

Fon
そのスピードを出すには、日本語を日本語で考える必要があります。タイ語(母語)に置き換えていては間に合わないです。あとその時必要なのは、分析能力だと思う。その人の言っていることを分析するというか。

赤嶺
分析ですか?

Fon
その人が本当は何を言おうとしているのか分析するという感じ。私はコーディング自体は全くできませんけど、そのロジックやフローを理解することでその人の言いたいことが分かるようになりました。日ごろコーダーさんの間で話されている会話を聞くだけでも勉強になります。あとはその人の話し方のクセもあるので、それを理解できるようになるまでは大変でした。

赤嶺
Fonさんの言葉がいつもわかりやすく感じるのは、分析してくれてたからなんですね。
しかもその人の話し方のクセまで?

Fon
はい、それもそうだし、その人の表情も大事です。

赤嶺
ということは今聞いただけでも、4つも5つも同時にしてませんか?

  1. 相手の言っていることを理解する
  2. 表情を察する
  3. 記憶する
  4. 分析・整理する
  5. その人に伝わりやすい形にする

Fon
はい、そのおかげで通訳の仕事をし始めてから何に対しても頭の回転が速くなった気がします。通訳は短い時間での判断が求められるので、繰り返していたら通訳だけでなく日常で何事に対しても瞬時に判断する力がついた気がします。

赤嶺
おー!通訳しているときって頭の中がすごい速さでいろんなことをやっているんですね。おもしろーい!だけど5つのことを同時にする能力ってどうやってつけたんですか?

Fon
自分なりの勉強方法を見つけてやりました。日常生活の中で頭の中で一人通訳をしたり。例えば BTS(タイの高架電車)に乗っているとき、広告や看板を見て翻訳したり通訳したりして練習していました。この方法で翻訳・通訳のスピードが速くなったと思う。あとは本を読むことですね。日本のゲームをしたり小説を読んで出てくる表現方法などを実際に使ってみたり。本を読むことが私には合っていました。

赤嶺
本を読むのって話すことにも書くことにも通じるんですね。私もやってみよう。だけど英語を勉強した身として外国語を習うと出てくる”あるある”のひとつ。一定のレベルまでいくと伸びなくなることってありませんか?

Fon
あります、あります。私の場合はデザインや Web に前から興味を持っていて、好きという思いがモチベーションになってここまでできるようになったんだと思います。

赤嶺
なるほど。いい機会なんでこれから外国語を学ぶ人へアドバイスとかありますか?

Fon
まずはその言語を惚れるくらい好きになること。興味の入り口はアニメでも映画でもなんでも良いんです。もしその言語を仕事で勉強しなくてはいけない人は、ゴールを見つけることが大事。何のために勉強するのか、そのゴールを目指すことで何に生かせるのかをちゃんと考えること。なんでもいいのでモチベーションを保つためのコツをつかんでおくとよいですね。

赤嶺
うんうん。(激しく同意)

Fon
そして誰かと比べるのではなく、自分の得意なことを活かして仕事をすることが今の仕事につながっていると思う。オリジナルな自分になれるというか。好きなことを嫌いにならないように頑張るのが大事です!

赤嶺
Fonさんはこれまでいろんな過程を経てここにたどり着いたんだなぁ、とつくづく感心します。通訳ってただ言語を変換するだけではなく、同時にいろんな脳を使ってますね。お話を聞いていると、AIの時代が来てもその人の言いたいニュアンスなどをくみ取って整理して伝えることはかなり難しい技術なので、近い未来でも残る仕事だと思います。

Fon
そうですね。でも逆にそのニュアンスや整理する能力を AI に持たせれば良いんだったら、通訳の仕事と一緒にその開発に関わるとか面白そうですね!

赤嶺
おー!その発想はなかった。そっか、そうですよね。通訳さんと組んで AI 開発したら完全な通訳・翻訳 AI が生まれる日がくるかも!いろいろお話聞けて楽しかったです。ありがとうございました!

人生に言語というスパイスを

言語への興味は私の生活や思考、仕事にも大きく影響しています。誰かとコミュニケーションできる喜びは何にも代えがたいですし、スパイスとなって私の人生を豊かにしてくれています。働き方を変える、住む場所を変える、そういった選択肢の中に「言語を変える」というのもひとつ取り入れてみてはいかがでしょうか。

タイに来て約1年半。タイ語の習得にはまだまだ程遠いのですが、好きなことを嫌いにならないように頑張る、私なりのモチベーションの保ち方を見つける、という Fon さんの言葉に触発されて、タイ語の勉強をこれからも続けていこうと思っています。

この投稿を書いた人

赤嶺 繭子

赤嶺 繭子(あかみね まゆこ)Webディレクター

モノサスタイランド所属。 どこに住んでも方言が抜けないカボス大国、大分県出身。愛犬サラ(ヨーキー)と海とオリンピックが好き。暑い日に熱い緑茶を飲む祖父母の気持ちが分かり始めた今日この頃です。

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