2018年08月10日
もうすぐお盆。
映画や本などの作品から「死」について考えてみた
品質管理部の乾です。
もうすぐお盆です。みなさんお盆はどのように過ごしますか?
私は祖父母が幼いころに亡くなっていたり、親戚が少なかったりするので、身近な人の「死」の記憶があまりありません。そのためか、お盆や死に対してぼんやりとしたイメージを持っていましたが、ある映画を観てから関心が高くなりました。
しかし、「死」は一般的にはあまり良いイメージを持たれていないと思います。
「今度死について記事を書くの」と言ったら、少し心配されたくらいです。
今後すごい進歩(不死の薬とか)がない限り、死は誰にでも訪れるものです。
それなのになぜ「死」にはあまり良いイメージが持てず、悪いことを考えがちなのか。
いつかやってくる死を明るく迎えられるように、なるべく楽しく考えてみました。
なぜ死はこわい?
死が暗いイメージになりがちな理由を考えてみました。
- 全てが未知(おためしがきかない、体験談を聞けない)
- 終わりのイメージが強い
- 好きなことができなくなる、好きな人に会えなくなる
など
多くの人が上記のようなネガティブなイメージを持っているかと思います。
それでも、私には死が悪いことではないと思うようになるきっかけがありました。
最も影響を受けたのは、椎名林檎さんです。
中学生のころから好きで、特に思考に関してはかなり影響を受けていると思っていて、心の師匠とあがめています。あるとき「生まれて死ぬことは、みんなおそろいでしょ」というようなことを話していたインタビューを見ました。それをきっかけに、「そっか、じゃあ大丈夫かも」とポンっと軽くなったような、死ぬことを恐れる執着がなくなったような感じになりました。
椎名林檎さんの曲にも、命をテーマにしているものが多くあるのでいくつか紹介します。
逆さに数えて 残りを測っているの
確と最期から指折りたったいままで
使い果たすのさ 今生のすべて
さまよえる心よ 振り返る勿れ『逆さに数えて』 作詞・作曲 椎名林檎
焼き付いてよ、 一瞬の光で
またとないいのちを
使い切っていくから
私は今しか知らない
貴方の今を閃きたい
これが最期だって光って居たい『閃光少女』 作詞 椎名林檎 作曲 亀田誠治
椎名林檎さんの歌詞は、今現在に意識を向けるというマインドフルネス的な考えが多いような気がしています。
今に目を向けること、今を生きること、死があるからこその命の大切さを伝えているんだと思います。
音楽以外でも、本や映画から死を疑似体験できたり、今を考えるきっかけになったりすることがよくあります。
次は私がおすすめしたい死をテーマにしている作品を紹介します。
「死」をあつかうおすすめ作品
死を考えるきっかけになったアニメ
リー・アンクリッチ、エイドリアン・モリーナ監督 『リメンバー・ミー』
今回の記事を書くきっかけになった映画で、この作品こそが私に「死」を深く考えるきっかけを与えてくれました。今年に3月に公開された PIXAR アニメ作品(7/18より DVD が発売されています!)です。
今更説明不要なほどのスーパーすごいクリエイティブ集団である PIXAR ですが、
小さいころから大好きで、映画館で観るのはもちろん、DVD も購入し特典映像にある制作の様子までばっちり観るほど大好きです。この映画のこともあまりにも気に入ったので、SNS でリー・アンクリッチ監督に「最高だった!PIXAR 大好き!」というメッセージ送るとニコちゃんとハートの絵文字が返ってきました。
この映画はメキシコの「死者の日」を題材にされています。
死者の日とは、日本のお盆に近い考えで、死者・先祖に思いをはせる日です。
死者の日はとてもカラフルでお祭りのような雰囲気で、この点が日本との大きな違いです。映画でもみんなが明るく過ごしている印象でした。
「家族や友人が亡くなることは悲しいけど、死者の国で楽しく生活できている」
「年に1回帰ってきてくれる」ということを知っているから、悲壮感がないんだと思います。お墓は決して悲しい場ではありませんでした。
制作過程で徹底的にメキシコの文化をリサーチし、メキシコ人スタッフにより厳しいチェックもされたため、かなり忠実に再現されています。DVD の特典映像を観ましたが、メキシコの文化に対して、愛と敬意をこめまくりで本当に感動しました。
また、主要キャラクターの声優担当の多くがラテン系の方です。当たり前のこととも思いますが、白人至上主義が問題になっているとも言われるアメリカが、メキシコの話をつくり、その主要キャラクターをほぼネイティブを起用したということに高い評価をされています。
Hola (こんにちは)や、Gracias (ありがとう)など、英語ではなくスペイン語のまま会話されている場面も多くあるので、よりメキシコの文化を感じられる字幕版で観ることを強くすすめます。
死者を思い出し、祈ることの大切さ
市川春子(著) 『宝石の国』
以前、市川春子さんの好きな理由を考えてみた記事でも紹介した宝石が主人公の長編作品です。作中、「人間は死後、肉、骨、魂に分類する」という話があり、それがとても気に入っています。漫画ですが、この世の中が本当にそういう風にできていると思えてしまうリアリティを感じます。
また、「死後、誰からも祈られなかったものがたどりつく場所」という場面が描かれています。
先ほど紹介した「リメンバー・ミー」でも、現世を生きる人間の誰からも忘れられると訪れる「最後の死」という場面がありました。
思い出すことや、祈ることが今を生きている人の役割なんだと思うようになりました。
「亡くなった人がすぐそばにいる気がする」という話を聞いたことがありますが、それも精神的なつながりがあるからこそのことなんだと思います。
宗教や民族で、死の捉え方もさまざま
寄藤 文平 (著) 『死にカタログ』
タイトルだけだとびっくりしてしまいますが、表紙を見れば安心できると思います。
作者である寄藤文平さんはアートディレクター、イラストレーターの方です。
以前読書会で佐藤さんも寄藤さんの本を紹介していました。
寄藤さん死について考えるようになったきっかけや、「死の理由」、「死のタイミング」など死に関する7つの項目が資料や文献をもとに書かれているので、具体的かつわかりやすく、イラストもたくさん載っているので楽しく読めます。
おすすめポイントは、宗教や民族によっての死の捉え方の紹介をしているところです。
日本の考え方としては、「地獄に堕ちる」というものを紹介していましたが、
この考え方こそが死=こわいという意識にしているのかもしれないと思いました。
アイルランドの民間信仰では死ぬと「チョウになる」という考え方が一般的らしく、こちらの方がかわいらしいし、死に対する恐怖が薄れる気がします。
同じ死でも、多種多様な捉え方があり興味深かったです。
死に対して気づいたこと
「この世はすばらしい、生きていることはすばらしい」という教えが多いですが、
対する「死」が悪いことということではなく、「死」がくるからこそ、今ある「生」に感謝できるということなんだと私は思っています。
前向きに死を意識することは、今の生活を豊かにできるのではないでしょうか。
この記事を書いているとき、自分で書くと決めたとはいえ、暗い気持ちにならないか心配していましたが意外と大丈夫でした。むしろ元気。
それでも今のところ「死」に対してもやもやしていることは、誰にも死に方を選べないということです。
誰でも安らかな死を望むと思いますが、人生何が起こるかわかりません。
しかしどんな死に方をしても、それに対する評価は誰にもできなくて、死者に対して唯一できることが、先ほども書いたように、祈りや思い出すということな気がしています。
お盆もきっとそのためにあるんだと思います。
自分の中で死に対するイメージができているか、いないかで、例えば日々の小さな決断など何か(言葉にするのが難しいですが)が大きく変わるはずです。
「死」のイメージは、育った環境、文化、宗教などによって捉え方が大きく変わるものだと思いますが、今回の記事が死に対する考え方の参考になれば幸いです。