2018年08月15日
モンゴルでトナカイに乗ってクランベリーを摘もう。
〜モンゴル武者修行ツアー・上級編〜
こんにちは、猫とモンゴルの話しかしないディレクター先田です。
モンゴルに通って8年目の去年は、ロシア国境にほど近いタイガ(亜寒帯にある針葉樹林のエリア)まで行ってきました。
なんでモンゴル行ってるねんと思った方は「私はなぜモンゴルに行くのか 〜モンゴル武者修行ツアー旅行記〜」をどうぞ。
ちなみに今回は武者修行経験者のみがいける上級編となります。
読むのがめんどくさい人は一番下の動画へどうぞ。
モンゴルの遊牧は馬、羊、ヤギ、牛だけではない
モンゴルは広いのです。草原だけではありません。タイガもあり、砂漠もあります。
ゴビ砂漠のほうではラクダも放牧されています。
今回旅したのはモンゴルの北端のフブスグル県 (Хөвсгөл, Hövsgöl)の中のさらに北端。
この、ロシア側にぴょこんと飛び出たあたり、トナカイを遊牧しているツァータン(トゥバ民族)を訪ねていきました。
トナカイ遊牧の地へ
まずは首都ウランバートルからフブスグル県の街、ムルンへ。ここまでは飛行機で向かいます。約1時間半。ムルン空港は冬は閉鎖されていたそうですが、最近冬も飛行機が飛ぶようになったそうです。
そしてここからトナカイ遊牧エリアの最寄の村があるツァガンノールまで車で約12時間…と聞いていましたが、朝方出発して着いたのは夜明け前でした…。
オフロードをスプリングの効いていないロシア製のワゴン車でシェイクされながら12時間以上…
山道に湿地帯、川も超え、川にはまって引っ張り出されたり、はまった車を見つけて引っ張り出したり…この旅で一番ハードな時間でありました。
夜明け前についたツァガンノール(白い湖)は、名前の通り湖のほとりにある集落です。
ここでホーショルをいただいたのですが、これがいつもモンゴルで食べていた肉のホーショルではなく魚!そしてキノコが入っています。初めて食べたのですが、間違いなく今まで食べたホーショルの中で一番のおいしさでした。湖のそばだからこそ食べられる味です。
短い睡眠をとって、翌朝トナカイ遊牧をしているエリアまでさらに北上します。国境警備隊の許可を得ないと入れないエリアのため、あらかじめ許可をとっておいたうえで許可書をもらいに行きます。それから車で馬が用意されている山の入り口まで向かいます。車から馬に乗り換え、タイガの中を行きます。
あまり大きくは育ちませんが細い針葉樹が所狭しと生えています。駆け足をしているとあやうく串刺しになりそうに。馬は自分の頭の高さで障害物を判断するので、自分が木に突っ込まないようにするには先を見て早めに馬を操らなければなりません。小さな川もいくつか渡ります。山の中では速く走るよりもいかにうまく馬を操れるかが面白いところでです。
3時間ほどでトナカイ遊牧民の秋営地へ到着です。馬の案内人さんによると慣れてない人はもっとかかるとのことで、上級武者の面目躍如といったところ。8月中旬ですがすでに秋営地に移っており、夏営地はさらに2時間くらい奥へ行ったところだとか。
トナカイ遊牧民の暮らし
広く開けた土地の真ん中に冷たい雪解け水が流れている川があります。三角のテントのようなものはオルツと呼ばれる住居です。ゲルよりもかなり簡素な作りで、木枠を布で覆っているだけです。ゲルは分厚いフェルトでおおわれているのに、寒さの厳しいタイガでは布だけなのが不思議です。寒い時期は着込んで薪を燃やし続けているそうです。
私たちはこの集落の長老のお宅でお世話になりました。
小さく見えますが、中に入ると意外と広いのです。外にはソーラーパネル、中に薪ストーブがあるのはゲル生活と同じ。食料に持ってきた羊肉の塊は、あっという間に切り分けられオルツの中にぶら下げられ干し肉にされました。この木の枠は、放牧地を移動するときも残しておき、また戻ってきたら使います。
じゃーん、トナカイ登場。
温厚で、人が近寄ってもあまり逃げません。
トナカイの角は冬が来る前に皮がむけて落ちます。むけ途中で皮と血管がぶらぶらしている様は結構グロいです…。角自体も春先に落ちます。
トナカイのミルクは脂肪分が50%ととても濃厚。とてもまったりとしていて濃いのですが後味は何か植物的な香りがしてさっぱりです。今まで飲んだミルクの中で一番おいしい!当然ミルクでつくるスーテーツァイ(乳茶)もおいしい。オルツに戻って座るたびに飲んでいました。ちなみに、トナカイの好きな苔は人間には高血圧の薬になるそうです。食べてみたのですがトナカイミルクの後味はこの苔の香りと似ている気がしました。
トナカイのミルクは沸かして分離させ、布で漉して固め、干して保存食にします。これもおいしい。
トナカイたちは朝早く放牧地へ連れていかれます。そのあとは放置。遠くへ走って行けないように脚を二本縄でつながれています。
夕方になると自分たちで戻ってきます。
夕方、そろそろ戻ってくるかなーと放牧されたほうを眺めていたら、1頭2頭と姿が見えてきました。「お、戻ってきたのかな」と眺めていたらそこら中から子供たちが口笛を吹きながらトナカイのほうへ駆け出しました。すると大人たちも次々と出てきます。トナカイたちはあとからあとから湧き出てきます。
なんだこれ、ファンタジーの世界に紛れ込んじゃったかな?
足元は湿地、苔でぼこぼこしているのでかなり歩きにくいです。
母トナカイが私の手をなめようとしているのは岩塩を持っていると思っているからです。
トナカイを誘導するのに岩塩が使われています。
トナカイが歩くとぱちぱちという音がします。蹄が鳴っているのかなと思ったのですが、関節が鳴っているようで、仲間がついてこれるように音が出ていると言われているそうです。
メインイベントはもちろん乗トナカイ。
トナカイを放牧している地域はモンゴルのタイガ以外にもありますが、日常でトナカイに乗るのはここ以外あまりないようです。貴重な体験です。
初めてなので綱を引いてもらいながら乗ります。
馬より体高が低いので怖くないのですが、角が前後に振られるので最初は目に当たりそうでおっかなびっくり。
苔でふかふかな山の中を登っていき、ベリー摘み。ブルーベリーの時期は終わってしまい、クランベリーしかありませんでしたが、なんだこれ、ファンタジーの世界に…(以下略)。
クランベリーは大きなペットボトルで砂糖漬けにしてヨーグルトと食べてみました。酸っぱくておいしい~。
お世話になった長老には、薬になる植物などいろいろな話を伺いました。
山々には神様がいて、人間が良くないことをすると不思議な現象を起し忠告を与えます。
ツァータン(トゥバ民族)が暮らすエリアは、20世紀の始めにモンゴル国とロシアに属するトゥヴァ人民共和国に分けられてしまいました。そのため夜にこっそり国境を越えて行き来したりしたとか。
狼も出ます。昔は狼狩りもしましたが、現在は保護されていて狩れないため、数が増えてトナカイが襲われてしまうとか。そのためたくさんの犬たちが狼たちからトナカイを守っています。昼間はだらっとしていますが、夜には活躍しているはず。狼の気配を感じると一斉に吠えるそうです。そういえば夜中に騒いでいたな…。
長老の奥さんには石の占いをしてもらいました。41の川から一つずつ取ってきた41の石で占います。
他にも羊、トナカイ、熊の肩甲骨で占うト骨占いもあります。
子供たちがトナカイレースをしてくれました。
つい2、3日前に結婚したばかりの新婚家庭にもお邪魔しました。
案内人の方は元バグ(村)長さんで各家庭のことをよくご存じ。
この夫婦は幼なじみ。新郎さんは兵役が終わり村に帰ってきてトナカイ遊牧を継ぐことにし、学校に行くために街へ出ようとしていた新婦さんに「行かないでくれ!」とプロポーズした、といろいろ暴露。新郎さんは恥ずかしそうにしていました。
若い人がこうして残って遊牧を継いでくれるのはうれしいことだ、と案内人さんが言っていました。モンゴルでは女性が子供を産んでから大学へ行ったり留学したりすることも多いので、新婦さんもまた街へ行く機会があるかもしれません。
モンゴルのリゾート地へ
遊牧民の暮らしを満喫した後は、フブスグル湖へ向かいます。ツァガンノールとムルンの間にある大きな湖です。この大きな湖は古代湖で非常に透明度が高く、モンゴルで人気のリゾートエリアです。
船で湖中の島へ渡りました。水もそのまま飲めます。なんの味もしない、空気を飲んでいるような澄んだ水でした。
馬に乗って、山の上からフブスグル湖が見られる絶景ポイントへ向かいます。
ここにも観光客向けにトナカイがいるそうですが、トナカイが過ごすには暑すぎて、よくないとのことでした。
モンゴルは広い
モンゴルは広く、たくさんの民族がいろいろな暮らしをしています。
住居だけでもゲルやオルツなどいろいろな種類があります。
今年の武者修行は、西のほう、鷹匠のいるカザフ族の地域に行く予定です。
ご紹介する機会があればいずれまた。
おまけ:同行の友人が作成した旅の動画です。