2018年08月23日
夏のおわりの「ものさすシネマ」
日中の暑さが厳しくても、夕方になると涼しい風が吹く日も増えてきました。
暑さが和らいでほっしとますが、8月も後半にさしかかり、夏のおわりもすぐそこかと思うとちょっと寂しさも感じますね。
この夏、みなさんは何か映画を見ましたか?
今回は、4人のものさすメンバーの夏のおすすめ映画をご紹介。
食通の監督の、ラーメンが軸となった名作や、でこぼこコンビの一夏のロードムービー。甘くて切ない青春の終わりの群像劇や、鉄板のアドベンチャー。
ドキドキしたり、せつなくなったり、笑ったり。
メンバーのおすすめする熱量もいつも以上に熱いです!
今回紹介する映画
- 『アメリカン・スリープオーバー』デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督
- 『菊次郎の夏』北野武監督
- 『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ監督
もう戻らない甘ずっぱい一夜は
青春が終わる瞬間
『アメリカン・スリープオーバー』
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紹介者
半田 貴功 ディレクター
今年の夏も猛暑続きで早く涼しくなって欲しいと祈るばかりですが、
8月も終わりに近づくと、夏らしいこと何かしたかな、
やり残したことはないかなと追憶にふけったりします。
今回紹介する「アメリカン・スリープオーバー」はそんな夏の終わりに
少年少女らがそれぞれの求めるものを探す青春群像劇です。
アメリカのデトロイト郊外。
夏休み最後の週末の一夜。
ある少女はもの足りない何かを見つけに、
ある少年は一目惚れした女の子を探しに、
また、彼氏の元カノの家に泊まりに行く少女、
高校時代に美人の双子が自分に好意を持っていたことを知った青年と、
あちこちで開かれるお泊り会(スリープオーバー)を舞台にそれぞれのストーリーが始まります。
9月が新学期のアメリカの学生にとって、夏休みは青春が終わる瞬間。
夜が明けるまで刻一刻とせまる時間の中で、
求めていたものに辿り着いた時にそれぞれの出した答えが甘く切ないです。
ホームパーティや、お泊り会など文化は違いますが、
なぜか懐かしい感覚があり共感できるものがあります。
そしてラストシーンでの彼らの表情がとても清々しい気持ちにさせてくれます。
劇中である青年がいう台詞があります。
”冒険を期待して大人へと急ぐ、後で気づいても2度と戻れないのに”
その時夢中になっていたこと、輝いていたことが段々と日常になって忘れてしまいます。
そんな忘れてしまったことを気づかせてくれる、日々を大切にしなきゃいけないと思わせてくれる映画です。
また、エンドロールで流れる
The Magnetic Fields の “The Saddest Story Ever Told” も
映画の内容にリンクするようなすごくいい曲なので
ご覧になる方は流れる音楽の中で、
青春時代を振り返りながらじっくり余韻に浸ってほしいです。
長い旅路の果てに、思い通りの結末がなくても。
「いつかどこかの、あの夏」がやってくる物語
『菊次郎の夏』
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紹介者
田中 夏海 ディレクター / コーダー
毎年夏になると、見たくなる映画があります。
それがこちら「菊次郎の夏」。北野武監督・主演の本作、ご存知の方も多いかと思います。
父親を亡くし、おばあちゃんと暮らす少年・正男と、彼の「母親探し」の旅にひょんなことから同行することになった「おじちゃん」の、ひと夏の旅を描いたロードムービーです。
とにかく北野武演じる「おじちゃん」がすさまじい。破天荒すぎる。運転手のスキを見てタクシーをパクる、旅費は全部競輪でスっちゃうし、盲目のふりをして親切なドライバーを騙そうとしたり…。正男くんも正男くんで、これが全然可愛くないんです(笑)。リアルな可愛くなさというか、子ども独特のあの固い感じがちゃんと出ていて、可愛くないのに見てしまう。
そんな二人が、正男くんの離れて暮らすお母さんに会いに行く旅は、時にはちゃめちゃに楽しく、めっちゃくちゃにひどい目に遭って…お互いに足をひっぱり、成長したりしながら、少しづつ歩みを進めます。
物語を彩るのは、井手らっきょや細川ふみえなど、アラサーテレビっ子にはお馴染みの面々演じる「名前も知らない人々」。偶然出会ったカップルと、立ち入り禁止の芝生の中で堂々と、しかも平和に遊んだり、二人旅のバイカーや小説家志望のおじさんと半裸でだるまさんがころんだしたり。誰かと仲良くなるのに、その人が誰で何をしているかなんて、本当は関係ないんじゃないかなぁ。
名前も知らない人々との出会いと別れ。彼らとの交流は、二人の旅を変えていきます。まさかこんな旅になるなんて思いもしなかったでしょう。そして最後には、少し以前と違う姿で元いた場所へ帰っていく。たとえその長い旅路の先に、二人の望む結末がなかったとしても。
ね、人生うまくいかないことの方が多い…けれど、うまくいかないその時こそ、かけがえのない美しい瞬間なんじゃないかなと、この映画を見ると思うんです。
全部がキレイにうまくいかないからこそ、人って成長できるんじゃないかな、って。
うまくいかないことがあって傷ついて、そんな中でだれかと出会って、少しの間一緒に遊んで。そして別れて帰ってきて、少し大きくなった自分に気づく…いつ、どこだったかもわからない、そもそもそんな体験はなかったかもしれない。でも確実に私の心の中にある、「あの夏」がやってくる。これは私にとってそんな映画なんです。
この映画でのお気に入りのキャラクターは、今村ねずみ演じる小説家志望の「やさしいおじちゃん」。彼は車に全ての荷物を積み込み、旅をしながら自作の詩を売って生活しているのですが、このスタイルがかっこいい!彼に憧れて、大学生の頃「卒業したら放浪の旅に出るぞ!」なんて計画したのも懐かしい思い出です。
今年も、暑い部屋で冷たい飲み物を飲みながら見るのが楽しみです。
物語に入り込んだ子ども心を思い出す冒険物語
『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』
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紹介者
齊藤 あかね チェッカー
かの有名な、パイレーツシリーズ5作目の紹介です。
夏休み。亡霊・呪い・幽霊船・天体そんなキーワードにときめいた子どもだった人にはオススメ。
小さい頃から大好きだったディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」が映画になって約15年。その歴史が、最高に心があたたかくなる、素敵な結末となっていました。(5作目だけでも充分おもしろいですが、今までのシリーズから世代が受け継がれているので、せめて1作目を見てからだと「そういうことか!」とおもしろさが倍層します。)
序盤から、登場する幽霊船や敵の亡霊サラザールは恐ろしく、海賊船船長のジャック・スパロウは酔っ払っているし、一体どうなるのだろうかと、あっという間にストーリーに引き込まれていきます。
ジャック・スパロウは、完璧な正統派ヒーローではなく、飄々として人間らしい悪賢さやダメさもあります。心とうらはらなことを言ってしまうところもかわいい主人公です。
シリーズ5作目のこの作品では、キャプテンジャック・スパロウ誕生の話が出てきます。この物語のカギになる部分なのですが、ここでは飄々としつつも賢さやカリスマ性が存分に発揮されています。
そんなジャックは「脇役」ではないのに、いつも、いつの間にか周囲の縁結びをして見守っています。そこから広がる、家族、親子、友情も、甘くも辛くもたくさん描かれています。
全てを失いそうで、最終的には大切なものはちゃんと手に入れるジャック。
だから、観ていてスリルにハラハラするけれど、最後にはすごく幸せな気分になります。
登場人物ではないけれど、私が一番注目するのがジャックの船「ブラックパール号」です。この船は、帆も船体も漆黒。暗闇では見えないのに、幽霊船からも逃げ切れるカリブ一速い船というからおそろしい。
奪い合われたり、海底に引きずりこまれたり、縮んでボトルシップになってしまったりと、シリーズの中で波乱の海賊船人生を送っています。
この物語では、ボトルシップに閉じ込められていたブラックパール号が復活する場面がみどころ。しゃべることも無いですが、存在が頼もしくてかっこよくて、その瞬間の感動を何度も味わいたくて、サントラを買ってしまうほどです。
絵本の読み聞かせをしてもらって、ただただ怖かったり笑ったりしていたころを思い出す。その、本を読んで想像したような物語が実際目の前に広がっていてワクワクする!
そんな気分になれる夏にぴったりの映画のご紹介でした。
ワクワクと物語を聞いた子ども心に戻って楽しめるものや、
遠い夏を思い出すもの。
この夏、どこかに行った人も行かなかった人も、
映画でちょっと旅にでるはいかがでしょうか?
おすすめ映画特集、またお届けできたらと思います!