2018年08月24日
過ぎゆく夏も、本といっしょに。
〜モノサスの「読書会」#26〜
朝夕の風が涼しくなってきました。平成最後の夏、本当に暑かったですね。まだしばらく残暑は続きそうですが、気持ちは秋に切り替えつつ...です。
今月の読書会は、過ぎゆく夏を感じながらのんびりと。特にテーマを設けずに、おすすめ本を持ち寄りました。仕事の合間にちょっとひと息、ランチタイムに集まったのは、読書会おなじみのメンバーたち。ひとり5分間で本を紹介します。
それでは読書会、スタートです。
今回紹介する本
- ナガオカケンメイ(著)『もうひとつのデザイン』D&DEPARTMENT PROJECT
- 盛口 満(著)『となりの地衣類』 八坂書房
- 島田 ゆか(著)『うちにかえったガラゴ 』文溪堂
すでに「ある」ものに、新たな視点を。
ナガオカケンメイ(著)『もうひとつのデザイン ナガオカケンメイの仕事』
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紹介者:羽賀 敬祐
ナガオカケンメイさん、ご存知ですか?「ロングライフデザイン」をキーワードに、 D&DEPARTMENT (以下、D&D )というショップを経営したり、大学で教えていたり、とてもユニークな活動をしている方です。
ふつう、デザインって聞くと「新たに作り出す」イメージが強いけど、ナガオカさんは「すでにあるもの」を捉え直して、新しいデザインとして打ち出すというか。例えば、いいデザインだけど廃番寸前だった家具メーカーの椅子をリサイクルショップで見かけて、そこに新たな価値観を加えることで、今ではカフェでよく見かける大人気の商品になっていたり。
D&D のショッパー(お店の紙袋)もすごくユニーク。お客さんから不要な紙袋をもらって、そこに D&D のテープを貼ってショッパーにしてるんです。それだけで、紀伊国屋や無印の紙袋が D&D ショッパーになる。エコだし、不思議とカッコよく見えるんですよね。
すでにあるものから、新たな良さを掘り起こして、今の時代に合わせて示していく。ナガオカさんの言う「もうひとつのデザイン」はすごく興味深いし、これからの時代、こういうことって特に大切になってくるんじゃないかなと思います。
- 村上
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お店にはよく行くんですか?
- 羽賀
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はい。本店は奥沢にあって、渋谷ヒカリエ8Fにも47都道府県の個性や魅力を伝えるショップやレストラン、ミュージアムがあります。そのフロアのコンセプトもナガオカさんが関わってて、8F だからクリエイティブスペース「8/」(はち)。シンプルだけど、分かりやすくていいなぁと。
- 乾
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文房具とか収納道具とか、いろいろ面白いものがあったような気が...
- 羽賀
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日本全国の物産品、レトロなものや工業製品などが、新たな切り口で提案されてますよね。業務用のアイスクリーム箱をワインクーラーやゴミ箱に使うとか、学校の古机から作ったフォトフレームとか。なつかしいけど新しくて、すごく面白いと思います。
怖い?美しい? 不思議なツブツブたち。
盛口 満(著)『となりの地衣類−−地味で身近なふしぎの菌類ウォッチング』
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紹介者:村上 伊左夫
先日、ものさす記事を書いたときにも参考にした「地衣類(ちいるい)」の本を持ってきました。著者の盛口さんが地衣類と出会ったきっかけから、どうやって地衣類への理解を深めていったかなど、その道筋が丁寧に描かれていて、すごくわかりやすいです。
本のなかに、実家の庭で地衣類を探してみたとあったので、私も実家(熊本)の家でやってみたらホントに見つかったり。読者が追体験できるので、頭に入ってきやすいんですよね。写真や挿絵もたくさんあって、このイラストも盛口さんが描かれてるのかな。丁寧な絵でわかりやすい。もう一冊、地衣類のハンドブックというのがあるんですけど、それとあわせて活用してます。
冒頭に、著者が地衣類の勉強を始めようとしたときの話があるんですけど、詳しい先生に話を聞いた方がいいか友人に相談したところ、「最初から聞くんじゃなくて、自分でやってみてから聞いた方がよくわかると思う」と助言されて。これって仕事も一緒ですよね。自分でやった上じゃないと理解が深まらないというか。すごく納得しました。
地衣類に関する考察もすごく面白くて。自分じゃ思いつかないような視点が呈示されるので、読んでてすごく興味深いです。
- 羽賀
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地衣類って...ひと言でいうと何ですか?
- 村上
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菌ですね、藻類と共生している菌類です。
- 乾
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村上さんの記事に載ってた写真がヤバかった!ちょっとグロテスクというか...怖いもの見たさのような気持ちでそっと眺めてました(笑)。
- 村上
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そうですか?あのツブツブが綺麗だし可愛いと思うんですけどね。ちなみに、私のスマホの待ち受けも地衣類なんですよ。(嬉しそうに見せる村上)
大好きな仲間たちがいる、愛すべき世界。
島田 ゆか(著)『うちにかえったガラゴ 』
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紹介者:乾 椰湖
大好きな島田ゆかさんの絵本です。前に紹介した『バムとケロ』シリーズの作家さんで、こちらは『ガラゴ』シリーズの2冊目。目が赤い動物が主人公のガラゴで、旅するかばん屋さん。いつも音楽が流れてるかばんとか、たくさんのおたまじゃくしが入るかばんとか、お客さんからのリクエストに合うかばんを売ってるんです。
ガラゴのかばん屋さんは、寒くなってきたら店じまい。旅からおうちに帰ってきてパーティをするのがこのお話です。次々にお客さんが来るんですが、そのなかに『バムとケロ』シリーズのキャラクターもたくさん登場します。ほっぺに商品を詰めこんでるハムスターのとらちゃんとか(お客さんからくださいって言われたらほっぺから出す)LINEのアイコンにしてるほどお気に入りです。
画面の端で違うストーリーが展開していたり、最初のページで降りはじめた雪が、徐々に積もって最後は雪に包まれていたり...時間の経過まで描かれてる。本当に細かいところまで世界観がつくり込まれていてステキなんです。
おうちの中や、家具のちょっとした部分やお風呂の椅子とか、とにかくすごく可愛いくて、眺めてるだけで幸せな気分になります。島田さんの世界が好きな人には、たまらない絵本です(笑)。
- 村上
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この作家さんの世界観は、いつも共通してるんですか?
- 乾
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はい、違う作品でも同じキャラクターが出てくるので「あの子いる!」ってワクワクします。ページの隅で手袋を落とした子が次のページで見つけてたり、いろいろ細かく仕込まれてるので、ホント楽しいです。
- 羽賀
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そういう描写は、文章では特に触れないんですね。
- 乾
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確かに気づかない人も多いかも。だからこそ見つける喜びがあります(笑)。あ、ちなみにガラゴって実在する動物なんです、知ってました? 。
読書会をおえて
夏のおわりに、自由なテーマで持ち寄った読書会。あらたな価値観を生み出すデザインに、謎めいた地衣類の世界、大好きなキャラクターたちがつながる絵本。それぞれの好きな世界が伝わってくる1冊が集まりました。
次回はどんなテーマになることやら。それでは、また!