2018年11月19日
徒然にものさす #5
誰にだって特別な時間や場所がある。
私にも、導かれると言うと大袈裟だけれど、それでも自然と引き寄せられる場所がある。
台所だ。
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1Kの部屋の台所には、常に片手鍋が大小ひとつずつとフライパンを、いつでも取り出せるように準備してある。読んだ本に憧れて購入したサラシは、食器拭きにダスター、食材の水切りや道具の手入れに大活躍だ。
中華鍋を扱うにはアパートの台所は狭いけれど、蒸籠を使ってささみや紅鮭を野菜と一緒に蒸すととても美味しい。一人用の土鍋は湯豆腐やキムチ鍋、炊飯にと季節問わずフル回転。一目惚れで購入した純銅のミルクパンや、他にもお気に入りの道具やその使い方について語りだせば、止まらないだろう。
年始には七草粥、三月にはまぐりのお吸い物、土用の丑には梅わかうどん(鰻を買うお金はない)。野菜や魚の旬を調べて、季節に合わせた料理をする。調味料さえ揃えれば、異国の味にも挑戦できる。
台所にいること、道具を選んで使うこと、調理することは、私の第一の趣味である。
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私には、人生を支えてくれた二つの言葉がある。
人生はうまくいかなくて当たり前
子供の頃に読んだ漫画にあった言葉。この言葉を胸の奥に持っていたことで、私のいままではずいぶん楽になった。
日常生活を趣味にしてごらん
そんな私にも夢があった。小さな頃から大事に育ててきたその夢が破れたとき、塞ぎ込む私にある人がこう声をかけてくれた。
私にとって大切な二つの言葉。
これらがあったから、私もここまでのらりくらり生きてこられた気がする。
うまくいかなくて当たり前、でも、苦しくなるときはある。そんなとき、生活そのものを趣味としていれば、楽しみは無くならない。つまり、なんとなく大丈夫になるのだ。
私にとって、それは食卓や台所仕事。おかげさまで、何もしなくても台所にいるだけで気分が落ち着いて、なんとなくわくわくしてくるようになった。
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「あったかくておいしいごはんを、自分で作って食べられること」が私にとっての幸せだ。
ただ、最近自分のためにしか料理をしていなかったせいか、たまに人に食べてもらった時に怪訝な顔をされることが増えてしまった。
なので、ちょっとハードルは下げさせてほしい。
味は少々まずくても…うまくいかなくて当たり前。あったかいごはんを作って食べられるなら、私はきっと大丈夫。