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Dec,2019
原田 礼
投稿者:原田 礼
(カンパニーエンジニア、モノサスアクセシビリティアドボケイト)

2019年12月12日

会社にパン屋ができるらしい

仕事と暮らし・代々木

原田 礼
投稿者:原田 礼(カンパニーエンジニア、モノサスアクセシビリティアドボケイト)

こんにちは、クリエイティブ部 原田です。
どうやら代々木のモノサスオフィスにパン屋ができる様子。Web 制作会社にパン屋…それも「メインが薪窯で焼くカンパーニュのお店」…唐突すぎてなかなか難解です。

11 月初旬に発起人であるモノサス CDO(チーフ・デザイン・オフィサー)真鍋さん(本人はいつも「デザイン係」と自称しています)と薪窯で焼くパン屋で有名な沖縄の「宗像堂」で修行し天然酵母のパン屋の草分けとして知られる富ヶ谷「ルヴァン」で製造責任者として働いていた塩見さんの二人が説明会を開催しました。

この記事ではその説明会で感じたこと、お二人の熱意、私達はどう向き合って協同していくのだろうという投げかけが少しでも伝わればと思い書いていきます。
(会社の広報部分でもあるものさすサイトで自社の人間をさん付けで表記するのは色々ご意見があるかもしれませんが、ここは私の視点と考えをスムーズに表現したく真鍋「さん」と敬称をつけます。)

出会い~かまパンの立ち上げ

数年前、塩見さんが独立のためにルヴァンを辞めた際、そのパン屋さんのファンであった真鍋さんが半ば強引に神山でモノサスが出資するフードハブ・プロジェクトのパン屋「かまパン」の立ち上げ、メニュー開発の協力を依頼。
詳しくは過去記事、つくり手ふたりの「真ん中のパン」とは 神山の日常のパンができるまで〜フードハブ・プロジェクト「かまパン」取材レポート〜参照

かまパンの顔でもある「いつもの食パン」をつくった人ということで、それ以降、真鍋さんと塩見さんの信頼関係は強いものとなっていったようです。


あの「いつもの食パン」を開発中の塩見さんとかまパンの笹川さん

パン屋を開く地を求めて

2017年夏ごろ「かまパン」のプロジェクトが一段落した後、塩見さんは地元の小田原や自身のパンのルーツである沖縄など作りたいパンと生活バランスを保てる出店場所を探します。作りたいパン屋の前提は

  • 天然酵母のカンパーニュ
  • 薪窯で焼く
  • 「食べたい」と思ってくれる人がたくさんいる場所で(配送よりも店舗での対面販売メイン)

どの条件も単独で達成している店舗は存在していますが、3 つすべてを満たすとなるとパン屋という事業活動は一気に困難になってしまう。


説明会での塩見さん

カンパーニュをメインに据えることはメインストリームでは無いかもしれませんが「こだわりのパン」を売りにしているお店は日本各地にあります。それに「田舎パン」のファンはビジネスとして成立するだけの市場規模があるはず。天然酵母でカンパーニュをつくることは問題なさそう。 3 つの条件の中で難しそうなのが「薪窯」と「対面販売」を両立させることです。

しかし東京の中心となると、家賃が高騰するためパン屋を営むのはかなり難易度が高くなる。
「(地方では)ハード系の良いパンを焼いても周りに食べたいという人が少ない」「薪をつかって焼くシンプルなパンを作りたいという気持ちを曲げたくない」こだわりを持ちながら道楽ではなく営みとしての働く場所を創るためパン屋を始めることができない日々が続く中、塩見さんは「東京の中心で薪窯のパン屋をやりたい」という思いを真鍋さんへ話します。

真鍋さんの想い

「そこまでのこだわりがあるなら、中途半端にやめるのはもったいない。モノサスがなにか応援できることはないだろうか」


説明会での真鍋さん

仲間を応援するため、真鍋さんが思い出したのがモノサスの空きスペース。配置転換でたまたま人がいなくなっていた代々木オフィスの West 棟 1 階をパン屋とすることを真鍋さんは考えます。
そこには

ビジネスとは結局、自分が「正しい」と思うこと(≒ 美学)を世の中に問うということ。
それが受け入れられたら成功するし、受け入れられなかったらゲームオーバー、退場させられる。
一番のリスクは、実はお金じゃなくて、自分が「正しい」と思うことを世の中に「問う」こと。        

モノサス 代表取締役 林隆宏

という、真鍋さん自身が追い続けている、モノサス代表林さんの言葉がビジネスのモットーとしてありました。
経済合理性だけを考えてしまうと失われてしまう美学を仲間と一緒に積み上げていく。そしてシンプルに「(パン屋を作ったら)ワクワクする会社になりそう」という会社を良くしていきたいという思いがありました。
曰く

「モノサスがなかったら、この東京の
ど真ん中では経済的に「不可能」な
挑戦をモノサスのメンバーと一緒に
チャレンジして世の中に問いたい。」

この話を聞いて、友人を応援するだけではなく、モノサスの大きな挑戦としてパン屋を捉えている真鍋さんの気持ちが少しだけ伝わってきた気がしました。(まだまだ全部は受け止めきれていないけど)

私の思いの移り変わり

「え?真鍋さんがやりたいなら、勝手にやればいいんじゃないの?会社を巻き込む必要ってある?」
今年 9 月に「パン屋をやろうと思うんだけど」と最初に投げかけがあった際に私が感じたのは、ごくごく感情的な“反発”でした。Web 制作会社として世の中に求められていることをしっかりやることが、私達の最大(唯一)の役割。だからパン屋をやるって正直、意味がわからない。West棟を会社の共有部として設えたり、まずはモノサスのための場所として考えていくことが私の中では当たり前の感覚で、パン屋を始めるにあたりペーパーワーク等は見通しが立ちそうとすでに話が大分具体化しているような説明を受けたときは自分たちが軽んじられているのではないかと不安も覚えました。

説明会までの 2 ヶ月間、最初は賛成できないなと感じながらも、色々と考えているなかで、心境の変化がありました。
同じ会社のメンバーがやりたいと思っていること、それも主語が「モノサスとして」と会社のことを考えて発信しているものを、感情的に反発することは果たして正しい行動なのだろうか。感情を脇においた上でメンバーの求める美学を否定できるほどの材料が私の中にあるだろうか。色々考えました。今現在私のなかでは、この話に対して「(真鍋さんを)応援しない理由はない」「私が協力できることは何があるだろうか」「ビジネスを立ち上げていく過程を一緒に体験できることは自分にとって貴重だな」という結論に至っています。

説明会が終わって

説明会の中でメンバーから
「2階が熱くなったりしない?」
「家賃は妥当?」
「煙は出ない?」
「薪はどこから手に入れる?」
「防災対策はどうする?」
など、そりゃ不安ですよねという質問がたくさん寄せられました。まだ決まっていないことが多いため、解決しなければならない技術的な問題が山積みです。


説明会に聞き入るモノサスメンバー

だけど、技術的な問題なら絶対解決できるはず!それよりも始めてからのほうが、課題が噴出してくるわけで、そこが本当に大変になると予想しています。

塩見さんも真鍋さんも、私もほかのメンバーも、そして会社の機能としても変化し適応していかなければならない状況がいっぱい出てくると思います。

でも、それを悲観せずひとつひとつ適応して解決していくことがすごい体験になって、本当にワクワクする会社を創っていくことに繋がっていく気がしています。だから私は、このチャンスにできるだけ協力していきたいなと考えています。

ちょうどこの日の夜は、モノサスの周年パーティーでした。パーティーの最中に塩見さんへ、パン屋をやるにあたって不安に思っていることを尋ねると、

「モノサスの皆さんが働く中でパン屋をやらせてもらうことになるので、皆さんとわだかまりがないようにしたい」
「単なるテナントではなく、可能であればみなさんと一緒に店作りをしながら楽しんで準備を進められたら良いと思っている」と答えてくれました。

「一緒にやる」「楽しんで進める」このキーワードを忘れないようにしたい。

モノサスにパン屋ができる道のりの中で、現時点でわかっていることは

  • 塩見さんは美味しいパンを作る(ほんと)
  • West 棟の1階で要望に沿ったパン屋を開業することは技術的に可能(らしい)
  • みんなでリノベーションしながらパン屋を作れるかもしれない(たのしそう)

の 3 点だけ。説明会を聴いた限りでは、課題はまだまだ見えていない、これから課題をひとつひとつ見つけては解決しながら、進んでいくんだと感じました。

まずは真鍋さんの想いをメンバーそれぞれの主観として捉えることができるかが大切。「見守る」ではなく「みんなで取り組む」とならないとワクワクするパン屋さんにもワクワクするワークプレイスにもならないと思っています。どんなふうにWeb制作会社にパン屋が出来上がっていくのか、ものさすサイトでも様子を紹介していきます。

この投稿を書いた人

原田 礼

原田 礼(はらだ れい)カンパニーエンジニア、モノサスアクセシビリティアドボケイト

怠慢⇔真面目、傲慢⇔謙虚、用意周到⇔いきあたりばったり、冗談⇔本気。同居している人間です(と思っている)。 「理屈っぽい、パキッとしてる」と言われがち、でもそのあと続けて「(でも)いいやつなんですよ~」とも、 お客様、そして仲間が「何を、なぜやりたいのか」それを知りたいだけです。

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