2020年06月02日
リモートワーク歴が長い3人に聞く「オンラインでプロジェクトを進めるコツ」とは?
ものさすサイトをご覧のみなさま、こんにちは。
京都でひっそり暮らしているフリーランスのライター、杉本です。
徳島・神山町に移り住んだ女性たちにインタビューする「かみやまの娘たち」を連載していることから、神山で開かれた「文章の音楽性」をめぐる座談会 を、ものさすサイトで書いたことがあります。あれはいい座談会だったなぁ。
ふだんは、3か月に一度訪ねている神山。
次に行けるのはいつになるのかなぁと思っています。
新型コロナウイルスの感染拡大による影響、いろんなところに出ていますよね。モノサスのみなさんも、全員がリモートワークに突入したと聞きました。今までは同じ場所で働くなかで「なんとなく」共有していたことを、オンラインで伝え合うことに難しさを感じているんじゃないかーーと考えたのは旧プロデュース部部長(現デザイン係)の真鍋太一さん。
真鍋さんからのコメント
私が徳島・神山に引っ越したのは6年前。プロデュース部の部長に就任して間もない時でした。以来、神山と東京を往復し、メンバーのみんなと実際に顔を合わせるのは月一回くらい。後は日々のチャットやビデオ会議、メールでのやりとりで今までやってきていました。このチームは自社のオフィスにはいない、クライアント常駐型という働き方をしており、「自律分散型」といえば今風で聞こえがいいけど、マネージメント“されない”スタイルをみんなで作り上げてきたたわけですが。その核と周辺にあるノウ・ハウみたいなものをお伝えすることで、これからの「新しい生活様式」の中で何かしらの足しになるのでと思いこの記事の企画をしてみたのであります。
真鍋さんの思いに応えて、この記事のお手伝いさせていただくことになりました。それでは、さっそくオンライン取材をはじめますよ、ポチ。
集まった人
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旧プロデュース部の部長。この企画の発案者。リモートワーク6年生。
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チームのリーダー。自宅から愛猫とともに参加。
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ベテランプランナー。海外と連絡をとりながら仕事をすることも。
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モノサスに入社後、すぐ常駐型になったディレクター。シンボルマークの帽子は在宅でも健在。
考えていることを正直に話してもらうために、今回はこちらのアイコンで話し手をご紹介していきます。
オンラインでプロジェクトを進めるための「三種の神器」
まずは、オンラインでプロジェクトを進めていくうえで、どんなツールを使って、どんな工夫をしているのかを聞いてみたいです。
- モノサスでは、Google Cloud の G Suite を使っています。そこで使えるツールをベースにして、プロジェクトを回しています。
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一番意識しているのは情報を属人化させないことです。共有するマスターフォルダのなかにプロジェクトを構成する要素をまとめたフォルダを置く「PJフォルダ」、プロジェクトの重要情報を集約する「PJシート」、メンバーが全員参加する定例会議で使用する「PJ mtg note」を作成。「三種の神器」と呼ぶこの3つを徹底的に運用しています。
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これがあると、プロジェクトの途中で新しいメンバーが入ってきても、8割方は現状を把握できます。誰もが必要な情報にいつでもアクセスできる状態を構築することが、オンラインでプロジェクトを進めるキモだと思います。
なるほど。オンラインでのミーティングについてはどうですか?
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長時間続くと疲れて有意義なミーティングにならないことも多い。だから、ミーティングの時間はディスカッションしたいこと、全員で見解を統一したい事項に絞って使うようにしています。スケジュールや見積もりなど、単なる情報共有には時間を使わない。
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同時に、G Suiteのツールに対して、全員が高いリテラシーをもっているわけではないので、どうしても情報を取りに行けない人も出てきます。そのためにも「ここだけ見ればわかる」場所として、プロジェクトマスターシートを用意しています。
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ディスカッションの場であるミーティングを重ねることで、プロジェクトが前に進んでいくという感覚がすごくあるんです。だから、ミーティングはおろそかにできないし、みんながむちゃくちゃ緊張感をもって挑んでいます。そういう意識をつくれていないと、ミーティングの優先順位が低くなってしまうかもしれませんね。
ミーティングの質をあげるために、どんな工夫をしたらいいと思いますか?
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「何を話すか」というアジェンダの設計は、案件を俯瞰できていないと難しい。ミーティングごとにミーティングマネジャーを設定できたらいいけど、リソースに余裕がないとしんどいですよね。まずは、ファシリテーター、スピーカー、ノートテイカーなどの役割を決めて、毎回カレンダーに入れておくみたいな方法もありだと思います。
オンラインでスムーズに会話を回すコツ
みなさんは、初めてオンラインで仕事を進めるようになったとき、どうやってそのやり方を身につけていったのですか?
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一緒に仕事をするクライアントがオンラインでのプロジェクト進行に慣れていたので、シャドウィングするように見よう見まねでやっていたところもあったと思います。
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僕はもともとフリーランスだったから、チーム全体がリモートで作業することには慣れていたんです。ただ、G suiteは使ったことがなかったので、ツールに慣れる必要はありましたね。
チーム全員がオンライン慣れしていないまま、リモートワークに移行するのは大変だと思いますか?
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そうですね。本当は誰か慣れている人が誘導できれば、効率がいいかもしれません。モノサスでいうと各ユニットに一人くらいは、オンラインツールのリテラシーが高い人がいると思うので、その人を中心にしてそれぞれのチームのやり方をつくっていくといいと思います。あるいは、我々がその人たちにトレーニングして、各チームに波及させると効率よくみんなに浸透するかもしれません。
取材前の打ち合わせをしたとき、みなさんがオンラインでのコミュニケーションに慣れているので、すごく話しやすいなと思いました。
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話しやすさの「間」はあると思います。オンライン会議に慣れていない人たちは、同時に発言してしまったり、「どうぞ」「どうぞ」と譲り合ううちに誰もしゃべらなくなったり。あるいは、発言する人としない人が出るということが起こりがちです。
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慣れている私たちだと、発言がかぶっても「先にどうぞ」「あ、じゃあ私が先に話しますね」と言えるし、他に人に話してほしいときは「これについて●●さんどうですか?」と振ることも自然にできているかもしれません。
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リアルな場だと、表情や雰囲気で「何か考えているんだな」とわかるけど、オンラインでは伝わりづらいから、とりあえずレスをするのも大事だと思います。「うーん、そうですね」とひとことでもいいから、コミュニケーションがはじまっていることが伝わるようにしています。
「オンラインでは雑談できない問題」の処方箋
ふだんはリモートで仕事している分、対面で会うときはたとえば「脱出ゲーム」のような強い共有体験をするチームもあると伺いました。また、わざわざお茶の時間を設定したり、雑談のためのスレッドをつくったりすることもあるそうですね。
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オンライン/オフラインに関わらず、ミーティングの最初に必ずアイスブレイクの時間をとって、「みなさん今週はどうですか?」「休日は何してた?」とか、雑談的な時間から入るようにしています。声を出さないままで人の話を聞きはじめると、しゃべらない状態のテンションが維持されてしまうので、名前だけでもいいから最初に声を出してもらうといいですね。
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また、午後3時のミーティングだと「みなさんコーヒーを入れてきましょう」と言って、みんなでコーヒーを飲みながらちょっとほぐれた状態で話しはじめることもあります。
なるほど。体験を共有することで、オンラインでありながらリアルな感じをもたせるんですね。今まで、フルオンラインでチームワークをしたことはありますか?
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去年、アメリカとインドと日本のメンバーでやるプロジェクトがあったのですが、実際に顔を合わせたのは30分くらい。あとはずっとオンラインでしたが、いい感じに関係性を築けていました。週3回くらいミーティングをして、「今、インドは何度?」「眠れてる?」とか、他愛のない雑談も自然にしていた印象があります。おかげで特に問題なくプロジェクトを終えられました。
関係性を築くことに意識的になってみる
オンラインでやりとりするなかで、意見が対立したり、険悪になったりしたときはどう対応していますか?
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社内の人が相手の場合は、私はしばらくそっとしておきます。無理にコミュニケーションをとると逆にこじれることもありますから。2〜3日経って自分の気持ちが整えば、「まあ、いいか」とコミュニケーションをはじめられるので。そっとしておけるのは、オンラインのいいところでもあります。あと、クライアントとのミーティングの場合は、ビジネスの関係性だから険悪にはならないという側面もありますね。
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顔が見えないコミュニケーション、たとえばチャット上で険悪になったら、「ちょっと話そうか」と言って解決する場合もありますね。
- クライアントとのミーティングでも、議論がヒートアップすることはわりとあります。ただ、喧嘩ではなくてあくまで議論ですし、変に譲歩せずにきちんと言いたいことを言います。それは、クライアントの会社の側に、どんな発言でも受け入れられるというカルチャーがあるのも大きいです。
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意見を通すことが目的ではなく、「一緒にプロジェクトを成功させるために議論している」という共通認識があるのが大きいと思います。もうひとつは、プロジェクトオーナー(責任者)をリスペクトするというカルチャーもある。議論が平行線のまま終わったら、あとはプロジェクトオーナーが決めたことにコミットします。
オンラインのコミュニケーションで、ほかにも工夫していることはありますか?
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海外のチームは、日本人の感覚からすると「ちょっと大げさじゃない?」っていうくらいに感謝のメッセージを送りあうんです。リンクを送っただけで「Perfect!」とか。そういうやりとりから、信頼関係が築かれていく部分はあると思います。
同じ場所で働いていたらわかるお互いのタスクの状況が、リモートワークでは見えにくくなります。どうやって伝えあっていますか?
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どうしても作業時間をまとめて確保したいとき、予定を入れて欲しくないときはカレンダーに「予定追加NG」と入れておきます。それが入っていると「この人忙しいんだな」とわかる。それでも緊急で話したいときは一声かければいいと思います。
リモートワークで「組織に所属する意味」を問い直す
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今回の件で気になるのは、全員がリモートワークになった今、組織に所属する意味をどう感じているんだろう?ということ。そこってどうなの?
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(モノサス代表の)林さんが全体会議で「モノサスはみんなの雇用を守ります」って話したのを聞いて、会社への帰属意識は上がっているんじゃないですかね。この状況下においては、もちろん会社ごと倒れていく可能性もあるけれど、少なくとも数ヶ月、1年くらいは生き延びられるという安心感はあるんじゃないかな。
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今のこの場もそうだけど、同じ組織、同じ目線で考えられる仲間がいてくれることは、精神的な部分でも強みだと思います。フリーランスだと、ひとりで「どうしよう?」って考えなければいけないから。
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僕らのチームのクライアントとは、チーム対チームでつきあえている感覚がすごくあります。今の状況でも、仕事を継続していけるように、クライアントの方で考えてくれているところがあります。一方で、僕たちもフリーランスのパートナーとプロジェクトを進めている部分も大きくあるので、協業できる仕事の機会や範囲をこの状況下で積極的に捉え直していく必要があると思っています。
リモートワークになったことが、組織である意味や会社内外との関係性を捉え返すきっかけにもなっているんですね。
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それは大きくあるだろうと思います。そういう意味でも、『ものさすサイト』は、オフィスにあるキッチンとかと同じで社内の共有部だったんだと改めて思いました。改めてこの状況下で社員をつなぐものが滲み出す場にしたい。そこからまた見えてくるものもあると思っています。
ありがとうございました!
座談会を終えて、真鍋さんからコメントを送っていただきました。
モノサスでは、この4月に大きな組織改編をおこないました。
モノサスにとって「良いチーム、良い仕事」とは何かを議論し、代表を中核に「事業部」という比較的大きな単位で中央集権的に動いてきた組織を再編成。「ユニット」という3〜7人の顔が見えやすい小さな単位で自立分散的(今風)に動けるチームを目指し、それぞれが動き始めたところです。
その中で発令された緊急事態宣言。
あの時に組織改編を行っていなかったら、どうなっていたかを知る余地はありません。今はそれぞれが顔が見えるユニットの仲間と話し合いながら、中央からの指示系統のみに依存しすぎることなくさまざまな動きが芽吹き始めています。
モノサスはコロナ禍でも相変わらずマイペースで、私たちの正直な今をお伝えすることで、少しでもみなさんと世の中の役に立てたらと思い頑張っております!