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Aug,2020
杉本 恭子
投稿者:杉本 恭子
(ライター)

2020年08月31日

〜会えない時期にはじめたこと座談会〜
リモートワーク化する会社のコミュニケーション、どうする?

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杉本 恭子
投稿者:杉本 恭子(ライター)

春先からはじまったリモートワーク。「いずれまたオフィスで働く日々が戻ってくる」と思っていたのに、夏が終わろうとする今も変わらないまま。「このままずっとリモートワークで仕事することになるのかも?」という気配のほうが濃厚になっています。仕事はオンラインで進んでいくけど、ほんとにこれでいいのかな?ーーと思うことありませんか?

そこで、春以降にモノサス社内のコミュニケーションのあり方について考え、さまざまな試みをはじめた3人のオンライン座談会を開催。社内の人は誰でも参加できるようにしたところ、多いときは26人くらいが耳を傾けてくれました。

メインスピーカーは、全体会議のファシリテーター・小野木雄さん、『週刊坂本ニュース』をはじめた坂本靖夫さん、そしてバーチャルオフィスツール『MOVIO』の企画開発を進めている伊藤洋介さん。司会進行はきみちゃんこと中嶋希実さん、そしてわたくし・杉本恭子です。

本記事では、座談会のようすをサマリーでお伝えします。

全体会議のファシリテーター・小野木さん
「この状況のなかで会社に新しい文化をつくるには?」

中嶋:今日は、それぞれの取り組みについて伺うと同時に、3人の情報交換の場になったらいいなと思っています。さっそく、今やっていることの具体的な経緯と内容から聞いてみたいです。

小野木:月に1度社員全員が集まる会議のかたちを、林さん(※林隆宏さん、モノサスの社長)の話を社員が聞くスタイルから参加型に変えることになって以来、ファシリテーターみたいな立ち位置でやらせていただいています。前半の全体会議+後半のみんなでディスカッションする全員会議の場というテンプレートができてきたタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大が始まったんです。

今は、オンラインで何ができるのか、全体会議委員のメンバー数人と話し合って試行錯誤している感じですね。特に後半の全員会議に注力して「どうしたらみんなで活性化して、コミュニケーションできるか」を考えています。

中嶋:最近のディスカッションのテーマは、どういう感じで決めているんですか?


全体会議のファシリテーターをしているデザイナーの小野木さん

小野木:ここ数ヶ月はリモートワークを起点に「どういう風に考えていたらいいか」というものが多かったですね。林さんから出た「オフィスをどう使う?」、リモートワーク生活のなかで考えたことを文章に書いてから話す「拝啓。みんなどうしてる?」、先日は「3年リモートワークが続いたら?」というテーマでグループに分かれて話しました。

やっぱり、リモートワークが続いてバラバラになっているから、前向きになれることを考えようという視点からディスカッションのテーマを考えている感じですかね。コロナってなくならないと思う。あるいは、落ち着いたとしてもこの状況のなかで、会社としてはいろんな気づきがあるし、リモートワークが主流になることによって失うものと得るものがあると思う。

まだコロナが発生して1年経っていないから、今は新しい文化をつくっていかないといけない時期だと思うので、しばらくはリモートワーク近辺の話題が多くなるんじゃないかな。

中嶋:コミュニケーションの話を、みんなと話したほうがいいって感じがあるんですね。

小野木:コロナの感染が拡大してから、全員会議の価値が見直されはじめた感覚があります。リアルで会えないからこそ、みんなで話せることに価値がちょっとずつ生まれつつある。その価値の醸成を考えた方がいいと思っていますね。

中嶋:小野木さんは、全員会議をやりながらどんなことを考えているんですか?

小野木:グループワークをするときに「ファシリテーター役がいなくて困る」っていうグループがあるという話があって。もちろん、どうすべきかを考える必要はあるのですが、ファシリテーター役を配置してグルーピングするのはちょっと違うなと思ったんです。

というのは、今後仕事をしていくうえでは、話を引っ張っていったり、空気を変えていったりする力も必要だなと思っていて。「なんでもいいからいったん言葉を発してみる場」だと考えれば、こっちですべて設計しすぎないほうがいい。「ファシリテーター役がいなくてやりにくい」ということは、それはそれでいい効果だなと思っています。もちろん、心配だし気にはなるけど!


伊藤さん

伊藤:僕はグループワークで話す内容が極めておもしろくて。言葉にしようとすることで自分がぼんやり考えていたことがまとまったり、誰かが話すのを聞いて思考のシナプスがつながるポイントが見えたりするんです。自分の思考を加速するプロセスのひとつとして、すごくありがたい場になっています。

坂本:今はみんなが集まる場って全体会議しかないから、週一くらいでやってほしいくらい。本当にありがたい場だなあと思っています。

小野木:コロナになってから、みんなに交流することへの飢えというか、会社として横でつながりたいという欲求は潜在的にあるんだと思う。これってたぶん、全体会議だけじゃなくて会社全体の話なんですよね。


『SSN』こと『週刊坂本ニュース』を創刊した坂本さん
「モノサスという集団のパワーがなくなっちゃう気がして」

中嶋:坂本さんは毎週月曜・金曜に、ChatWorkを使ってメルマガのようなものの発行を始めましたよね。

坂本:4月くらいに「ヤバイな」と思ったんですね。僕は営業だから一時的に仕事が減ったこともあったんだけど、会社としての集団のパワーがなくなっちゃう気がしたんですよ。

個で見るとオンラインで仕事をしていて問題はない。ただ、みんなでまとまったときの“文殊の知恵”みたいなものが生まれない。まるでモノサスという派遣会社に所属しているみたいになりそうで。「みんなどうしてるのかな?」って思ったんですよ。


坂本さん

同じ釜の飯は食えなくても、同じものを見ることはできるんじゃないかなと。『ものさすサイト』が毎日更新されていたときは、「みんなが見る場所」としてあったんだけど、今はそれも難しくなって。じゃあなんか発信してみよっかな、みたいな。

リモートワークしていると、1日、1週間の区切りもないから。毎週金曜日の同じくらいの時間に配信して、「あ、金曜だね」って思えるツールをつくれないかなと思っていて。金曜日は本の紹介とか土日にゆっくり見れるコンテンツ、月曜日はセミナー情報とかちょっとやる気が出るコンテンツをちょっとずつ配信しています。

杉本:坂本さんは、営業先に後でお手紙を送ったりしていたと言っていましたけど、そういう所作が身についているからマメな配信ができるんですか?

坂本:いや、まったくマメではなくて。「あの坂本さんが毎週やってる!」「まだ続いてる!」ってみんなにびっくりされています。褒められてるのかディスられてるのかわかりませんけど(笑)。

小野木:場を盛り上げる人だけど、率先して情報発信していくイメージはなかったかも。しかも続いているし……。あっ、ほめてます!ほめてますよ!(笑)

坂本:文章書くと大変なので、みんながくれたネタに「やばい!」とか「読みたい!」とか浅いコメントをしているだけだから。もともとはテキストだけで発信していたけど「アーカイブを見たい」と言ってくれる人もいるので、今はこんな感じでGoogleサイトでまとめをつくっています(画面共有↓)。


週刊坂本ニュース、頭文字をとって「SSN」。誰もが気楽に見られる共通の話題として「飯ネタ」を選んでいるそう

杉本:へえー!これ、つくるのにどのくらい時間かかりますか?

坂本:もともと自分用にメモしておいたものや、他の人に聞いたオススメの本の情報を貼り付けるだけで、あまり時間はかけないようにしていますね。山内真さんが始めた『みんなのミックステープ』という企画も1コーナーとして自由に更新してもらったり。どんどん拡張して、みんなが自由に使える落書き帳みたいな、意見交換できる社内プチメディアになればいいかなと思っています。


山内さんがつくっている「MINNNA-NO MIXTAPE」

伊藤:僕は、Chatworkとかで感情のアイコンを押す方じゃないんだけど、週刊坂本ニュースにはけっこう押しています。

坂本:みんなのためと思うとストレスだから、自分のアウトプットの場としてただやっていて。反応をモチベーションにしないようにしています。だけど全員会議のときに「すごい見てるよ」って言われたり、「やめよっかな」って言ったら「えっ、やめるんですか?」とか、言われる機会は増えていますね。

伊藤:ちょうどいい温度感の楽しさが滲み出ていて、なんの心の障壁もなく読めるインフォメーションが毎週届くのがいいなと思っていて。無理のない心のゆらぎを誘発するぐらいのちょうどいい企画が、素直に応援できる感じなのかな。


バーチャルオフィスツール『MOVIO』企画開発・伊藤さん
「リモートでもコミュニケーションをとりやすくするツール」

中嶋:伊藤さんはなぜ『MOVIO』をつくり始めたんですか?

伊藤:モノサスは、主にデータを取り扱う仕事をしている人が多いので、リモートワークになっても通常業務は案外ふつうにまわると思ったんです。世間一般のなかで見たら、スムーズに移行できたのはよかったんじゃないかって。

ただなんか「あれ、会社ってこうだったっけ?」と思って。それぞれのユニット・チームごとのコミュニケーションはあるけれど、自分の目の届く範囲でのコミュニケーションが減ったなあという実感があって。「コロナについてどうする?」っていうテーマのミーティングがあったときに、「リモートでもコミュニケーションをとりやすいバーチャルオフィスをつくったらどうか?」って提案したんですよ。

CTOの木下さんに相談したら、「あ、いけるんじゃないですかねえ」って言葉をもらえたので、まずはふたりで始めたんです。角南くんにも声をかけてエンジニアとして参加してもらって。α版としてできあがったのがこんな感じのです(画面共有↓)。

座席があって、そこに座った人の名前が出て。クリックするとすぐに動画でお話ができるっていうツール。社内に報告したら、小野木さんと滝田さん、デザイナーさん2人とエンジニアの松永くんが参加してくれて、次のバージョン開発を目指して進めているところです。

中嶋:α版までつくってみて、どんな手応えを感じているんですか?

伊藤:世の中的には『MOVIO』と似たような機能をもつ、もっと本格的なツールがどんどん出てきているので、ニーズがあるのは見えてきました。ほかのツールを利用してもいいのかな?というジレンマもあるんですけど、裏目的としては、自社プロダクトができるといいなと考えているので。これがサンプルになって、第二、第三の社内プロダクトが生まれるきかっけになったらいいな、と思っているんですね。

中嶋:以前から、自社プロダクトをつくりたいと考えていたんですか?

伊藤:漠然とは考えていたけれど具体的なアイデアがあったわけではなくて。『MOVIO』をイメージしてみたら、「つくれるかも?」と軽いステップで踏み出せた感じですね。今は、毎週メンバーが自分の時間を割いて集まってくれていて、次のデザインも動きはじめています。そのなかで、小野木さんも独自につくりたいものが出てきたみたいです。

小野木:僕は単純な掲示板みたいなものをつくりたくて。社外にはオープンにできない案件の納品報告を、気軽に投稿できるアーカイブ的なプラットフォーム。「こんなコーディングしました」「イラスト描きました」とか、「がんばったからみてよ」と言えるツールをつくれたらいいなと思っています。

社内ではChatWorkもSlackも使っているし、「Googleスライドで制作実績をアップしていこう」という話もあるんですけど、“IT企業あるある”で情報が散らばっていて。どこかひとつに集約して、「ここを見れば、会社で起きていることがとりあえずなんでもわかるし気軽に投稿もできる」みたいなものを、社内ツールとしてつくりたいと思っていたんです。


会社ってなんだろう?モノサスってなんだろう?

杉本:3人のお話を聞いていて、自分の仕事が回っていたらいいというわけでもなく、チームやプロジェクトがうまくいけばいいというわけでもなく、「会社として」という視点で動いているところが興味深いなと思いました。みなさんにとっての会社、あるいはモノサスってどういう場なんですか?

小野木:会社にいる理由って、「スキルが身につくから」とか「お金がもらえるから」とか、それぞれだと思うんですよ。でも、「誰と仕事したいか」も大事だと思うんです。

小野木:会社って1対1のリスペクトの連鎖でしかないし、小さいつながりを大事にしたほうがいいと思う。「この人はこんな考え方をしているんだ」「俺も取り入れてがんばってみようかな」と思えるだけでリスペクトって生まれるから。今はコロナが邪魔をしているけど、モノサスという会社が、リスペクトが行き来しやすい母体であればいいと思っています。

坂本:僕はコロナの状況になってから、「会社ってなんだろう?」って初めて考えたんですね。もともと、モノサスは花見もあれば社員旅行もあって、コミュニケーションが過剰な会社だから「会社を盛り上げよう」って気持ちは正直なかったんです。だって、あまりにも自然にそこにあったから。

ところがコロナ以降は、急に横のつながりがなくなりすぎちゃって、ほんとにパワーが落ちちゃう。リモートワークだけになると、モノサスだけじゃなくてどこの会社もたぶんそうなっちゃうと思う。

こないだの全員会議でも話題になったけど、これまでのコミュニケーションの財産のなかで、リモートワークがやれている感覚がある。それがあるから、「この人はこういうことを考えているんだな」「今のニュアンスはこういうことだな」ってわかるけど、本当に何もしないとどんどん関係性が希薄になって、「会社に登録している知らない人」って感じなったらヤバいと思って、『週刊坂本ニュース』を始めたんだと思う。

中嶋:関係性が希薄になると「ヤバい」って感覚があるんですね。

坂本:僕は営業だから、一番最初に「ヤバい」を受けたんですよね、きっと。こんなときだから営業をがんばらなきゃいけないんだけど、こんなときだからこそ“元気玉”みたいにみんなのパワーを集めないと本当に一緒にいる意味がないっていうか。どんなにすごい人でも、一人で考えられることって限られているなあと思うんです。

縁があって今、モノサスって会社にいるのに、物理的に一緒にいなくなってそれぞれ勝手にやり出したら、「モノサス」ってことの意味がなくなっちゃう。

杉本:わざわざ言葉にしなくても、「モノサス」という集団のパワーを感じていたということですね。

坂本:そうですね。自然と連帯感や一体感があって、雑談から何か新しいことが生まれていた。それが消えていっちゃうみたいな感じだったのかな。

伊藤:極論すると、会社って心地よく働ける場所であればいいのかなと思っています。なんだろう。 心地よく働き続けるために今の状況って障害だよね?って危惧する人が多いのは、それだけこの会社で働きたい人がいるってことなんだろうな。コロナの状況に対する大なり小なりのカウンター策を試行錯誤していけば、「こういう人たちが集まった集団がモノサスです」ということが言えるようになるのかもしれない。

いつか林さんが「会社というのは、仕事をするうえでつくられたただの概念だ」と言ってたけど、概念は実際の状況や環境には勝てない気がしていて。もしかしたら、会社っていう言葉自体にもとらわれなくてもいいのかもしれない。この状況にあわせて会社であれフリーランスの集合体であれ、モノサスという集団が残ってみんなで働いていけるとよいのかな。

杉本:みなさんが「コロナが邪魔をする」「コロナが障害になる」という言葉を使っていましたが、仕事や生活に対する影響以上に、コミュニケーションを阻害する要因として語っていたことが印象深かったです。それに対して、モノサスという集団として必要なコミュニケーションを新しく生み出そうとしているのかな、と思いました。

今日は長時間にわたりありがとうございました!

この投稿を書いた人

杉本 恭子

杉本 恭子(すぎもと きょうこ)ライター

フリーランスのライター。2016年秋より「雛形」にて、神山に移り住んだ女性たちにインタビューをする「かみやまの娘たち」を連載中。

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