2021年02月01日
時間と場所の制約のない働き方で、欲しかったのは「チームの力」だった。
営業 坂本靖夫
こんにちは。ものさすサイトの裏方でお手伝いをしている、京都在住のライター・杉本です。
以前、きみちゃんこと中嶋希実さんが連載していた「自由と責任 みんなの制度と働き方実験室」のバトンを受け継いで社員のみなさんへのインタビューをはじめます。
モノサスがフルフレックスを導入したのは2017年1月。
「いつ働くか」を自分たちで決められるようになり、それぞれに試行錯誤をしながら働くリズムをつくってきました。そして今年、新型コロナウイルスの感染拡大以降、フルリモートが導入されて「どこで働くか」もまた各自で決めることになりました。
働く時間と場所が自由になった今、みんなはどんなふうに自律したワークスタイルをつくっているんだろう? そして、個として働く時間が多くなるなか「会社」という場、あるいは組織に対する意識はどう変化しているんだろう? 今回は、マーケティング部で営業の仕事をしている坂本靖夫さんにお話を伺いました。
習慣の力を上手に使うなら、
働く時間帯は固定した方がいい
杉本:4年前にフルフレックスが導入されて以降、働き方にどんな変化がありましたか?
坂本:当時のチームで話し合って、基本は10時から19時に固定していました。「今日は何時に会社に行こう?」と考えることにエネルギーを使うのはもったいないし、習慣の力はうまく使ったほうがいいと思ったんです。実は「よし働こう」ってスイッチを入れるのは、すごく大変だと思うんですよね。ある程度は縛られたほうが、ストレスが少ないんじゃないかな。
それに、営業職の場合はもともとそんなに勤務時間の概念ってなかったんですね。納期やコンペの前は、なんとしてもやらなければいけないし、逆にぱかっと予定が空く日もある。こっそり帰るか、「フルフレックスだから」と大手を振って退社するかの違いで、行動的にはあまり変わらなかったかもしれないです。
杉本:営業職の場合は、クライアントが動いている時間帯に合わせた方がいいという考え方もありましたか。
坂本:そうですね。お客さんが稼働している時間に合わせて働いたたほうが、チャンスが広がるような気がしていて。逆に、制作の人たちは「電話が鳴らない夜中に仕事するほうが集中できる」ということもあったんじゃないかと思います。
フレックスよりリモートの方が
断然インパクトは大きかった
杉本:そして、新型コロナウイルスの感染拡大以降、モノサスではフルリモートが導入されていますね。
坂本:フルリモートになったことは、フルフレックスよりずっとインパクトが大きかったなと思います。移動しない分時間がすごく増えたし、家族と昼食を一緒に食べるという今まで考えられなかった休憩もできるようになりました。
杉本:いま、坂本さんは主にどこで仕事していますか。
坂本:自宅の書斎です。周囲の雑音に悩まされずに仕事できるスペースがあったのはすごく助かりました。オンラインの打ち合わせが多いので、有料のノイズキャンセリングアプリを入れたり、少しお金をかけて自宅の環境を整えました。
杉本:リモートでも、仕事は朝10時スタート?
坂本:朝、出かける用意をしなくていいから早くなりましたね。だいたい8時〜9時から仕事をはじめて、夜は19時くらいに家族でごはんを食べています。前は、会社から帰ってからまた仕事するとなると改めてスイッチを入れ直す感じがあったけど、家に仕事場があるとナチュラルに仕事のスイッチが入る。それはメリットかもしれません。
杉本:仕事とプライベートが分けられないことに対するしんどさはないですか。
坂本:たぶん、人によると思うんです。会社ではオン、家ではオフが合う人もいる。でも、営業の仕事をしていると、お客さんのところから直帰する自由はあるけれど、家に帰ってからもやらなきゃいけない仕事はあるし、何かあればお客さんから電話もある。その葛藤や調整はもっと前の段階で終わっているから、家で仕事をすることにはあまりストレスはないです。
真面目打法では“ホームラン”を打てない
杉本:今年はモノサスだけがリモートになったわけではなく、世の中の多くが一斉にリモートに移行したことによる変化もまた大きかったのかなと思います。
坂本:相談エリアが全国に広がったのは良かったし、オンラインのコンペで決まった案件もあって、「今までなかったような仕事もできるのかな?」という手応えはありました。そのときは事前にチームでリハーサルをしてプレゼンに臨んで、面白かったしノウハウも溜まりましたね。リモートワークの悪い面は、ちょっとした雑談がしにくいことですよね。言っても言わなくてもいいけど、ちょっと言いたいことをパッと言えないのは不便でしたね。
良くも悪くも変化があり過ぎて。みんなも悩んだと思うけど、自分も「営業としてこの状況をどう生かすか」ということをずっと悩んでいました。
杉本:ちょっとした雑談ができないことは、仕事にどう影響したんですか。
坂本:やっぱり、営業が仕事を取るにはみんなの力が必要で。会社にいたら「こういうことできる?」と話しかけて、プランナーやデザイナーと相談しながら「ここに勝負を賭けましょう」とか、「うちはデザインを持って行ってコンペに勝ちましょう」と自然と連携ができる。でも、リモートで仕事しているとついひとりで考えてしまうんですよ。
今年は、問い合わせの数が多かったからその対応に追われて、結果的に全部同じように捌いてしまいました。去年までは、野球で言うなら「こっちは見逃しでもいいから、ここはホームランを狙おう」という攻撃の仕方だったんですよ。でも、今年はとりあえず全部バントで返した結果、点に繋がらなかったというか。業務は多いのに受注につながらなかったのはすごく辛かったですね。
「SSN(週刊坂本ニュース)」の発信もしていたけど、どうしてもチームになれなかったことが、今年の反省としてはすごくあります。ひとりで真面目打法をしちゃうとホームランが打てない。やっと悪いピークは抜けたけど、今年一番苦しんでいたのはそこかなと思います。
予算に対する成果物の期待値を
コントロールするのが営業の仕事
杉本:以前、坂本さんの営業スタイルを聞いたとき、すごくクリエイティブだなと思ったんです。たとえば、お客さんに心を開いてもらう服装を体感値で確めたり、初回の打ち合わせで「お!」と言わせる作戦を立てて攻略したり。チームを大切にする感覚も強いですよね。坂本さんは、営業の仕事をどんな風に捉えているんですか?
坂本:なんか、営業の仕事が好きなんですよ。「ここまでできます」と見せながら、ほどよい期待値で仕事を受注していくのが面白いです。服装の話は自分に対する期待値コントロールですが、成果物に対する期待値コントロールみたいなものもあって。安くすれば受注できるけど、高く売りすぎるとクレームになりやすいんですよ。
また、CF(コーディング・ファクトリー)の営業をしていたときは、みんなが一所懸命に頑張っているなかで、単価を上げてみんなの残業を減らし、生産性を上げられるのは営業しかいないんじゃないかと思っていました。お客さんに気持ちよく発注してもらい、みんなには気持ちよく仕事してもらえる境界線を見定めて「ここで落としていく」というのが営業の仕事だと思います。
杉本:お金に関するコミュニケーションは、会社間でも個人間でもちょっと難しいなと思います。
坂本:「どうすれば不快感なくお客さんから予算を聞けるか」はずっと考えていますね。でも、たとえばコンペの予算は、お互いのために絶対聞いたほうがいい。以前「予算は自由。いいものを提案してほしい」と言われていたのに、「カローラが欲しかったのにレクサスの提案がきた」と評価されて落ちたことがありました。予算がわからないと提案の質がブレるんですね。
杉本:なるほど。お客さんが求めているものと、モノサスが提供できるものをマッチングしながら面白い仕事をつくるのが坂本さんの仕事なんですね。他にはどんな工夫をしているんですか。
坂本:担当者にとってメリットになることを考えることかな。CFのお客さんで制作会社のディレクターさんに「ここのCMS(Contents Management System)ってどういう構成にしたらいいですかね」と相談されたら、営業だけどCMSの仕様書を出すこともありました。そうすると、その人からは確実に受注できるようになります。
あと、大きな会社に決めて失敗したら「しょうがない」と思うだろうけど、モノサスみたいに小さい会社に発注して失敗したら「あんな名もない会社にしたからだ」と担当者が言われてしまう。仕事のゴールはあくまでWebで成果が出ることだけど、最終的に発注してくれた担当者が昇進するところまでいくと、すごくやりがいがあるなと思うんですよね。
発想を変えれば仕事は面白くなる
という感覚が根っこにある
杉本:会社の設定する目標とは別に、坂本さん個人のなかに目標があるんですね。坂本さんと話していると「やらされ感」みたいなものが匂わないなと思います。自分の仕事は自分で決めてやるぞ、みたいな感じがある。
坂本:うーん。ひとつには、やらされ仕事ってつまんないし、楽しくないと思うんですよね。昔、今モノサスの副社長になった永井さんの会社にいたとき、周りに変な人がいっぱいいたんです。その一人が社長の林さんで、急に夜中に電話してきて「これ、明日までにいける?」とか言うんですよ。「いけるか!」みたいな(笑)。「がんばらなくていいから、仕上げて?」って言ってくる人たちのなかで鍛えられて、サボる発想もすごく大事だということも学びましたしね。
たとえば、「明日仕上げてほしい」という要望にしても、「とにかく明日は仮でいいからモノが上がっていることが大事」ということがあります。その人のニーズを満たす秘孔を突く方法は必ずある。「できません」と断るのは簡単だけど、アイデア次第で裏技はある。うまくいって成果が生まれるのは楽しい。「発想を変えると仕事って面白いものだ」という感覚が、根っこにあるのかもしれません。どうせ仕事をするならみんなで楽しみたいなと思うんですよね。
杉本:そういうチームで仕事をする楽しさが好きだからこそ、フルリモートになったときに社内のコミュニケーションをつくる「週刊坂本ニュース(SSN)」の配信を始めたりしたのかなと思います。坂本さんは、モノサスのどういうところが好きで、この会社に居ることを選んでいるんですか?
坂本:なんでなんですかね。やっぱり、いろんなことを許容してくれるというか。良く言えば自由、悪く言えば何も指示がない。指示待ちするタイプの人には苦痛かもしれないですね。それが、自分にとっては合っているということでしょうね。
「こういう話、誰ともしないからなー」と言いながら、モノサスについて、営業の仕事について語ってくれた坂本さん。目の前の成果を上げることだけではなく、一緒に働く仲間のこと、仕事を発注してくれるお客さんのことまで考えながら、仕事を楽しんでいるところが素敵だなと思います。改めて、言葉にして話してくださったことに感謝です!
次はコーディングファクトリー部の児嶋 いずみさんにお話を伺います。どうぞお楽しみに!