2023年06月01日
京都生活3年目。家族との暮らしに合わせて働き方を変えていく。コーダー・菅野慎
こんにちは。京都で暮らしているライターの杉本です。
新緑にさわやかな風が吹く初夏は過ごしやすく、観光客も多くないので、京都の住民が一番心やすらぐ季節なのです。
今回は、周防大島オフィスで働く田中優香さんと一緒に、2020年から京都で暮らしはじめた菅野慎さんを訪ねました。
事前に、菅野さんと一緒に仕事をする機会の多いメンバーから「聞いてみたいこと」を募集*。その質問を織り交ぜながら、インタビューすることにしました。さて、菅野さんは四方八方からくる質問に、どんなふうに答えたのでしょう? 家族との暮らしと仕事のバランスの取り方は? 京都生活3年目に入った、菅野さんの今をお伝えしたいと思います。
(* メンバーから菅野さんへの質問は田中優香さんが集めてくれました!)
ひたすら先輩を見て学んだ新人時代
杉本 あらためて、モノサスに入社したきっかけを聞いてみたいです。
菅野 2010年に、超大規模案件アルバイトとして入りました。僕以外にも5〜6人の短期アルバイトと一緒に、代々木オフィスの近くの古いアパートに詰め込まれて「俺、ここで働くんだ……」みたいな(笑)。すごいところに入ったなぁという印象でしたね。
杉本 なんでまたその仕事に応募したんですか?
菅野 前職は営業職だったのですが、人とのコミュニケーションは得意じゃないし、黙々と自分で進められる仕事がいいのかなと思って、ハローワークで紹介されたWeb系の職業訓練を受けたんです。その後、採用系の媒体で「未経験者OK」というモノサスからの募集を見かけて、あまり調べもせずにとりあえず受けてみました。最初は、伊藤さんをはじめ先輩方が隣の席で手取り足取りフォローしてくれたので、すごく忙しかったけど淡々と仕事していた感じです。
杉本 最初の頃は、先輩たちのいいと思うところを徹底的に学んでおられたそうですね。
菅野 そうですね、最初の頃は見て学ぶ時間が多かったです。先輩の隣に椅子を持ってきて、キーボードの打ち方から仕事の進め方までずっと見ていて。一日中見ていて終わる日もありました。それはすごくやってよかったなと思っています。
杉本 今も、周りのメンバーを見て学ぼうとしていますか?
菅野 モノサスの人たちはみんなすげぇな!と思いながら仕事しています。高島さんはすごい熱心に勉強していてえらいなぁと思うし、山本くんはエネルギーがすごいある。僕はすぐへこたれるけど、彼はへこたれないしメンタル強いなぁと思います。原田さんはすごく技術力が高くていろんなことを知っているし、丸山くんは教育熱心で人を育てるのがうまい。角南さんはなんでもできてすごいし、田中さんはモノサスタイランドのコーダーさんを動かしながら、何件も同時にディレクションしていてすごい。自分にはできないなと思っています。ほんと、自分が一番平凡だな、と。
杉本 菅野さんのことを「柔軟な人」と言っている人もいて。今の話を聞いていて、柔軟さって人の良さをちゃんと認めて、尊敬できることなんだろうなと思いました。
菅野 みんなすごいなって思っているけど、ふだんは言わないです。僕もすごいと思われたいですからね(笑)。
「一人前になった」と思えたのはいつ?
杉本 龍田さんから質問です。「自分も一人前になったな、これでプロとしてやっていけそう、と実感した瞬間や場面はどんなときやった?」。
菅野 えーー?思ったことないんですけど、みんな、自分はプロだなと思うことってあるんですか? いや、プロだなとは思うんですけど。
杉本 一人前になったな、と思ったのは?
菅野 ひとりで仕事をできるようになってからですかね。僕、ひとりで仕事をやって、ひとりで終わらせてるイメージないですか?
田中 正直、ちょっとあるかもしれないです。
菅野 誰にも知られずに、案件をひとりでスタートからゴールまで終わらせられるようになったとき、独り立ちできたなと思ったかな。けっこう僕、放置されているんですけど。放置されたときが一人前になったときかな、もうかなり前ですけど。
杉本 モノサスのみなさんは、「菅野さんの仕事は完璧」「手を抜かない」「シンプルで無駄のないコーディング」だと。
菅野 妙にそういうイメージがついちゃって重たいんですけど(笑)。僕からしたら完璧じゃないし、案件が終わってからも「こうしたらよかったかな」と反省するし。公開されたサイトも怖いから見たくないほどです。途中で修正点に気づくことはあるけど、納品までには黙って自分で解決しているから完璧に見えているのかも。それこそ放置されているから、みんなよくわかっていないんじゃないかな。
杉本 奥山さんからも「誰よりも完璧に案件を抜かりなくこなし、モノサスで一番信頼できる人なので一緒に仕事できて感謝しかないです」とコメントいただいています。
菅野 ありがたい、こちらこそです。
すべての案件は“ダシ”を効かせた「オーダーメイド」
杉本 奥山さんから質問です。「ユニットリーダー(UL)になってみて感じた変化」は?
菅野 もともと所属していたユニットが解散したとき、自由に働きたいなと思っていたので、当時どのユニットにも所属していなかった山本くんを誘ってつくりました。今、2年目になるけど、変化かぁ……。なし崩し的にULになったからあまり意気込みもないしなぁ。どうしても遠隔でいると、たとえば「山本くん、体調悪そうだな」とかわからないし、面倒を見切れないのにULになっていいのかなと思ったりします。
杉本 菅野さんは「やり切れるかどうか」をすごく大事にしているんですね。
菅野 そうです。引き受けたら僕はすごくちゃんとやるので、責任を持てないことはやりたくないところがあります。
杉本 自分で「やり切れた」と思えるラインの設定は、どうやって決めているのですか?
菅野 毎案件オーダーメイドだと思っているので、臨機応変にやっています。いつも同じものをつくるわけでもないし、同じやり方をするわけでもない。お客さんや求められることに合わせて自分の成果物を変えています。
杉本 松原さんからの質問です。「自分を調味料にたとえると何だと思いますか?」
菅野 調味料!?なんでその質問??えーっ、めっちゃ難しいな。調味料……、うーーーん。『ほんだし』にしておこうかな。入れておけば味が決まる(笑)。時短にもなるし、生産性が上がる!
杉本 ちなみに、「直球で聞くより、潜在的な意識や意外なこだわりが見えてくるかも?」と思われたそうです。
「時間と場所」から「納期と予算」へ
杉本 フルフレックス制度が導入されたときは、7時半始業で作業時間を午前午後4時間ずつで配分されたそうですね。京都ではどんなふうに働いていますか。
菅野 今は子どもを保育園に送った後、9時始業にしています。僕は午前中の調子が一番よくて、どんどんパフォーマンスが落ちていくんです。ULになって勤務時間は関係なくなっちゃったしフリーにやっています。スケジュールと自分の予算目標を達成するために、日々の働く時間を決めています。
杉本 ここで久野さんからの質問です。「オフィス拠点のない場所で仕事をするってどんな感じですか?」
菅野 自分との戦いになってきますね。そういう意味では、代々木勤務の頃の方が自分をコントロールしやすかったけど、今は今でなんとかうまくやれているし、まあいいかと思っています。
今の働き方は、家族と暮らす生活に合っているんです。家にずっといるから、出産のときも育休を取っていなくて。いつか終わってしまう育休より、働きながらおむつの交換をして家事を手伝えるほうが、家族にとっては良かったのかなと思います。
杉本 家で仕事をしていて、仕事はひとりで完結できているとなると、フリーランスとの違いがほとんどない。それでもモノサスに所属するのはどうしてですか。
菅野 あまりフリーランスになるメリットが思いつかないんです。むしろ、収入は不安定になるだろうし、本当の本当にフォローしてくれる人もいなくなる。働き方はフリーで収入は安定する会社員であることに魅力を感じています。いいとこ取りじゃないですか。
杉本 なるほど。ひとりで仕事することに関連して、畑峯さんからの質問を聞いてみたいと思います。「菅野さんって周りから言われてとかではなく、自分から情報を取りに行っているイメージがある。どうやって情報収集しているの?」
菅野 ふと気になったことを調べる、それだけかもしれない。「あれ、そういえばどうだったかな」と思ってトイレの中で調べたり、案件が忙しいときも急に気になっちゃったら調べたりとか。日常的に気になった流れのなかで調べて、自分のなかにストックしておく感じです。
杉本 もうひとつ畑峯さんからです。「仕事のモチベーションって何?」
菅野 仕事をしていればいつか休みがくるってことです(笑)。休みが楽しみで仕事をしていますね。
生活に合わせて働く今のスタイルがいい
杉本 馬場さんから「将来的にどうなっていたいなどありますか?(会社的にも、家族的にも、菅野さん自身的にも)」と質問をいただいています。
菅野 先のことは、そのときの自分に任せようと思って生きています。今は、今のことをやろうかなと思っていて。あまり、将来どうなりたいとか考えるタイプではないです。
杉本 もう少し短いスパンで、1年、5年後ならどうでしょう?
菅野 今の働き方は、すごく時間を自由に使えるのでふつうのお父さんより子供といっしょに過ごせます。そういった意味で、今のところはこのスタイルを継続したいと思っています。
杉本 今後の働き方は、子どもの成長や家族の変化とセットになっていきそうですね。
菅野 そうですね。一般的には、仕事に合わせて生活を変えないといけないけど、僕の今のスタイルは生活に仕事を合わせられる。たとえば、もし子どもが学校でいじめられたらすぐに引っ越せます。それがすごくいいなと思っているんです。
ふつうは京都に行くなら、会社をやめて仕事を探すかフリーランスになるかですよね。でも、モノサスは快く送り出してくれました。こんな恵まれた働き方をできることに感謝しているし、この会社に入って良かったなと思っています。モノサスは、責任を果たしていれば、ある程度は自由にさせてくれますから。
杉本 さきほど言われていた、スケジュールと予算目標を守ることは「責任」の部分ですね。
菅野 そうです。お客さんに対してはスケジュールを守って、求められた成果物をきちんと納品しなければいけない。雇用してくれる会社に対してはちゃんと利益を出さないといけない。その責任はしっかり果たそうと思っています。
田中 家族ができたことによって、菅野さん自身の変化もありましたか?
菅野 人生が楽しくなりました。モノサスの人たちは、いろんな趣味を持っているじゃないですか。河原崎さんはドローン撮影ができるし、馬場さんはマリオネットを操れる。僕にはそういうものがなかったけど、家族ができて一緒に遊んでいるのが楽しいなあと思う。その時間が、幸せだなあと思います。
インタビューの待ち合わせは大徳寺の総門。少し遅れて到着すると、夏美さんも一緒に待っていてくれて。いつも、お子さんを保育園に送っていく道を散策したのち、今宮神社の境内でインタビュー。なんだか、ゆるりといい雰囲気でお話を聞かせてもらいました。
人生のなかには、仕事に夢中になりたい時期もあれば、家族や地域、仕事以外の活動に時間をかけたい時期もあります。そんなときに、会社との間で「どう責任を果たすのか」を握りあって働き方の自由度を上げられるなら、いろんなスタイルがあり得るのだなと思います。これから、菅野さん、そして他のみなさんの働き方はどう変わっていくのか。引き続き、「自由と責任」のシリーズで、お話を聞いていきたいと思います。