2023年07月06日
元ひきこもりデザイナーの、神山サテライトオフィス訪問レポート。
みなさんこんにちは!
ものさすサイト事務局の滝田です。
前回、周防大島のサテライトオフィスの様子と島の暮らしをお伝えし、記事を読んで実際に周防大島に行ったメンバーの話を聞くこともできました。
そこで今回の「元ひきこもりデザイナーのサテライトオフィス訪問記」は、2022年9月に神山のサテライトオフィスを訪ねました。事前に神山のメンバーに教えてもらった「おすすめスポット」を探検。サテライトオフィスのようすとあわせてお届けしたいと思います。
まずは雨乞いの滝へ
神山町に到着した土曜日、さっそくオフィスから徒歩で「雨乞の滝」へ。今回の旅もご一緒してくれたライターの杉本さんの「歩いていけるよ」という言葉を頼りに宿泊棟から向かいます。(しかし実は徒歩だとかなり距離があります。滝の登り口までは、できれば車があった方がいいかもしれません◎)
途中いくつも滝が流れているのを横目に、どんどん登って行きます。ここで、「滝って言ってたけどちょっとした山登りじゃん」と気づかされます……。
はじめに目にした大きめの滝は「うぐいす滝」。いっしょに登ってくれたライターの杉本さん。
滝行きを甘く見て突入し、数分で写真でも伝わるくらいバテてよれよれのわたしです。
途中で飲んだ、岩肌を流れてくる天然水。本物の「自然の恵み」は、びっくりするくらい甘味があっておいしかったです。
目的地の「雨乞の滝」。滝壺までまで行くと、想像以上の水の勢いと、それに反して澄み切った水面が広がり、気分が上がります。個人的にはに本格的な山のぼりだと感じましたが、運動不足の私でも登り切ることができました。
神山に来て、自然とふれ合いたいなと思っている方にはぜひ足を運んでもらえたら。
アートが溶け込んだ山道
次に訪れたのは「大粟山」。神山オフィスメンバーの栗原さんからもおすすめされた場所です。
山道を車で走ると、突如現れたオブジェクト。足元に作品名があります。
この作品たち、神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)に参加したアーティストが制作したもの。KAIRを主催するNPO法人グリーンバレーが、山を整備する代わりに、作品を展示させてもらうことになったそうです。
大粟山では、今もグリーンバレーのみなさんを中心にボランティアによる森づくりが行われているそうです。山のなかにアート作品が点在しており、なかには足元を見ていないと見逃してしまいそうな小さな作品もありました。
大粟山頂上の「天辺丸」。木々の間から神山町を見わたせます。
人呼んで“神山のお父さん”
「大粟山」を案内してくれた“神山のお父さん”と呼ばれる岩丸さんのお宅で夕飯をいただきました。岩丸さんは、神山町の地域おこしに尽力されており、神山塾生の滞在先を提供されていたりと、訪れる人を神山へとつなげてくれる方のおひとりです。
「怜子さんは、運がいいね」とその日に届けてもらったというモズク蟹をご馳走してくれました。
ここには毎晩のように「岩丸娘」たちが集まるそうです。
みんなでつくった料理を囲んで、いま自分がやっていること、これからやりたいこと、いま悩んでいること……。
真剣に「自分ごと」を話し合う彼女たちに混ぜてもらっているうちに、取材として訪れ、アンテナを全て外側へ向けていたつもりが、だんだんと自分自身へと矢印が向いているように感じる、そんな感覚を覚えた楽しい夜でした。
お父さんが寝た後も、岩丸娘たちの語らいはまだまだ続きます。
とえっくらじおの裏側
われわれものさすメンバーもお邪魔したことのある、自然スクール「トエック」のラジオ収録にも足を運ばせていただきました。神山オフィスメンバーの本橋さんや香川さんが、お昼過ぎから機材を持ち込んで収録準備をしています。
夕暮れ時、いよいよ収録開始。収録現場を後ろから見ると、飛行機のコックピットを眺めているような機材の数々がかっこいいです。
日が暮れてからは、ライトを焚いて第二部です。ライターの杉本さんも飛び入り参加して、収録は進んで行きます。過去の配信は、こちらからお聞きいただくことができます。
神山オフィスへ
宿泊している寮を出ると、目の前に田んぼが広がっています。
稲の重みでだんだんと茎がしなり出す時期でした。まだ山の上に霧がかかっている時間の空気が気持ちいいです。
長屋の端っこ。ものさすTシャツの掛かっているガラス張りのところが、神山オフィスです。
普段このオフィスで作業しているのは、栗原さん・香川さん・浅田さんの3人です。
ガラス戸のオフィスということもあり、毎日神山の人や神山を訪れた人がオフィスの前で立ち止まります。
たまたま通りかかった小さな女の子が話しかけてきて戸を開けて対応していたり、近所の人や視察の人が訪ねてくるたびに、オフィスメンバーが3人とも入り口に集まって行って、町の人と談笑しています。
はじめは「ガラス戸なんてオシャだなー」とか「道ゆく人が気になりすぎることないのかなー」なんて思いながら見ていたけど、「そのためなんですね」と納得。
「ストレスにならないの?」と栗原さんに聞いてみると、リモートで打合せ中(外からは打合せ中なのかはわからない)とかに入ってこられるとさすがに困るけど、全然大丈夫と。
ある日の夕方、「空がすごいですよ!」と、オフィスを出ていく浅田さん。「こんな色になっているの見たことないんですよ」と鮮やかな赤色に染まった空を見上げてカメラを構えています。
ちょうど買い出しに出ていた香川さんも、帰ってきて一言「空がすごい色だったんですよ!」と。
そういえば、移動中の車の中で、雨模様の川を見て栗原さんがこんなことをぽつり。
「ここ数年台風が来なかったけど、台風が来ると川の苔が流されて新しい苔が生える。そういう年の、新しい苔を食べて育った鮎の方がおいしいんだよ」と説明してくれました。
こういうニュースで盛り上がる神山メンバーの関係性や雰囲気のよさを、居心地がよくてとてもうらやましく感じました。
神山という町の色をとても感じる話を、町の人、町に訪れた人、オフィスメンバー、杉本さんからたくさん聞くことのできた今回のサテライトオフィス。
滞在中に受けたグリーンバレーの神山の町おこしの歴史の話もふくめ、とても一週間では掴み切ることも、一記事の中の書き切ることもできないくらいのお話が聞けました。
わたしが感じた神山は、町も人も料理もアート作品も、自然と上手に調和しているように見えました。オフィスメンバーの本橋さんが住む大埜地(おのじ)の集合住宅には、バイオネストや解体ガラを利用した石垣が。ここでも自然とともに暮らしていく知恵に触れることができました。
宿泊棟の近くには、コンビニもあって生活力の低いわたしでも生活していけますし、かまパンもお肉屋さんもラーメン屋さんもあって、滞在中の食べるものには困りませんでした。
神山で「働く・暮らす」に一週間触れてみて、短い期間でしたが生活や神山の人との出会いの中に、とても居心地がよさを感じました。
またオフィスの中で、岩丸家の食卓の中で、さまざまな場所でそれぞれの人の生き方を感じるお話が垣間見えるタイミングで、「自分はどうなんだろう」「もっとここにいたら見えてくるものがあるかも」と自身を省みる瞬間は、とてもよい体験になりました。
次は一ヶ月くらい、神山の町の暮らしを感じるために、今回繋いでもらった神山との縁を大切にするために、また足を運びたいと思います。
みなさんも、神山サテライトオフィスへ行ってみると、思わぬ体験があるかもしれません!ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。