制作会社を決める時に、コンペを開催する企業は多いです。しかし、従来型のコンペに課題を感じて、コンペや提案の内容を見直す企業が増えてきています。近年増えつつある新たな形式に触れながら、コンペが持つ利点と欠点をご紹介します。
従来のコンペ
コンペとは、RFPを制作会社に展開し、数社から具体的な提案(プレゼン)を受け、その中から制作会社を決める選考形式です。具体的な提案をもとに制作会社を選ぶことができるため、多くの会社でこの形式が採用されてきました。しかし、この形式には以下のような課題があります。
- 短時間で提案をまとめざるを得ない
- 企業や商品への理解がしきれない状況で、提案をまとめるざるを得ない
- 設計のプロセスと、そこでの議論がないままリニューアルプロジェクトを進めることになる
RFPが展開されてから提案(プレゼン)までの期間は、一般的に2~3週間に設定されていることが多いです。Webサイトの目的の定義やターゲットの選定といった要件定義の重要度が高まる中で、このような短期間で、かつ議論なしに企画・設計をまとめることは非常に難しいと言えます。専門的な商材を扱うBtoB企業であればなおさらです。
「そうは言っても、実際に制作会社から提案がでてくる」と思われるかもしれません。それは、少々粗いところを残しながらも、急いで何とか形にしているというのが正直なところです。包み隠さずにお伝えすると「良いサイトにしよう」よりも「受注しよう」という意識が強く働いている傾向にあるかと思います。
従来型コンペの具体的な弊害
具体的な提案内容として、これまではデザイン案やサイト構造案、コンテンツ案も提示していました。先にお伝えした通り、これは得策とは言えません。デザイン案を例にしてお話しします。
通常、デザインは以下の点を考慮して作成を行います。
- サイトの目的やターゲットの理解
- 企業や製品・サービスの理解
- サイトコンセプトの構築
- サイト構造設計
- 情報設計
- UI設計
これらのプロセスを経て、それをビジュアルとして表現するのが、デザインです。また、このプロセスは、制作会社が一方的に考えることではありません。相互の考えや情報を出し合い、議論の中でクオリティを高めていくものです。デザインは、企画・設計という工程の中でも後半にやるべきことなのです。
「とりあえず、デザインだけ先に見たい」
と言われるケースもあるのですが、"とりあえず"で、できることではないのです。従来型のコンペで提出されるデザインは、「本来あるべきプロセスをショートカットして、短時間に、少ない情報の中でつくられたもの」として、見るべきです。
新たな内容のコンペ
時間と情報量が限られている提案段階では、デザイン案やサイト構造案を求めない、提出しないケースが、発注企業と制作会社ともに見られ始めました。弊社もそのうちの1社です。
私たちは、実際にプロジェクトが始動した後に、デザインの方向性やコンテンツの検討、CMSの仕様を考えます。サイトにかける想いや考え、情報を出し合い、議論を重ねていくことで、より実態の伴ったデザインやコンテンツが作成できると考えているからです。
提案段階ではデザイン案やサイト構造案よりも、サイトの目的を達成するためにクリアすべき重要議題や、プロジェクトをどのように進めていくか、というリニューアルプロジェクトの本質的な部分を提案内容に盛り込んだ方が良いと感じています。「こんなサイトにしましょう」ではなく「こんなプロジェクトにしましょう」という考えを持つ制作会社に依頼をした方が、プロジェクトの成功率が高まるはずです。
コンペの利点を享受する
制作会社や提案内容を比較検討するための手段として、コンペを活用することは今でも有効です。しかし、時間のない中、急いで作成されたデザイン案やサイト構造案といった提案内容をもとにコンペを実施することは、良いサイトを作るという本来の目的が薄れてしまう可能性があります。コンペで得られる利点や課題を理解したうえで、必要な準備をしていただけたらと思います。
リニューアルの始め方にプレゼン準備ですべきこととしてまとめた内容も参考にしてみてください。必要な準備さえすれば、コンペが持つ「具体的な提案内容から制作会社を選ぶ」というメリットを享受できます。