2015年12月04日
モノサスタイランドの
内装工事奮闘記
前回はバンコクからプラカノンへオフィスを移転した経緯などを主にお話しましたが、今回は内装工事にまつわるエピソードなどをご紹介したいと思います。
自分たちで変えられる
余地を求めて
オフィス物件には「居抜き(以前の入居者の内装が残っている状態)」か「スケルトン貸し(天井や床などの内装が施されていない、基本構造のみの状態)」がありますが、今回選んだのは、いわゆるコンクリート打ちっぱなしの、内装が施されていない「スケルトン貸し」の物件でした。
居抜き物件も含め内見はしましたが、自分たちで変えられる余地がないのは面白くないと思い、また、いつでも出ていけるような腰掛け感がするのも嫌だよねと考えました。ですので、内装工事の初期費用がかかるとしても、スケルトンタイプの物件を選んだのでした。
デザイン~図面作成
内装工事のためにはデザインと図面が必要です。ちょうど隣のテナントの、ダンススタジオを請け負っていたデザイナーが、物件オーナーの自宅の内装も手掛けているとのことで、紹介してもらいました。他にもいくつか大手、個人含めデザイン会社と打合せをしましたが、そのデザイナーのチームが一番親身に話を聞いてくれたという印象から、内装デザインから図面作成までを依頼することにしました。
言葉のニュアンスの違いもあり、なかなか意向が上手く伝わらない場面や、こちらからの修正の戻しによるスケジュール遅延はあったものの、デザインと図面作成まではスムーズに進みました。
施工会社選び
ここで施工会社の選定です。私の友人お薦めの日系企業や大手の施工会社など、6社に図面を送り相談したのですが、結局デザイナーから紹介を受けたタイの地元の施工屋さんに決めました。デザイナーいわく、クオリティはローカルの施工業者の中では中間ぐらいとのこと。
家族で営んでいる方々のようで、打合せには夫妻で来られました。施工屋のおっちゃんらしい恰幅のいい旦那さんと、金庫番の肝っ玉かあちゃんという感じ。凄くアットホームな雰囲気ですが、本当に任せて大丈夫だろうかと、漠然とした不安はありました。
見積り依頼をした施工会社の中には、工期スケジュールが短過ぎるとしてお断りされたケースもありました。とはいえシンプルで最低限な内装のはずなので、3週間ほどあれば出来るだろう考えていましたが、その夫妻の出したスケジュールはこちらの希望日に間に合うものでした。
このローカルの施工屋さん選んだ大きな理由は、スケジュールや見積りで唯一こちらの希望と一致したということもありましたが、最終的には人柄を見て何とかやっていけるかなと思った点です。どこを選んでも何かしら問題はあるだろうし、図面もデザインもあることだし、きっと大丈夫。
そう思っていたのですが…。
内装工事をめぐる戦い
工事状況を見に行くと、ひとまず壁が塗られていました。分かってはいましたが、当然ながら塗料を塗るにも養生などはしません。タイでは普通です。まぁこれぐらいはしょうがない。5歳くらいの夫妻の子供が現場で遊んでいたりもしました。危ないと思うけど、のどかだな。
床下の配線を見に行った際は、基礎のコンクリート部分を掘って配線ボックスを埋めていました。これはちょっとまずいんじゃないかな。さすがに下の階まで貫通はしないだろうけれど。
他にも排水管を窓枠のサッシに直接打ち付けて固定していたので、物件自体に傷を付けないようあわせて注意したりしました。
そんな風に、見渡すたびに修正点がどんどん目に留まります。いよいよ雲行きがあやしい…
ある日のこと、制作を依頼していたカウンターが出来たそうなので工場に見に行くと、もう塗料まで塗られていました。塗料を塗るのは確認するまで待ってと言ったのに。
しかも質感が…。
塗装はオイル仕上げでお願いしていたのに、どうもそれじゃないような質感です。
オイルがラッカーやウレタンと異なることを説明するために、念のため自分でも調べて伝えていたのですが…
「ラッカーじゃないですか?」
と聞くと
「オイルです」
と答えます。
「じゃ塗ったオイルの缶を見せて」
と言うと、出てきた缶には英語で大きく「ツヤ消しラッカー」と書いてありました。
「ラッカーじゃないですか」
「あれ?でもツヤ消しタイプですよ」
「いやそうゆう問題じゃなくて…」
しまいには「タイではオイルは手に入らない」と言います。
「そんな訳ないと思うけど、だったら先に言ってよ」
その場で調べると、チークオイルがそれにあたるようなので
「これって入手できない?」と聞くと
「それならあるよ」と言って裏から持ってきました。
「あるやんけ!!!」
なんだかもうわけが分かりませんが、途中からそんなやり取りの連続です。
他にも、どうも分厚いと思ったら会議テーブルは厚さ4cmのはずが7cmになっていたり。
いざ家具類をオフィスへ運び入れると、カウンターが置かれる予定の柱と窓の間に収まらず。なんとカウンターの幅が図面より2cm大きく作られてしまったのです。説明して「カウンターが収まるように下の部分削って」と言うと、カウンターではなく基礎のコンクリートの方を削っちゃいました。
引出しと扉が隣接すること考えず設置され、両方開かなくなっちゃうことも。
こういった事があり過ぎてとても書ききれませんが、日本人の常識では考えられない出来事が部屋中にありました。注意したことを何度も繰り返すので、真剣におばちゃんを叱ったりもしました。とはいえ施工一家にも悪気は無く「よかれと思って」という理由もあったりするのが憎めないところです。
ただ何より、細かくて面倒くさい日本人の上司と、言うことを聞かない施工屋さんとの間に毎回挟まれながらも、粘り強く交渉してくれた通訳スタッフに感謝したいと思います。
そんな日々を乗り越え、今のオフィスはあります。天井から床まで全ての箇所に思い入れがあり、妥協や施工のやり直しのエピソードもあり…。
そして、気付きや学びも本当に多くありました。
自分たちの工数こそ割かれましたが、おかげ様で内装の現場監督まがい?!のことができるほどの知識はつきました。報連相の大切さや品質基準の違いも痛いほど学べ、自分の仕事にも活かせそうです。
植物やキャビネットなど、まだまだ揃えるべきものは多くありますが、ひとつひとつコツコツと、より良いオフィスにしていけたらと思います。