2016年09月12日
ビール片手に漫画夜話の時間です:前編
〜モノサスの「読書会」#07〜
前々回の読書会で、「私、本当は『ガラスの仮面』について発表したかったんです!」と、その回のテーマそっちのけで、発表時間の半分を『ガラスの仮面』の話に費やした田中。そんな彼女をみて思いました。
「漫画夜話、やるしかない」
そんな思いから始まったこの企画、夢かないました。しかもビアガーデンで!
参加者は8名、それぞれの思いがこもった8冊の漫画がそろいました。
いつも以上にワイワイ盛り上がった「居酒屋 漫画夜話」。
前編・後編の2回に分けてお届けします。
前半戦メンバーのご紹介。メイン写真左から、漫画と料理をこよなく愛する田中(コーディングファクトリー部)、朝8時には会社に出勤しコツコツ仕事を進める元競歩選手・和田(プロデュース部)、社員旅行委員を任命されて、目が充血気味の香川(クリエイティブ部)、そんな香川を愛してやまない和歌山出身・濱端(クリエイティブ部)の4名。
ビール片手に、いや、漫画片手にスタートです!
発表タイム
今回は「居酒屋 漫画夜話」専用ルール。
読書タイムは設けず(読んでくること前提)。ひとり3分間でその漫画を紹介します。
前編
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「私、もう駄目かもと思ったら、目が真っ白のマヤを憑依させるんです…。」
美内 すずえ (著)『ガラスの仮面』(紹介者:田中 夏海) -
Twitter で流れてきた「歯」が主人公のマンガ
カトちゃんの花嫁(著)『歯のマンガ』(紹介者:和田 亜也) -
脇役全員おもしろい、男子も読める少女漫画
岩本 ナオ (著)『町でうわさの天狗の子』(紹介者:香川 祐太朗) -
狂人たち大集合
能條 純一 (著)『月下の棋士』(紹介者:濱端 誠)
後編
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「これを読み終えたときに、オレは死ぬのが怖くなくなったんですよ。」
手塚 治虫 (著)『ブッダ』(紹介者:菊永 真介) -
ロボット好きの原点 オタク文化のベース
永野 護 (著)『ファイブスター物語』(紹介者:村上 伊左夫) -
子どものまま大人になったら、どんな気持ち?
入江 亜季 (著)『乱と灰色の世界』(紹介者:加倉井 宏美) -
とてつもない痛ましさと「何で人を殺しちゃいけないの?」の問いにさらされる
新井 英樹 (著)『ザ・ワールド・イズ・マイン』(紹介者:中庭 佳子)
「私、もう駄目かもと思ったら、目が真っ白のマヤを憑依させるんです…。」
美内 すずえ (著)『ガラスの仮面』(紹介者:田中 夏海)
- 田中
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今回私が満を持して持ってきたのは、『ガラスの仮面』 第5巻です。
主人公の北島マヤは、めっちゃコミュ症で根暗。頭が悪いんですよ、勉強できない。あと走るのもめちゃくちゃ遅いんですけど、演劇だけめちゃめちゃできる、芝居に関してだけは、すごい記憶力がある。そんな彼女は演劇に目覚めて「劇団月影」に入るんです。
彼女のいいところは、本当にすごく素直で前向きなところ。
どんなことがあっても、好きなことだけは絶対あきらめないんです。この巻でも、演劇のコンクールに出るから劇団のみんなで一生懸命練習して、「さあやるぞ」というときに、ライバルの劇団に、大道具から小道具、衣装まで全部ビリビリに破いて壊されてしまうんです。
- 田中
-
代わりの大道具を取りに行った劇団員のみんなも罠にはめられて、マヤ以外の劇団員は来れなくなっちゃう。開演の時間は迫る、もう棄権するしかないってなった時に、マヤが「私一人でもやります」と言って一人で演じるんですけど、最終的に観客から圧倒的な支持を得るという感動のストーリーがここに入ってます!
北島マヤの「絶望的な状況でも諦めない強さ」これはすごい勉強になります。この作品の中にいい言葉があって、「人間の想像力は経験を超える」っていう言葉なんですけど…
ータイムアップー
- 村上
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最後のセリフ、何でしたっけ。もう一度。
- 田中
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「人間の想像力は経験を超える」。
実際に経験したことがなくても、想像をどんどん膨らませていけば、経験を超えることが出来ると。これはマヤの師匠の月影先生の言葉なんですけど、もうなんかそれが、すごい、いい!
- 中庭
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先日の、田中さんのMVPの記事に「転んでも転んでも諦めない子」みたいなことが書かれてましたが、それって北島マヤを重ねている部分はあるんですか?
- 田中
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はい、どんなことがあっても、ああもうこれ駄目かもって思っても、目が真っ白のマヤがこう…思い浮かんで、憑依させて、そのままマヤとしてこの困難を乗り切ってみせるぞ!となります。
- 菊永
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年代としてはどれくらいのマンガなんですか?
- 田中
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あんまりわかんないんですけど。連載が始まったのは1976年とか…しかもまだこれ終わってないんですよ。
- 加倉井
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終わってないんですか?!
- 田中
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まだ終わってない。
- 中庭
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ガラスの仮面といえば、ライバルの存在も重要ですよね。
- 田中
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ライバル!姫川亜弓ですね。両親が映画監督と超有名女優で、親の七光って言われるのが嫌で、めちゃくちゃ努力するっていう。彼女もすごい。
- 中庭
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天才のマヤにいつも嫉妬してるっていう、永遠のライバル。
- 濱端
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内容と関係ないんですけど、この時代の少女漫画の表紙デザインって、絶対これですよね。
- 中庭
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これは花とゆめコミックスのフォーマットですよね。
- 田中
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フォーマットフォーマット。他のも似ているかもですね。
Twitter で流れてきた「歯」が主人公のマンガ
カトちゃんの花嫁(著)『歯のマンガ』(紹介者:和田 亜也)
カトちゃんの花嫁(著)『歯のマンガ』印刷:ねこのしっぽ 2016
- 和田
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作者は“カトちゃんの花嫁”という方で Twitter(@hanomanga)で知りました。2本の歯が主人公の4コマ漫画で、歯が遊んだり、寿司屋に行ったり、サンバを踊ったり…シュールですごく面白いマンガです。いつもTwitter で読んでたんですけど、あるとき本が出来たと聞いて、販売しているカフェまで買いに行きました。
とにかく読んでみてもらうのが一番だと思うんですけど、シュールな話や面白い話や、ちょっとコワイなと思う話などいろいろあります。
- 和田
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この本には入ってないネタなんですけど、おぎゃーと泣き声がする乳母車を押してるお母さんに、主人公の歯が「かわいい赤ちゃん見せてください」とお願いして覗き込むと、「おぎゃー」と鳴るラジカセが置いてある。で、歯がゾクッとする話もあります。
よくわからなくて意味もないんですけど、なんか面白いマンガです。
どんどん読んじゃう。気に入ってる作品です。
Twitter でも作品が読めるので、興味あったら見てみてください。
- 濱端
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虫歯とか、親知らずとか出てきたりするんですか?
- 和田
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いまのところは、2本の歯が主人公なんですが、インターネット上で歯だけが集まるパーティみたいなことをやって「歯ってこんなにいっぱいいたんだ、やってよかったね」みたいな話もありました。
実際のところ、この子らが歯なのかどうかも、さらには歯の概念もよくわからなくて…でもそこがまた面白いところです。
- 濱端
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なにか事件が起きたりとかはしない感じ?
- 和田
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事件が起こっても当たり前の出来事として描かれているのが、シュールなんです。
例えば、歯がお寿司屋さんの仕事が大変そうなのを見て、「仕事は自分たちに任せて温泉でも行ってきなよ」と言うと、お寿司屋さんが本当に温泉に行ってしまう。寿司屋を任せられた歯たちが、「まさか本当に任せるとはね」と言ったりする話もあります(笑)。
- 中庭
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この本、どこで買えるんですか?
- 和田
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私は吉祥寺のカフェゼノンっていうところで買いました。今はヴィレッジヴァンガードのオンライストアでも売ってるみたいです。
脇役全員おもしろい、男子も読める少女漫画
岩本 ナオ (著)『町でうわさの天狗の子』(紹介者:香川 祐太朗)
- 香川
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奥さんがあまりにも面白いというので読んでみたらめっちゃ面白くて。
少女漫画に興味の無い僕が、なんでこの漫画を好きになったかと言うと、少年漫画の要素がいい感じでミックスされてるからなんです。
- 香川
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現代の日本が舞台なんですが、題名にある「天狗」が普通に存在しているっていうファンタジー要素があるんです。
主人公の秋姫は、お父さんが町の長(おさ)みたいなすごい偉い天狗で、お母さんがすごい美人の人間で、そのハーフとして生まれた女の子です。
天狗としてものすごい能力を秘めてるんだけど、まだ自覚がないというか。少年漫画によくある、だらしがないけどすごい能力を持った少年みたいな要素があって。その秋姫と、瞬ちゃんていう幼なじみの男の子がいるんですけど、その男の子は人間でありながら天狗を目指している身で、その二人を軸とした物語があります。
少年漫画の要素と、少女マンガの恋愛要素が、この二人だけじゃなくて、脇役全員にフィーチャーされてるんですよ。
そういう振り幅があって面白い作品です。単行本の帯で、羽海野チカ(「3月のライオン」作者)がレコメンドしていたり、割と売れてるんですけど、意外とみんな知らないんですよね。自分も知らなかったんですけど(笑)。
全12巻で、休みの日に何となく読み出したら一日が終わってしまうくらいの罪なサイズのマンガですよ。
みなさんぜひ読んで欲しいです。
- 濱端
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『ときめきトゥナイト』みたいな感じ?
- 香川
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ときめきトゥナイトが、内容がわかんないです(笑)。
- 中庭
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戦う少女系ですか?
- 香川
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そういうのもありつつ、基本は少女漫画なんで。脇役全員にフィーチャーした物語が用意されてるんです。
それが一個一個、完成度がものすごい高くて、いちいち泣けるんですよ。感動もします。
- 菊永
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ふと思ったんですけど、男性が書いてる少女漫画ってあるんですか?
- 中庭
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ありますよね。『スケバン刑事』とか、古くは『ひみつのアッコちゃん』とか。
- 菊永
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へぇ。オレ全然深いマンガの知識なくて、単純に疑問に思ったんですけど。少女漫画も読んでみたいな。
- 濱端
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少女漫画、結構面白いですよ。
狂人たち大集合
能條 純一 (著)『月下の棋士』(紹介者:濱端 誠)
- 濱端
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私がおすすめするのは、『月下の棋士』です。
- 村上
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来ましたね〜
- 濱端
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実は、僕は小さい頃から将棋が大好きで、今でもニコ動とかで将棋の対局見たりするくらい普通に好きで。
- 香川
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まじですか!初耳っす。
- 濱端
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で、将棋が好きなんで、将棋のマンガが読みたいって探してる時に、『月下の棋士』に出会ったんです。
ドラマになってるくらい有名なマンガで、某モリタさんが主演でやってます。氷室将介という、某有名人と一文字違いの主人公が、将棋の連盟で奨励会(プロになる前の登竜門)に入門してから、プロ将棋の最高位「名人」を目指すまでのサクセス・ストーリーです。ストーリーは単純で、主人公がいろんな対戦相手と対局しながら、一つ一つ課題を乗り越えていくんですが、将棋って、相手が一手指して、それに対する次の一手を何十時間も自問自答しながらずっと考えるんですよね。
それでみんな頭がちょっとおかしくなってて、ほんま狂人みたいな人ばっかり出てくるんです。もちろん、リアリティの範囲で。
僕が結構好きな対戦相手で、運命に逆らわずに自分の一手を指すという人がいるんです。その人は、ある対局で直感的にはこの手を指したいって思ってたんやけど、自分の思考的にはこっちの手を指したいと思って…結局は直感を信じず、自分の考えで指して負けたことがあって。そこで挫折した結果、「直感、運命サイコー!」みたいな感じで、とにかく直感を信じる人になったんです。
たとえば、毎朝占いをチェックして、今日のあなたのラッキーカラーはピンクって出たら、全身ピンクのスーツを着て、それで勝ち続ける。そんな登場人物もいて、それぞれの将棋に掛ける思いがすーごい熱くて、めちゃくちゃおすすめです。
- 香川
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みんなが主人公みたいなやつですよね。
そういうマンガって面白いですよね。
- 濱端
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登場人物の一人のモデルにもなってるんですが、村山聖(むらやま さとし)って知ってますか?
- 村上
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村山聖?
- 濱端
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村山聖。この人を語るの、気合がいりますよ。
病気を患ってて、29歳くらいで死ぬんですけど、自分が病気になっていることを知りつつも、将棋に勝負をしていくっていう。むちゃくちゃ格好いい人です。
この村山聖をモデルにした人物も出てくるので、ぜひ読んでください。
村山聖の小説も読んでほしいです。
熱血演劇少女にプロ棋士、天狗、そして歯…!
バラエティにとんだキャラクターが飛び交った前半戦でした。
まだまだ盛り上がる漫画夜話、後半戦もお楽しみに!