2017年01月23日
2017年、「新しい年に読みたい本」を肴に
新年会・前編
〜モノサスの「読書会」#10〜
松の内も過ぎましたが、あけましておめでとうございます。
図書委員長の村上です。
年明け早々におこなわれた読書会のテーマは「新しい年に読みたい本」。
今年の抱負に関わる本でもよし。
気持ちが新たになるような本でもよし。
お正月に読んだ本でもよし。
思い思いの「新年の本」を持ち寄りました。
会場となったのはモノサス御用達、淡水研究室。
新年にふさわしいご馳走をご用意してくださいました。
美味しい料理に舌鼓を打ちつつ、本を紹介する弁にも熱がこもるメンバーたち。
そんな読書会&新年会のもようを前後編に分けて紹介します。
それでは読書会スタート!
発表タイム
前編
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娯楽としての楽しみから、もう一歩深い読書の世界へ
齋藤 孝 (著)『読書力』(紹介者:村上 伊左夫) -
人の目なんが知るが。イヤなものはイヤど、思いっきり、叫(さが)べ。
木村 友祐 (著)『イサの氾濫』(紹介者:和田 亜也) -
内なる思いは「書く」ことによって、進みはじめる。
梅田 悟司(著)『「言葉にできる」は武器になる。』(紹介者:菊永 真介)
後編
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シジミを食べるって、こんなにひっそり怖いことなんだ 平凡な日常から生まれることば
石垣 りん (著)『表札など―石垣りん詩集』(紹介者:大村 陽子) -
へうげる=ふざける 出世欲と物欲の狭間で揺れる、戦国武将
山田 芳裕(著)『へうげもの』(紹介者:上井 正之) -
淡々と繰り返される日常と一瞬の破壊 ふんわりと強く生きる、すずちゃんの毎日
こうの 史代 (著)『この世界の片隅に』(紹介者:中庭 佳子)
娯楽としての楽しみから、もう一歩深い読書の世界へ
『読書力』(紹介者:村上 伊左夫)
Amazon )
- 村上
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今日持ってきたのは、齋藤孝さんの『読書力』です。 私はもともと本を読むのが好きなんですが、小説とかでもただ漫然と読むのではなく、そこから得るものがあったらさらにいいなと。 今年は思いも新たに本を読んでいきたいということで、この本を選んでみました。
まだ読み終わってないんですが、冒頭にグサッとくる言葉があって。 著者は読書に対して非常に情熱を持って語っているんですが、読書が好きな人が、あまり本を読まない人に対して「読書なんてそんなに重要じゃないよ」と言ってしまうことが非常に嫌だと書いてあるんです。
- 村上
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私それ、結構言っちゃってるなと思ったんですよね(笑)。例えば誰かから「あまり本読まないんですよね」と言われたら、「本は必ずしも読まなければいけないものではなくて、本以外からでも色々吸収できるなら、それでいいと思いますよ」と答えてたんです。
自分では一理あると思って言ってたんですけど、なんかこう、情熱をもって読書する人の文章を読むと、これぐらいの情熱をもって人に勧められるようになりたいなと…思いを新たにしたというか。この本を手にとって良かったなと思いました。
今年は目標として「本を深く読もう」ということを掲げたいなと思ってます。
(時間終了)
- 中庭
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まずは食べながらやりますか。
~淡水一品目「マグロの中落ち」~
- 菊永
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著者はどういう人なんですか?
- 村上
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明治大学文学部の教授で、ベストセラーになった「声に出して読みたい日本語」を書いた人です。この本では、単なる娯楽のための読書じゃなくて、多少なりとも緊張感を伴った読書を推奨しています。
自分は小説とか、わりとその世界に没頭するのが好きで、あくまで娯楽の消費者として本に触れていたので、そうじゃない読み方もできればいいなと思って。
- 中庭
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図書委員長ならでは…の狙いもあってこの本を選んだんですか?
- 村上
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図書委員長は…関係なくはないか(笑)。
本読まないんだよねっていう人に対して「読書はいいよ」って自信をもって言えるようになりたいなと。
- 中庭
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じゃあ早速、忙しくて読む時間がないという人に読書を勧めるトークを(笑)。
- 村上
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まずは、読書会に参加してみてはどうですか?と(笑) 参加することで、そこで本を読む時間が確保できるので、まずは手に取ろうというところから。
あとは…布団に入ってから読むとか。自分の場合、椅子で読むと夜更かししてしまうこともあるんですけど、布団の中だと、ちょうどいいところで寝れるのでオススメです(笑)
人の目なんが知るが。イヤなものはイヤど、思いっきり、叫(さが)べ。
『イサの氾濫』(紹介者:和田 亜也)
- 和田
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私が持ってきたのは、木村友祐さんの『イサの氾濫』という本です。 先日、知り合いの先生が参加する「声の氾濫」というシンポジウムを見に行って、何人かの作家の方がステージで作品を朗読したんですが、そこで著者の木村さんが『イサの氾濫』の一節を朗読されていて。三味線の奏者の方と一緒に登場して、朗読の途中に三味線がはいるという演出もあって、すごく引き込まれました。
物語は「南部弁」という青森の方言で書かれています。 主人公は青森から上京して仕事を転々としているんですが、彼の叔父が「イサオ」という名前で「イサ」って呼ばれてて、身内にも煙たがられるくらい酔っ払って家をぐちゃぐちゃにするような暴れん坊な人で。 周りからそういう話を聞いた彼は、会ったことのない叔父がアイヌの「イサ」という勇敢な戦士の子孫なんじゃないのかと想像し始めて、地元に帰って叔父に関わるルーツを聞き出していくんです。
そうするうちに、心の中がだんだん「自分がイサじゃないのか」みたいな感じになってきて。東京でいつも言えなかった、何か心のなかでずっと叫べなかった思いに叔父のイサが憑依したみたいになって…最後はすごい叫びになってみんなで東京に攻めていくみたいな。ちょっと飛躍しちゃうんですけど。
東北の人の想いのようなもの…震災があって東北かわいそうとか頑張れとか言ってくるけど、実際はどうなの?みたいな。もっともっと、内面の叫びみたいなのを言ってもいいんじゃないかとか、言葉で上手く表現できないと思うんですけど、すごい叫びがこの中に書かれてて。 また南部弁で書いてあるのがすごく、その伝わるというか、衝撃的に揺さぶられる本でした。
- 村上
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なんで表紙が猫なんですか?猫が主人公…
- 和田
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…ではないです(笑)。 物語の最後、主人公が東京に攻めていく仲間に猫や馬もいるんですが、猫も「イサ」だと書いてあって、みんなが「イサ」になるというか。
東北には、無理やり稲作をやってきた歴史や、東京から軽視されてる感覚とか、地震でも踏み台…じゃないですけど、結局東北はそういう感じなのか、みたいな感覚があって。 そんな鬱屈した思いとかを、もっとこう声をあげてもいいんじゃないかと。現代で生きる私たちが何も言わないように仕向けられてるんじゃないか、みんな思ってることをもっと言ってもいいんじゃないか、そんな想いが感じられる作品です。
- 菊永
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著者の木村さんは東北の方なんですか?
- 和田
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青森出身で、今は東京在住だそうです。
先のシンポジウムで木村さんが仰ってたのが、東京が一番新しくて進んでると思ってたけど、地元に帰ると、地方は地方で同じ時間を過ごしてて一人ひとりの生活があるんだということを実感してると。 あと、方言で話すとすごい安心するというか、感情が出せるみたいな。私も地元に帰って関西弁を聞くと安心するなっていうのがあって、すごく共感しました。
- 村上
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確かに実家に帰ると、時間の流れがぜんぜん違うなって感じたりしますね。
- 和田
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今年は、思ってることを声に出してといいますか、もっとこう、発信したり実際に行動に移したいなと。この本を読んですごく思いました。
~淡水二品目「ヒラメとあん肝」~
内なる思いは「書く」ことによって、進みはじめる。
『「言葉にできる」は武器になる。』(紹介者:菊永 真介)
- 菊永
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今年の抱負として選んだのが「言葉にできるは武器になる」です。書評メルマガで紹介されてたんですが、本屋さんで見たら前書きにこんな問いかけがあって。
「言葉をコミュニケーションの道具としか捉えていないのではないですか。 言葉が、意見を伝える道具ならば、まずは意見を育てる必要があるのではないですか」
で、これはなんか面白そうだなと。 自分は営業なんですけど、個人的に喋るのは得意でも、仕事の話やみんなの前で喋ることが苦手で、そういう言葉に対するコンプレックスにも効くかなと思って選びました。
著者は電通のコピーライターの方です。 内容的には、言葉はコミュニケーションの道具じゃなくて、言葉は、思考の上澄みにすぎないと。要は、考えてないと喋れないですよって。自分の頭の中で色々考えても、それをアウトプットしたり書き出したりしないと、記憶を周回して終わりますよと書いてあるんです。
自分の思考を深める方法が書いてあって、それが言葉を作っていくと。付箋に書いたりして、幅と深さみたいな感じで並べたり、そういうツールや方法論みたいなのが書いてあるので、これからやってみようと思ってます。
内なる言葉というか、考えてることを言葉にするとか喋るってすごい大事ですよね。 無意識にやってることもあると思うんですが、さらに磨いていくには思考の部分をちゃんと客観的に見たり、その反対を考えたりとか、そういう思考の磨き方が言葉を磨くことに繋がる。 今年はそれをやっていきたい、色々試していきたいですね。
- 大村
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言葉を作るって、どういうことですか?。
- 菊永
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まずは書き出す。とにかく、書くことによって始まると。で、さらに、いろんな角度から向き合ってみたり、内なる言葉と向き合うみたいなことが書いてあるんです。なんとなく考えてるだけだと、人間って過去の記憶を回ってるだけで終わってるらしくて。出すことによって前に進められるというか。
- 村上
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確かに、人に話そうと思って考えてても、実際話したら半分も言えなかった、みたいなことありますね。
- 菊永
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うん、咄嗟に言われて何も出てこないっていうのは、俺もよくあるんだけど、アウトプットを普段からしてないからというか、準備ができてないということになっちゃう。結局、仕事とかでも、そういうアドリブというか、その場で咄嗟に出てくるところが実力だったりするじゃないですか。そういうのを磨いていかなきゃなって。
- 中庭
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新年は、内なる言葉を磨くと。
- 菊永
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そうですね、パソコンかもしれないし、手書きじゃなくてもいいけど、どんどん考えてることをとにかく書くということをしていきたいなと思います。
- 中庭
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ぜひ、ものさすサイトで実践を!待ってます(笑)
〜淡水三品目 白子〜
- 中庭
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うわー美味しそう!
- 上井
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撮影タイムが。
- 菊永
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お菓子みたいだね。スイートポテトみたい。
- 中庭
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上井さんのフェイスブックでレポートしてください。ぜひ(笑
- 上井
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白子に。あん肝に。
- 中庭
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贅沢だ、すごく。
(後編に続く)
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