2017年06月26日
"言いたくないことは言わなくていい"
居場所をつくる
~「 Prism 」で出会った友人へのインタビュー #01 ~
こんにちは。品質管理部の乾です。
前回の記事では、なぜ私が LGBT について学んでいるのか、ということについてお伝えしました。
今度は、自分以外で、LGBTやその周辺に向きあっている人が、どういうことを感じ、考え、社会に関わっているのかを聞いてみようと、去年所属していた法政大学 LGBTs サークル「 Prism 」で出会った友人 3人にインタビューをおこないました。
場所は「東京レインボープライド 2017 」(以下 TRP )のイベント会場で、みんなが集まる最終日の5月7日にお話を伺いました。
今回はそのうちのひとり、お茶漬けさんのお話をご紹介します。
お茶漬けさんは、「 Prism 」代表の大学生。
私が大学 4 年生の春、とある NPO が主催する LGBTs の学生交流イベントに参加した際に出会いました。LGBTについて学ぶためにコミュニティに入りたいと思っていたところ、声をかけてくれたお茶漬けさん。
サークルに入ったことでお茶漬けさんから多くのことを学びましたが、メンバーが多かったこともあり、じっくり話をする機会は意外とありませんでしたので、今回あらためてサークルをつくった理由や、セクシャリティについてどんな考え方をもっているのか、また TRP はどんな気持ちで参加をしているのか聞いてみたいと思い、インタビューをさせてもらいました。
※1.2 LGBT/ LGBTsとは
レズビアン(女性同性愛者)ゲイ(男性同性愛者)バイセクシュアル(両性愛者)トランスジェンダー(体と心の性が一致しない、性別越境者)の頭文字をとったものです。現在はセクシュアルマイノリティの総称として使われることが多いです。「LGBT」にsが付くことによって、上記の4つだけではなく、あらゆるセクシャリティが含まれるという意味を持つそうです(LGBTQという場合もあります)。sが付く表記だったからという理由でPrismを選んだメンバーもいるそうです。
※3 東京レインボープライドとは
NPO法人 東京レインボープライドが主催する、性的指向や性自認(SOGI=Sexual Orientation, Gender Identity)のいかんにかかわらず、差別や偏見にさらされることなく、より自分らしく、各個人が幸せを追求していくことができる社会の実現を目指すイベントの総称です。
(TRP 2017 「イベントについて」より引用 )
お茶漬けさんプロフィール
法政大学LGBTsサークル「Prism」 の代表。同大学の文学部に在籍中。
大学2年生の時にPrismを設立し、2017年6月末で2周年を迎えます。
ツイッターでよびかけ、当初は5~6人だったメンバーが、現在では約70人ほどまで増えました。
自分のセクシャリティがまだわからなかったり、
決めたくなかったりという人たちの居場所づくり
ー どうして「Prism」を立ち上げようとしたんですか?
お茶漬けさん
自分のいる校舎にこういうサークルがあると安心感があるというか、身近に存在することが大切だと思ってつくりました。
他大学の LGBT サークルって、いわゆる「L」「G」「B」「T」が可視化されやすく、セクシャリティが特定できている人にとっては居やすい環境でした。ですが、自分のセクシャリティがまだわからなかったり、決めたくない人たちにとっては、居づらいんです。
マイノリティの中でさらにマイノリティを形成しているのはおかしいから、どうにかしたいと思って。
セクシャリティを公表したくない人でも関係なく友達とか仲間をつくれる居場所をつくりたかったんです。
ー 「セクシャリティを決めたくない人もいる」という考えを持ったきっかけはありますか?
お茶漬けさん
私自身が小さいときから揺らいできたのですが、サポートはあまりなくって。
セクシャルマイノリティだと自覚したら行動を起こしやすい思うんですが、「私、もしかしたらそうなのかもしれない」と迷ったり、悩んでいるときこそ、一番サポートが必要なんです。そんなときの支援とか居やすい場所というのが全然ないと感じました。だから、そういう場所があるとうれしいと思ったんです。
ー そういう考えは 10 代の頃からあったんですか?
お茶漬けさん
そうですね。10 代の頃は自分も悩んでいたんですが、支援してくれる人がいるなんて思っていなくて。高校生のときに同級生にカミングアウトしたら、とある NPO 法人がやってるイベントに連れていってくれました。
そこでは、自分のセクシャリティは○○と言い切らなきゃいけないような暗黙の了解があったり、「言いたくなければ言わなくていいよ」という、働きかけがなかったり。
「言いたくない」ということすら言いたくない人もいます。
それなら、そういう人同士がつながれたら、ちょっとでも前に進めるんじゃないかと思ったんです。
ー セクシャリティを言うことが重要ではないという感じなのでしょうか?
お茶漬けさん
重要な部分であるのは確かですが、セクシャリティはあくまでその人の「一部」としてしかみないルールや空気づくりをしています。
もちろん、同じセクシャリティの人とつながりたい人もいますので、どんな人でも居やすいよう心がけています。
セクシャリティを言葉で決めてもいいですし、一人ひとり違うものなので必ずしも決めなくてもいいと思っています。
他にも大学名とか本名とかも、言いたくないことは全部言わなくていいということにしています。
ー 普段サークルではどんな活動をしているんですか?
お茶漬けさん
新年会とか TRP にみんなでいくとか、サークルとして何か企画することもあるんですが、友達作りが主な目的なので、匿名で書いたお題をくじで引いて、それについて話しながらおやつパーティーをしたりしています。
たとえば「カミングアウトって何人にしてますか」などのまじめな話題もありますし、「お昼何食べた」みたいにゆるいものまで幅広く、なんでも OK です。
勉強会をしたいというメンバーもいるので学会に参加したり、講演会とかイベントの情報もみんなで共有しています。
同年代の友達と悩みを相談したり話せるのは、大学ならではの安心感があると思うんです。
ー ご家族はこういう活動をしていることは知っていますか?
お茶漬けさん
自分からは言っていませんが、いつの間にかばれてしまったというか...。
「隠してることあるでしょ?」みたいな感じで聞き出されてしまいました。
親の気持ちもわかるのですが、カミングアウトって自分のタイミングでしたいし、あんまり急かさないでもらえるとうれしいな、とは思いました。
受け取る側は心の準備ができていても、打ち明ける側は準備ができていない場合もあるので。
ー その人のタイミングにまかせてほしいということなんですね。 その後、親子関係に変化はありましたか?
お茶漬けさん
親はわかってるつもりなんですけど、自分はわかりあえないと思っています。
自分自身がマイノリティであることを受け入れるのに時間がかかったので、今すぐにどうってことはできないと思います。
でも、セクシャリティに関係なく、他人のことを完全にわかること自体難しいと思うので、わかろうとする、認めるってことが大事だなと、親へのカミングアウトを通じて感じました。
本来はいて当たり前なのに、
「いないもの」になっている日常を変えるためにできること
ー TRP はどういう風に参加していますか?
お茶漬けさん
学びと情報交換を主な目的としてきています。
これだけ多くの団体が一同に会する場はなかなかないので、交流の場を持てるとてもいい機会です。
他の団体の活動方針、運営のコツなど聞いたりして、Prism でも役立ちそうなことを探しています。勉強会の情報交換もできるので、討論する場も作ろうかと考えているところです。
ですが、みんなでワイワイできて楽しい日でもあるので、気負うことはないと思います。買い物をしたり、おいしいものを食べたり気軽に楽しめるので、私もお祭り感覚でも来ています。
ー 会場の雰囲気がとても明るくて驚きました。 TRP の期間中に周囲の様子や心の変化はありますか?
お茶漬けさん
街中で看板が虹色になったりするので、応援してくれるのかな?とか、社会は変わるのかな?とか、期待をもてます。
TRP のパレードは、セクシャルマイノリティを可視化して偏見をなくそうという意味があるんだと思いますが、参加したことはありません。
本当は参加したいんですが、自分がテレビに映って家族が偏見をもたれたらどうしようという不安と、パレードを歩くだけで社会が変わるわけないとも思うので、今年で 4 回目の TRP 参加ですが、未だにパレードを歩けません。
ー そうだったんですね。今日は TRP 最終日で、企業も参加してワイワイしていますが、
この盛り上がりとイベント終了後のギャップを感じることはありますか?
お茶漬けさん
セクシャルマイノリティの人は本来はいて当たり前なのに、当たり前なのはここだけで、日常生活だと「いないもの」になっていると感じてしまいます。
ー それはどういうときに感じますか?
お茶漬けさん
たとえば、ホモネタを聞いた時とか。「お前ホモかよ」という発言って、「まさか違う(ホモじゃない)よね?」という前提があると思うんです。「オネエタレントってキモイ」とか言ってる人もいますが、属性でくくらなければいいのにと思います。
そもそも全部が全部マジョリティの人生なんてありえないし、もしかしたら自分でも気づかないところでマイノリティの可能性だってあるはずです。
"自分たちはたまたまセクシャリティがマイノリティだっただけ" だと思っています。選びようのないことで、あれこれ言われてもどうしようもできません。
ー 私たちが日常生活でできることとなると、差別的な発言をしない以外にもありますか?
お茶漬けさん
言いにくいかもしれませんが、ホモネタとか言う人がいたら「そういうのやめなよ」「意外といるから」など、言ってくれるとうれしいです。
そういうのを聞くと救われる人がいると思うし、うれしいし、居やすくなります。
わからないことを聞かれるのは嫌なことではないので、どういう対応をしたらいいか迷ったら聞いてほしいです。
全部が全部マジョリティの人生なんてありえない
今回のインタビュー中の「全部が全部マジョリティの人生なんてありえない」というお茶漬けさんの発言がとても印象的でした。セクシャリティはその人を構成する一部分でしかありませんが、男女二元論が根強い社会だからこそ、特にステレオタイプになりがちなのかもしれないと思いました。
実は私が大学 4 年生の時に参加した LGBT のイベントには、他にも多くの LGBT サークルがありましたが、メンバーとして活動できるのは当事者のみという方針のサークルがほとんどでした。
しかしお茶漬けさんは、あらゆる人をフラットな状態でみているからこそ、私にも声をかけてくれたんだと思います。Prism で活動してから初めて、性別で判断せずにそれぞれの個性を尊重しながら人と関わるという経験をし、それはとても心地よいことと感じました。貴重な経験ができたことを感謝しています。
次回はインタビュー第2弾です。Prism のカップル2人にインタビューしました。
こちらがニコニコしてしまうくらい、仲良しなふたりの様子もお伝えできればと思います。お楽しみに~
おまけ
TRPイベントレポート
最後に今年(2017年)の TRP の会場の様子をご紹介します。
初参加ということで、少し緊張しながら会場に向かいました。到着すると、会場はとても盛り上げっていて、しばらく圧倒されてしまいました。
TRP を知らずに代々木公園に来た人は、かなり大規模なお祭りをしているなという印象を持ったと思います。
総動員数は 10 万人と過去最高(昨年は約 7 万人)。国内最大級の LGBTイベントとして注目度が年々高くなっています。
会場はメインイベントのステージがあり、飲食物の屋台や企業ブース、NPO など多種多様なブースがでていました。
学生交流スペースや就職支援ブースもあり、全体的に若者をターゲットとしている印象が強かったです。
昼過ぎから TRP のメインイベントであるパレードもはじまりました。
今年の参加者はなんと 5000人!23 グループのフロート、マーチングも出場しました。公園通りから明治通りへ、原宿まで向かい再び代々木公園へと戻ってくるというルートです。
参加されているみなさん、とても活き活きとしていて、イベント名のとおりプライドを持って堂々と歩いている様子に感動しました。
イベントが LGBT というデリケートなテーマであるため、どんな風に取材に行けばいいのか迷ったところもありました。しかし実際に行ってみると、とにかく明るい雰囲気で、初参加でしたがお祭り気分で楽しめました。 LGBT に対してポジティブな印象をあたえるイベントでした。
お茶漬けさん編
ー初参加の人でもたのしめる、TRPのたのしみ方を教えてください。
お茶漬けさん
買い物とかどうでしょう?かわいい雑貨もいっぱいあります。それぞれのセクシャリティを象徴したグッズもあってお店の人も親切に教えてくれますし。
2丁目のお店も結構出店していて、バーもあるので、おいしいものを食べたりいろんなお酒も飲めたりして楽しいです。
勉強するつもりじゃなくても、代々木公園でお祭りやってるから行ってみようという感じでいいと思います。LGBTsについての知識がなくて「ホモじゃん」などの差別発言をしてしまうかもしれないので、ある程度知識を得てから来た方がいいかもしれません。
でも気軽に来ていいと思う。興味をもつきっかけにもなると思います。