2017年10月25日
秋の夜長に「気になる本」を持ち寄って
〜モノサスの「読書会」#18〜
こんにちは。図書委員の村上です。
10月も終わりに近づいて、夜もすっかり涼しくなってきました。食欲の秋、芸術の秋、そして読書の秋。今回の読書会のテーマは「最近、気になる本」「最近、買った本」。本好きなメンバー達が、読んでみたい本を持ち寄りました。
日が暮れて虫の声も聞こえるオフィスで、かま屋のバナナマフィンと紅茶をおともに
今夜も読書会スタートです。
発表タイム
今回も読書タイムは設けず(読んでくること前提)。ひとり5分間で本を紹介します。
-
1日3時間労働、アリなのかも?
ルトガー・ブレグマン(著)『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(紹介者 乾 揶湖) -
見えない人間の肖像、という哀しみ
ポール・オースター(著)『孤独の発明』(紹介者 村上 伊左夫) -
読み手への「敬意」が、伝わる文章をつくる
内田 樹(著)『街場の文体論』(紹介者 羽賀 敬祐)
1日3時間労働、アリなのかも?
『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』(紹介者 乾 揶湖)
- 乾
-
実は今日、おすすめを5冊を持ってきたんですけど(笑)代表して、この『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』を紹介したいと思います。
著者はオランダの歴史学者でジャーナリストです。AIが発達する現代において、もはや人はAIとの競争には勝てない。じゃあこの先どうするべきなのか?という観点から、人々にただでお金を配ること、週の労働時間を15時間にすること、国境線を開放することを提唱しています。
ベーシック・インカムは簡単に言うと、福祉などの社会制度を失くす代わりに、みんな一律のお金をあげましょうという考えです。最初は「3時間労働なんてムリじゃない?」って思ってたんですけど、読んでるうちに「何だかいけそう…」と思えてきて。残り2章ですが、最後まで読み終えたら納得してるような気がします(笑)。
働き方、社会保障、GDP、格差問題とか、いろんな社会問題が論じられてるので難しいんですが、各章の最後にまとめが載っているので、ここだけ読んでも面白いと思います。
私自身は、3時間労働になったら結構楽しそうだなと思っていて。こういうニュースが出たら注目していきたいなと思ってます。
- 羽賀
-
3時間労働って…何するんだろう。確かに、AIが注目されて、無くなる仕事は多いと言われてますよね。
- 乾
-
私は1回やってみてほしいな〜と思ってます。別に働くことを制限するわけじゃないので、より働きたい人は3時間以上働けばいいし。例えば学校に行きたいとか、自分がやりたいことに時間を費やせる方が有意義なんじゃないかな、と。
- 羽賀
-
怠けたい人とそうじゃない人の差が開きそうですね。
- 乾
-
ベーシック・インカムでみんなにお金を渡すと、貧困層の人が無駄使いするって意見が出るんですけど、実際は貧しい人ほど「何にお金を使うべきか」知ってるから、ちゃんとした使い方をするそうなんです。なるほどなぁと。
- 村上
-
スイスが導入するかどうか議論してたような…もし、自分が生きてるうちに導入されたら、ちょっとコワいような気もしますね。
見えない人間の肖像、という哀しみ
『孤独の発明』(紹介者 村上 伊左夫)
- 村上
-
以前紹介された、池波正太郎さんの『男の作法』と一緒に、ポール・オースターの『孤独の発明』を買ってみました。オースターがニューヨーク三部作などで本格的に注目される前に書かれた初期の小説です。作品は2部にわかれていて、第1部「見えない人間の肖像」を読み終わったところですが、これすごく好きだなぁと思いながら読み進めていました。
主人公は作者自身で、父親が亡くなった報せを受けたところから始まります。家に行き、父親の遺品を整理したり、父との思い出を遡っていくなかで、実は、父のことが全くわからないという事実に突き当たります。
父という人間が、他人と表面的にしか関わらないように「作っている自分」でやり取りすることに終始していたということ。コミュニケーションが苦手だったから、内面を見せずにパターン化することで、そんな父でも他人と関わりを絶たずに生きていけたのかもしれない、ということ。
そんなことを描いた一節があって、すごく哀しい気持ちになるんですが、すごく惹かれるというか...ハマりました。オースターを初めてちゃんと読んだ気がしています。
- 乾
-
読むとズーーーんとなりそうです...
- 村上
-
主人公を通して、父という人間を見ていく話なので、父親の方に投影しながら読んでる感じです。何ともいえない哀しさがあるんですけどね。
- 羽賀
-
主人公と父親、どっちに投影するかで感想も分かれそうですね。
- 村上
-
私自身、コミュニケーションが得意ではないので、父親の方に似たものを感じてるのかも。話してるけど、話してないというか...存在が感じられないようなことって、この父親ほどじゃないけれど、自分にもあるような気がします。
読み手への「敬意」が、伝わる文章をつくる
『街場の文体論』(紹介者 羽賀 敬祐)
- 羽賀
-
僕が持ってきたのは、内田樹さんの『街場の文体論』です。
去年、神山ものさす塾の2期生として、Webライティングの講座を受けたときに、講師の栃澤桂司さんが「ぜひ、読んでみてほしい」と紹介してくれたんですけど、なかなか手に取る機会がなくて。少し前に、本買いたいな〜と思ったときに、あ、そうだ!と思い出して、やっと買うことが出来ました。内容は、内田樹さんが神戸女学院大学で行った「クリエイティブ・ライティング」の講義をまとめたものです。内田さんが同大学で行った最後の講義だそうで、どういう風に文章を書けばいいのかということが、第1講〜14講まで順番に掲載されています。
第1講は「言語にとって愛とは何か?」というテーマで、その中で「書くということの本質は、読み手に対する敬意に帰着する」と述べています。「情理を尽くして語る」ことが大事だと言ってるんですね。
まだ第1講しか読んでないんですが、これからどんな風に内容が展開していくのか、読み進めるのが楽しみです。僕自身も仕事で文章を書くことが多いので、クリエイティブなライティングができるように役立てたいなと思ってます。
- 村上
-
普通のライティングとどう違うんですか?
- 羽賀
-
人に伝わる文章、というか。本当の意味で「人に伝わる」文章を書くには、自分の中に想像上の読者がいて、その人に向かって文章を書くことが大事で。誰かに読んでもらうには、その「誰か」を自分の中に作り出して書くという、ある種の客観性が必要だと言ってます。
- 村上
-
何人も必要ということ?
- 羽賀
-
うーん、沢山というわけではないかも…ただ、想定する読者に対して「こう書いておけば伝わるだろう」と安易に形にするのはダメなんです、相手を見下してるから。大事なのは、相手にちゃんと伝えたいという気持ちなんですね。
- 乾
-
なかなか難しそうですね…
- 羽賀
-
ただ文書を書いても、なかなか人には伝わらない。読み手への「敬意」を忘れずに文章を書いていきたいです。
読書会をおえて
気鋭の歴史学者による新しい働き方・生き方の提唱、人の内面をさまようような自伝的小説、そして言葉にとって愛とは何か、というライティング論。
読書の秋にふさわしい、三者三様のセレクトが光った読書会でした。
さて、次回はどんなテーマになることやら。それでは、また!