2018年04月20日
なんで好きなのか考えてみた
漫画家 市川春子編
品質管理部の乾です。
私は探究心が強いようで、好きになった本や映画や音楽などについては、徹底的に調べたくなります。
言語化することで、そのものの魅力を再認識することができるので、ものさすサイトで記事を書いたり、読書会で紹介したりすることはいい機会だなと思っています。
こんな性格からか、好きな理由を聞かれても「なんとなく」とテキトーな感じでしか答えられないことが申し訳ないような気がしています。
今回は私が好きな漫画家の市川春子さんについて、真心をこめて好きな理由を考えてみました。そして彼女の魅力をお伝えしたいと思います。
市川春子さんについて
1980年千葉県出身の漫画家。2006年「虫と歌」にて、アフタヌーン四季賞2006年夏の四季大賞を受賞しデビュー。初長編「宝石の国」が2012年よりはじまり、「このマンガがすごい!2014年」オトコ編第10位になりました。
漫画以外にも、星野源さん「桜の森」アナログ盤ジャケットを手がけるなど、多彩な活躍をされています。
作品をご紹介
虫と歌
読み切り作品を収めた短編集で、初の単行本作品。
第14回手塚治虫文化賞新生賞受賞。
全5話のうち「ひみつ」は描き下ろしです。
25時のバカンス
市川春子さんの作品のなかで私が初めて読んだ作品で、短編集の第2弾です。
タイトルでもある「25時のバカンス」では、海洋学者自身の体が貝に侵食されてしまいます。読書会でも紹介しましたが、とにかく貝たちの会話がかわいい。
これを読んでからは、魚介類を食べるとき「もしかしたら私も...」と時々想像しています。
宝石の国
初の長編作品で「月刊アフタヌーン」にて連載中。アニメ化もされました。
主人公は宝石。彼らをを奪いにくる「月人」との戦闘や、日々の生活が描かれています。
特装版の付録が豪華な点もおすすめです。
こちらは、「宝石の国」7巻の特装版付録「ILLUSTRATION BOOK」32ページのミニ画集。表紙は描き下ろしで、主人公のフォスフォフィライト(硬度三半)が描かれており、加工されてぷっくりしています。
市川春子さんとの出会い
出会いは中野のまんだらけでした。ある日漫画コーナーをふらふらしていたとき、なんとなく手に取ったのが「25時のバカンス」でした。タイトルが面白そうで、表紙もかわいいなと感じました。
私は漫画以外でもそうですが、ジャケ買い(パッケージの印象で買うこと)することがほとんどです。せっかくなら新品を買おうと思い、スマホにタイトルと作者をメモしておきました。
後日、市川春子さんについて調べてみると北海道在住ということがわかり、この時点で好きフラグがたったのです。
私は父が北海道出身だからなのか、北海道要素をかぎ分ける能力があるようで、気になっていた人の出身地や居住地が北海道だと「ほら、やっぱりね」と妙に納得してしまいます。
現に私が好きなエラーくんや、サカナクションの一郎くんも北海道出身です。
それから、私は好きなものの名前をとても気にいってしまうのですが、自分の名前もそれになりたいと思うかが、好きのバロメーターになっている気がします。
例えば私はフル-チェが好きですが、あだ名がフルーチェになってもちょっとうれしいと思える、という感じです。
市川春子さんに関しては、私も「春子」になりたい(市川でも可)と思っているので、相当好きなんだと思っています。
市川春子さんの魅力
漫画は画風で好みが大きく分かれると思います。
「面白いけど、絵があまり好きではない」というものもありますが、市川春子さんの絵は、描かれる人物が華奢で色白、顔は鼻が小さく、目が大きすぎないところが好きです。
作中にでてくる建築物も好きです。天井が高いものが多く、階段や柱の感じが良いのです。ここに住みたい、この場に行きたいと思いながら読んでいます。
また、不思議な設定が多いのも魅力です。
「虫と歌」「25時のバカンス」では、身体の一部を失い、再生させる話がでてきます。
その過程にゾッと感じるところもありますが、決してこわい話ではなく、セリフや画風のバランスも絶妙で奇妙な美しさを感じます。
それでは具体的なおすすめポイントを現在連載中の「宝石の国」から3つご紹介します。
おすすめポイント1
本当にありそうな世界
そもそも主人公が宝石とは?と思うでしょう。
見た目は人型で、恋バナが好き、戦闘狂など、それぞれ性格も異なり個性的。
登場する宝石たちはすべて実在する鉱物で、硬度と戦闘力が比例している設定にもなんだか説得力を感じます。
遊んで、戦って、寝て、また朝起きて、というほぼ私たちと同じような生活をしてるのかと思います。(食事シーンはみたことがない)
そんな彼らを装飾品にすべく、月からやってくる敵「月人」が襲いにくるのです。
第1話の冒頭にでてくる、この国の成り立ちの序文をご紹介します。
この星は6度流星が訪れ 6度欠けて6個の月を産み痩せ衰え
陸がひとつの浜辺しかなくなったとき すべての生物は海へ逃げ
貧しい浜辺には不毛な環境に適した生物が現れた月がまだひとつだった頃 繁栄した生物のうち逃げ遅れ海に沈んだ者が
海底に棲まう 微小な生物に食われ 無機物に生まれ変わり
長い時をかけ規則的に配列し結晶となり 再び浜辺に打ち上げられた
それが我々である
宝石たちは「にんげん」の存在を知らないほどの、遠い未来の時間軸で物語は進んでいきます。
序文のような出来事が、これから本当に起こるんじゃないかとも思えます。
あるインタビューで市川春子さんが「石というのは、私達と違う時間軸で動いているんですね。不死だとも言えるし、ダイヤモンドなんて一億年かかってできている。長く生きている彼らはどんな日常を送っているのかな?ということは、描きながら常に考えているつもりです。」と語っていました。
おすすめポイント2
ハッとするセリフ
また、市川春子さんは「私が漫画を描く理由は、世界や人間を知りたいという探究心から」。
「人間の性質の秘密を、多少なりともつかみたいという気持ちが大きいです」と語っているように、哲学的なセリフがたびたび出てきます。なかでも私が好きなセリフは6巻にでてきます。
「仲間が敵に連れ去られたにも関わらず、彼のことを思い出すことが少なくなった自分は薄情なのか」と相談したときの先生の回答がこちらです。
心情や物事は決着がつく方が稀で 完全で最終的な決着がつくことを奇跡という
それは自力で引き寄せることはできない ある日突然訪れる
歪んで見逃さないように 悲しむのも忘れるのも自然でいなさい
良い事も悪いことも、これを心得ていれば大体のことは大丈夫だと思っています。
おすすめポイント3
キャラクターが魅力的
宝石たちは手足が長く、月人との戦闘シーンは激しくもとてもしなやかです。
市川春子さんが仏教を学んでいたことから、敵の姿はそれをモチーフにしているようです。
命がけの戦闘ばかりではなく、ほわほわした日々の生活や、それぞれの役割(医務、服飾、戦略計画など)も描かれています。
特に私のお気に入りはウォーターメロン・トルマリン(メロンちゃん)の怒り方です。
「む~っおこった!」といって怒ります。
絶対に怒ったときにそんなこと言いません。漫画だからかわいいのです。
ちなみにメロンちゃんはストレスがかかると帯電します。
いかがでしたでしょうか。「宝石の国」は現在8巻まで出ていますが、発売されるペースが約半年に1巻なので、今から読みはじめても余裕で追いつけます。
この記事にある画像からもわかるかと思いますが、私は6巻が特に気に入っていることに気づきました。
今回じっくり考えてみて、私は好きなものの基準が比較的はっきりしているほうなのではと思ってきました。好きになった経緯や理由に納得ができるとうれしいですね。
これからも市川春子さんへの愛を爆発させていこうと思います。
参考:市川春子さんインタビュー
イマ輝いているひと、市川春子「ダイヤの一億年を考えながら、人間の秘密を探してる」
2014年4月8日 https://cakes.mu/posts/5370
2014年4月22日 https://cakes.mu/posts/5371