2018年04月27日
Open Marketingのはじめかた
Step.4 自分を開く -その1-
みなさん、こんにちは。モノサス代表の林です。
前回まではOpen Marketingのはじめかたとして、
Step.1 顧客を信じる
Step.2 自分を信じる
Step.3 力を集める
と、お話しをしてきました。
Step.4では、「自分を開く」をテーマに
顧客とのコミュニケーションのあり方を見つめ直してみたいと思います。
自分を開く、とはこの連載の第一回の冒頭にお伝えした、
Open Marketingの基本的な考え
“これまでのように、自分たちの「よさ」を
相手におしつけるかのように主張するのではなく、
自分たちの会社のあり方、考え方、行動を
正直に伝えるという「ひらく」行為によって
ゆっくりと感じとってもらう。
顧客を集めるのではなく、集う。
売るのではなく、価値を交換する。
つなぎとめるのではなく、つながる。 ”
を実践するためのものです。
あまり比較したり、一般化しないほうがよい面もありますが、
顧客とのコミュニケーションについてのあり方を
どのように変化させると、顧客とのつながり方が変わってゆくのかについて
お話してみたいと思います。
自分を開くための、5つの価値観。
Open Marketingでは、たくさんの顔の見えない顧客を集めることよりも
コアカスタマーと繋がり続けることを目指しています。
そのための顧客とのコミュニケーションにおいて考えるべきことはたくさんありますが、
おもに、誰に伝えるのか(伝える範囲)、なんのために伝えるのか(伝える目的)、何を伝えるのか(伝えるもの)、どのように伝えるのか(伝えかた)、
どれくらいの時間をかけて伝えるのか(伝えるスピード)について考えていけば
よいのではないかと考えています。
それらの項目について、どのような価値観に基づいて伝えていけばよいのかを
お伝えしたいと思います。
これまで | これから | |
できるだけたくさんの人に | 伝える範囲 | できるだけ絞り込んだ人に |
商品・サービスを買ってもらうために | 伝える目的 | 価値観を共有してもらえるかどうかを判断してもらうために |
商品・サービスのメリット | 伝えるもの | 自分たちの行動、あり方 |
客観的事実を集めて語る | 伝えかた | 一人称の自分の言葉で語る |
できるだけ効率的に伝える | 伝えるスピード | ゆっくりと感じ取ってもらう |
1.たくさんの人にではなく、できるだけ絞りこんだ人に伝える
前回までのStep.3 -力を集める-で詳しくお話した内容ですので詳細は割愛しますが、
やみくもに見込み客を集めたり、新規客を集めるのではなく、
1on1に近い状態で対応できる範囲にまで伝える対象を絞り込むことが
とても大切だと考えています。
まず変えていただきたいのは、
「できるだけたくさんの見込み顧客を集めたい」という考えから
「自分たちがきちんと対応できる数以上の見込み顧客、新規顧客は必要ない」
という考えに改めることです。
コアカスタマーになり得ない顧客は、利益を自社にもたらしてくれないだけでなく、
自社の商品・サービスの本質を見えにくくしてしまうとともに、
コアカスタマーになり得る顧客と向き合うべき大切な時間を、自社から失わせてしまいます。
2.商品・サービスを買ってもらうためではなく、価値観を共有してもらえるかどうかを判断してもらうために伝える
企業側は、商品・サービスを一度でも買ってくれた顧客のことを、
「自社の顧客である」と考えがちです。
コミュニケーションのゴールを、商品・サービスを買ってもらうことに置いてしまうと、
そう考えてしまうのも無理はありませんが、多くの商品・サービスにおいては
顧客はあくまで商品・サービスが欲しかったから対価を支払ったにすぎず、
それを売ってくれた相手に対して「自分はこの店・人・会社の顧客である」とは
なかなか捉えないのが現実です。
商品・サービスを買ってもらうことを目的としてコミュニケーションをとるのではなく、
自社と価値観を共有してもらえるかどうかを判断してもらうために伝えるのです。
顧客がコア・エクスペリエンスにたどり着けるかどうかは、
価値観を共有できるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
3.商品・サービスのメリットではなく、自分たちの行動、あり方を伝える
多くの企業は、自社の商品・サービスを購入することで
顧客にどのようなメリットがあるのかを中心に伝えがちです。
商品・サービスを売って利益を出す企業である以上、当然のことではあるのですが、
それだけでは顧客との間に良好な関係を作ることは難しくなっています。
先ほども触れたように、顧客は商品・サービスを購入していても、
「自分はこの企業の顧客である」と考えていることは稀です。
また、企業と顧客のコミュニケーションは、企業側が都合よく編集した
商品・サービスのメリットを伝えるだけでは成立しなくなってきています。
なぜなら、企業が発信した情報が、嘘か本当か、誇張していないか、
ひとつの取引でどれくらい利益を出しているのかなどは
インターネットを通じて、たちどころに顧客の知るところとなってしまうからです。
長らくマーケティングやブランディングは、情報格差を利用して行われてきましたが、
それが通用しなくなってしまったのです。
つまり、商品・サービスのメリットは企業側が伝えるまでもなく、
顧客自身が判断できてしまう時代になっているのです。
このような時代、企業がすべきことは、
おおげさに自社の商品・サービスのメリットをプレゼンテーションすることではなく、
自分たちがどんな思いを持って、どんな行動をとっているのかを
日々伝えていくことです。
4.客観的事実を集めて語るのではなく、一人称の自分の言葉で語る
自分たちの行動やあり方を伝える際に重要なのが、一人称の自分の言葉で語ることです。
「日本で一番売れている」
「◯◯という成分が100mg入っている」
「TVでも紹介された」
という客観的事実(のように見える)を多用したコミュニケーションは、
伝わりやすい面もありますが、コア・エクスペリエンスにたどり着く可能性のない
見込み顧客を大量に集めてしまいます。
価値観を共有することが目的ですので、
自らの価値観を、一人称の自分で語ることが重要なのです。
中小企業のオーナーであれば容易なことでしょうが、
大きな企業ではハードルの高いことかもしれません。
しかし、大きな企業でこそ今必要なことだと思います。
5.効率的に伝えるのではなく、ゆっくりと感じ取ってもらう
マーケティング活動をマネタイズ化したい企業としては、
できるだけ効率的に伝えたくなるのではないでしょうか。
しかし、一度や二度のコミュニケーションで伝えきってしまおうと思うと、
すぐに伝えるための脚色が必要になってしまいます。
短い時間で相手にものを伝えようとすると、
センセーショナルなコピーや、何気ないことをすごいことに見せるための文章、
完璧な角度から撮った写真をさらに加工する、といったことが求められてしまいます。
一人称で語るということは、人間どうしのコミュニケーションに
似通ってくるわけですが、脚色された表現というのは、
ビシッとスーツを着て、スポットライトを浴びながら
プレゼンテーションをしているような状態です。
短時間で相手に物事を伝えるのには便利な手法ですが、
価値観を共有し、人間性を理解しあうのに適したやり方とは言えません。
プレゼンテーションはあくまで短時間で話者の意図を伝えるための手法であって、
長い関係性をつくるための手法ではないからです。
これらのように、Open Marketing では、急いで伝えることをやめ、
自分たちの会社のあり方、考え方、行動を「ひらく」行為によって
ゆっくりと自社のことを感じとってもらうことが大事だと考えています。
急いで伝え、既成事実をつくるかのように
関係性を無理にこじあけるのではなく、
人間関係を構築するのと同じように、自分たちが何者で、どんなことを考えていて、
どんな行動をしているかを相手に感じてもらうこと。
そしてそのためには、プレゼンテーションをするのではなく、
自分たちの考え、自分たちの行動を「ひらく」こと。
それによって、顧客を集めるのではなく、集まるような状況になり、
顧客をつなぎとめるのではなく、つながっている状態が生まれ、
企業が発展していく。
そのような状況が増えていけば、働くことがより愉しくなってゆくのではないかと思っています。
今月も最後までお読みいただきありがとうございます。