2018年06月14日
イスラム教徒の食生活。ハラールフードとの出会い
お久しぶりです。セールス部の香取です。
突然ですが、2020年東京オリンピックまで、あと2年。
オリンピックの経済効果という言葉をよく耳にしますが、その言葉のとおり、年々、日本を訪れる外国人が増え、交通やインフラの整備、宿泊施設の建設など、さまざまな業界で経済効果が期待されています。
日本から比較的近い東南アジア圏であるインドネシアやマレーシアをはじめ、世界中のイスラム教徒(以下ムスリム)が来日することも予想されます。
そんな中、食においてとある動きがあることをご存知でしょうか。
ムスリムが食べていい食品「ハラール認証」を取得しようとしている食品会社が増えてきているそうです。
国際結婚するにあたって知ることになった、ムスリムの食生活について、私の目線からご紹介できればと思います。
国際結婚でガラリと変わった食生活
すでに「仕事と暮らし・代々木」や「メンバー紹介」記事で紹介されているとおり、
私はパキスタン出身のムスリムの夫と結婚し、4歳になる息子と3人暮らしをしています。
イスラム教と言えば、何を思い浮かべるでしょうか。
1日5回のお祈り、断食、豚肉を食べない、お酒NG…などが挙げられるかと思いますが、その中で生活に最も影響があるのが食。
現在、世界におけるイスラム教徒は、約19億人を超す勢いで増加しているそうです。
世界の人口の4人に1人以上が、イスラム教徒ということになります。
イスラム法の教えでは、許されていることを「ハラール(ハラル)」、反対に禁じられていること「ハラーム(ハラム)」の2つに分けることができます。
この2つは、食べ物だけにあたるのではなく、神に許されているのか禁じられているのかを意味するため、例えば嘘をつくことや物を盗むことなどは「ハラーム」という言い方をします。
では、禁じられている「ハラーム」な食べものとはどんなものを言うのでしょうか。
多くの皆さんに知られているのが主に「豚」や「アルコール」。
豚肉は不浄なものなので食べることが許されていませんが、それ以外の牛肉や鶏肉などもイスラムの教えにのっとった食肉処理方法でなければなりません。ムスリムが解体や処理をし、神(アッラー)の名前を唱え祈りを捧げるのです。
肉そのものだけではなく、豚由来や動物性の成分を含む食品もすべて対象となるため、ポークエキスはもちろんのこと、チキンやビーフエキス、ラード、ゼリーやガム、お菓子などに含まれているゼラチン、市販のお菓子によく含まれている動物由来のショートニングなども口にすることができません。
ムスリムにとって、ハラール食品のみを口にすることは、神の教えに忠実に従うこと、つまり信仰そのものなのです。
我が家ももちろん上記をふまえて食品を調達していますが、長年ここ日本で暮らしてきた私にとって、このような暮らしに慣れることはかなり大変でした。
野菜や果物、魚、卵、牛乳など以外は、いつも原材料表記を確認しています。
当たり前のようにスーパーで購入していた肉は、ほぼ NG。
また、今までは全く気にすることのなかった、様々な加工食品やお菓子の多くには、動物性由来の原材料が含まれていることに気づかされ、食べられるものが限られていることを実感しました。
外食においても、肉を抜いたりよけたりしただけではハラールではありません。
見た目ではわからなくても、パスタのソースに動物性のエキスが含まれていたり、スープにブイヨンが使われていたり、とんかつを揚げた同じ油で揚げられた野菜や魚も食べることができません。そうなると、動物性のものを調理した同じ鍋や食器を使うことも厳密には許されないのです。(各ご家庭や信仰心にもよりますので、個人差はあります)
そのため、夫の昼ご飯は、毎日手作り弁当、息子も保育園では給食が支給されますが、同様にお弁当を持参させています。
こうなってくると、日本でムスリムが安全に食べることができる食品が、あまりにも少ないのではないか?と心配されることもよくあります。
確かにここ日本で生活することはかなり困難だと感じています。
また、食品の加工技術が発展するにつれ、ムスリムが安全に口にできる食品を判別するのが難しくなってきていることも事実です。
ハラール認証とは?
そこで、ハラールであることを保証する「ハラール認証」という制度が、1970年頃、マレーシアで始まったと言われています。
みなさん、このようなマークをご覧になったことはありますか。
ハラール認証を取得するためには、一連のプロセス全体が、ハラールに違反しないかということが重要になります。
取得するためには厳しい基準をクリアしなくてはいけません。
- 原材料がすべてハラールであること
- ハラールの飼料を食べて育った鶏や牛であること
- 宗教的に正しい方法で、ムスリムが食肉処理すること
- 養豚場から十分離れた工場であること
- ハラール専用の機械で製造され、ハラームなものに接触しないこと
-
包装やパッケージがハラームなものでないこと
またハラール認証を取得した飲食店においては
- ムスリムのオーナーまたはシェフが在籍していること
- アルコールを販売しないこと
- 提供しているすべての食材や調味料がハラールフードであること
などの規則が挙げられます。
各国、認証機関によって認定基準が異なりますので多少の誤差もありますので、ここであげているのは、一例となります。
なかなか厳しい基準のハラール。日本では食材をみつけるのは難しいのが現状です。
続いてどんなところでハラール認証を取得した食品を探すことができるかもお話したいと思います。
ハラールフードを手に入れる難しさ
1番悩まされるのは、やはりお肉です。
ムスリムはベジタリアンとは限りません。特にパキスタン人は牛肉やマトン、鶏肉を好んでよく食べます。私も夫同様お肉が大好き。
以前は当たり前のように気軽にスーパーでお肉を買うことができましたが、今はそうはいきません。
日本国内でもイスラム圏の方が多く住んでいる地域では、比較的ハラールフードが手に入りやすいようですが、そのようなお店が近くにない場合は、わざわざ遠征してハラールフード店に出向くか、オンラインショップで購入することが多いのです。
最近では Amazonでもお手軽に購入ができるようになりましたが、まだまだ種類は少ないです。
意外と穴場なのが、全国展開している業務スーパー。ここでは鶏肉や牛肉をはじめ、さまざまなハラールフードを手にすることができます。
日本に住むムスリムの間では、業務スーパーはかなり有名です。
意外とみなさんが気にせずに購入している食品の中にも、ハラールフードがひそんでいるかもしれません。ぜひハラールマークを探してみてくださいね。
日本だと手に入りづらいハラールフードですが、先日の社員旅行で訪れたタイは仏教国ではありますが、近隣にイスラム圏の国があるからなのか、機内食やスーパーでもハラール認証マークを目にすることが多くありました。
新大久保のイスラム横丁に行ってみた
それでは、実際ハラールフード店に行って食材を買ってみましょう!
代々木から2駅のJR新大久保駅すぐの場所に、ハラールフード店はあります。
新大久保といえば、韓国のお店をイメージしますが、実は「イスラム横丁」なるエリアがあるのです!
どのお店も店員さんは外国の方。お客さんもさまざまな国籍です。
お店の中に入るのにはちょっぴり勇気がいりますが、イスラム教徒のあいさつ
「アッサラーム・アライクム(assalamu alaikum)」 と声をかけてみるとあいさつを返してくれるはず。
そして日本語もだいたい通じます。
店内に入ってみましょう。
スパイスの香りにつつまれています。
今回はこんな食材を買いました。
ムスリムにとって最も神聖な月、ラマダンが始まりました
今年も、「ラマダン」の時期となりました。
ラマダンとはイスラム暦の9番目の月のこと。毎年11日ほど前にずれていくのですが、今年は5月17日から約1か月間続きます。
ラマダンと言えば「断食」と思いうかべる方が多いと思います。まる1か月も飲まず食わずの断食をするの?大丈夫?と思われがちですが、そうではありません。
日の出から日没、つまり太陽が出ている日中の飲食が禁じらてれいるのです。
水を飲むことも許されません。
ムスリムはこの期間は、断食をすることによって自制心を強め、また恵まれない人々の気持ちを身をもって経験することによって、神に感謝をささげます。
つまり一年で最も神聖な月なのです。
この期間の食事は、普段と大きく違っています。
日没後、初めてとる食事を「イフタール」と言います。国や家庭によっても違いますが、我が家は甘いジュースとナツメヤシ(デーツ)、フルーツ、天ぷらに似ているパコラが定番です。
1か月続くラマダンが終わると「イード」というお祭りが行われます。
また機会があれば、ラマダンの様子もお伝えできればと思います。
「アッサラーム・アライクム」と呼びかけて
ハラールフードについて、いかがでしたか。
食文化からイスラム教を身近に感じていただけたらうれしいです。
ヒジャーブ(イスラム圏の女性がかぶっているスカーフ)をしている方の多くは、ムスリムです。
街中でお見かけしたら、「アッサラーム・アライクム(assalamu alaikum)」と声をかけてみてください。「ワアライクム・サラーム」と笑顔で返してくれるかも。
またコンビニやレストランでは、日本語が読めないため、豚が入っていないか気にしている観光客を目にすることがあります。原材料をみて、肉やゼラチンなどが入っていないか手助けしてあげると、きっと喜んでくれるはず。
ぜひ身近な国際交流がここから生まれてくれるといいなぁと思います。