2018年06月15日
マーケット・フェスティバルで街を盛り上げる
『MARKESTA on らんぶる街』を開催して
こんにちは。デザイン部の榛葉です。
今回は、私がこれまでの約2年間にわたり、主にデザインで関わってきた、地元の良いものを集めるマーケット・イベント、『MARKESTA(マーケスタ)』について、先のゴールデン・ウィークに開催した『MARKESTA on らんぶる街』を中心にご紹介します。
MARKESTAとは
MARKESTAとは、神奈川県の藤沢や鎌倉、茅ヶ崎などの湘南地域を中心に活動するクリエーターやショップが集まるマーケット・イベントで、Market〔マーケット(英)〕+ Festa〔フェスタ(伊)〕の造語だ。
運営メンバーは、私と髙橋創平さん、小柳洋太さんの友人3人。
高橋さんは鎌倉市出身のフォトグラファーで、このイベントの発起人。以前に私の自己紹介記事のメイン写真を撮影していただいたのも彼だ。広告の仕事をしながら、年に数回海外へ旅に出かけ撮影するなど、精力的に活動している。そんな彼がオーストラリア滞在中に、街で開催されるマーケットの楽しさに感銘を受け、帰国後に地元湘南でも同じようなマーケットを開催できないかというように考えたことをきっかけに、このイベントは始まった。
もう一人の小柳さんは鎌倉出身で、来歴15年の藤沢発のアパレル・ブランド『Lafayette(ラファイエット)』の創設メンバーであり、今やニューヨークにお店を構える規模として活躍している。Lafayetteは出店者としても第1回からほぼ毎回参加しており、人気も抜群で多くのファンを集客している。
イベント初期は、藤沢駅北口にあるレストラン『FreeCulture』を中心に計8回開催。規模は飲食店の1階と2階の店内とテラス、目の前の道路を使って、6〜7店舗の出店者に、主催者やショップの顔見知りが足を運んでくれた。
私は、第2回目の開催からフライヤーのデザイン制作を依頼いただき、デザインをメインに携わりながら、会場の装飾や、各種準備や片付けなどの運営を自然に手伝うようになっていた。
2017年に入って、茅ヶ崎のアンティーク家具店『Mar-Vista Garden』での開催が決まり、店内と庭が使えるという、これまでよりも規模が拡大したため、出店数も14店舗へと拡大することになった。規模の拡大により、集客やコンテンツの拡大のチャンスと考えた私たちは、もっと大々的にプロモーションしながらイベントを盛り上げたいと考え、現在の3名が中心となって本格的にイベントを作り上げていく体制を整えることになった。
そうしてMar-Vista Gardenでの2回の開催を経て、少しずつ認知が広がったと肌で感じていた私たちに、藤沢駅南口の『らんぶる街』という駅前の商店街で開催しないかという話が舞い込んだ。
初の公共の場所での開催
新たな会場となるのは、JR藤沢駅の南口、ファッションビルOPAの裏側一帯の商店街『らんぶる街』。飲食店や飲み屋が連なる、どちらかというと夜の街のため、日中は休日でも比較的人通りが少ない場所。
だが、公共の道路を歩行者天国にして開催できるのだ。知りあい伝で集客していたイベントを、さらに規模を大きくし、より多くの人に体験してもらうチャンスが来たと、私たちの気持ちは高鳴った。
MARKESTAのことを気に留めていただいていた『らんぶる商店会』からは、商店街で注目されるイベントを開催することで、イメージアップを行いながら、会員数を増やせたらという期待があることも伝えられた。
さっそく1月末に3名で集まり、商店街からの依頼を共有し、どのような規模で開催できるのか、イベントの具体的なイメージを話し合った。
それからは、週に最低1度の打ち合わせを設け、手探りしながら決められることから決めていく。最初に決まった開催日は初夏を感じるゴールデン・ウィークのスタートである4/29(日)。天気さえ晴れれば、カラッと乾いた日差しの暖かい最高の気候になるはず。
そこに照準を合わせて、約3ヶ月に及ぶ長いようで短い仕込みが期間が始まった。
地域のイベントとして開催すること
路上での開催が初めてということもあり、必要な設備や装飾の手配、出店店舗の集約など、大枠から細かなことまで、手探りで進めることが多いため、後半にしわ寄せが来る事項も多くあった。
これまでと大きく異なったのは、商店街が関わっていることで公共性の高いイベントとしてアピールできるため、地域に関わるイベントとして打ち出すことができること。
そこで、地域のイベントに数多く関わる方や、市議の方などに相談し、最終的には藤沢市の後援をいただいて開催できることとなった。このことで、告知物の掲載を公共の場所へ掲示しやすくなったので有難い反面、ポスターのデザインも今までとは異なるアプローチが必要ではないかと頭を悩ませた。
イベントのデザインを統括すること
私の担当は主に、出店者の集約と並行しながらメインの告知物となるポスター制作を行っていくことだ。今回は告知物のデザインをするにあたり「公共性」を重視し、ポップでわかりやすいデザインから作成し始めた。メンバーに共有したり、他のデザインの仕事に携わる知人に相談したりすると、なかなかよいのではという反応をもらった。
しかし、じっくり見ていくと、元々のイベントの雰囲気から外れたものということに気づき、もっとイベントの色を出した方が良いという意見も上がった。結局3案を作成し、3案目でようやくこれまでのイベントのカラーを出した案としてまとまった。
その他にも、フライヤーや入り口のバナー、オリジナルのマーケット・トートバッグのプリント、店舗名を記載する看板や、プロモーション用のステッカーなど、手を動かすことは多々ある。これまで作り上げてきたイベントのイメージから外れることなく、新鮮な印象も与えられるようなものの制作に、さらに頭を悩ませることとなる。
結果画像のようなデザインへと仕上がった。これまで積み上げてきたものをちりばめながら、時間が足りないところは、別のデザイナーに手助けしてもらいながら、雰囲気を作ることができ、良い結果となった。
しかしながら、今回手探りで始まったこともあり、実現できなかったことも多々ある。デザイン面で言えば、藤沢市の後援を取れたことで、市内のJR線や江ノ電、小田急線の駅、街頭、公共の施設などにポスター掲示ができる可能性ができ、許可申請なども行なったが、日にちが足りずポスター掲示に至れなかったこと。次回は出店者のブッキングを迅速にし、告知物をより早く制作することで、そうした公共へのアプローチにチャレンジし、集客の範囲をより広範囲へと拡大して盛り上げたい。それには、デザインを差別化したりと、また新たな課題もあるだろう。
当日は大盛況
開催日当日、普段は休日でも日中は人通りが多くないストリートだが、オープンの11時過ぎにはたくさんの人が押し寄せ、正午には人が溢れかえっていた。どうなることかと不安もあったが、それは一瞬のうちに消え、終始夢を見ているような感覚になっていた。
何よりも、世代を超えたたくさんの方に足を運んでいただき、目指していた雰囲気以上の活気が溢れた。トラブルもなく、誰もが笑顔でショッピングを楽しんだり、会話で盛り上がったり、子供達が駆け回ったりと、藤沢の街のパワーを存分に感じることができたのだ。
地域を活性化するコミュニケーションの場であること
これまで、音楽を楽しむことを中心とした屋外でのミュージック・フェスティバルの主催や手伝いをしたり、ライブハウスや飲食店で開催される多くのライブやDJ、トークのイベントを経験してきた。ミュージック・フェスティバルは、アウトドアやレジャーなどの複線としての役割も果たしている。非日常的な時を過ごす、家族で手軽に楽しめる休日の過ごし方の選択肢になるほどに浸透したと言える。
それに反して、マーケット・イベントは、日常の延長線にある“ショッピング”を主体にしたイベントのため、来場するお客さんには、より買い物を楽しんでいただきたいというコンセプトがある。さらに、「フェスティバル」と銘打っているからこその、買い物そのものを楽しむだけでない「何か」があってこそ、特別なものになると考えている。
その「特別な何か」とは、その場に行くことで多くのコミュニケーションが生まれ、「ここにいて良かった」と感じてもらえることなのではないかと考えている。
例えば、今回の『MARKESTA on らんぶる街』は、意図していないが、藤沢を中心とする街の洋服屋さんが出店者の7割を占めた。最年長は来歴30年を超える古着屋を経営しているバイヤーの方で、最年少は3月に古着屋をオープンしたばかりの21歳の女性。
そんな世代を超えて交流できる場として、集うお客さん同士のコミュニケーションはもちろんだが、街の中の横のつながりが多く芽生えることで、同じ地域で活動するお店同士の情報交換や、コラボレーションなどが生まれ、より活性化されたカルチャーが継続していくことが理想だ。そういった交流のなかで良いものが受け継がれ、新たに世代を超えて楽しめるクリエイティブが創出されるなど、『MARKESTA on らんぶる街』は多くの可能性を秘めていると今回開催して強く感じた。、新たな可能性が広がる催しとして、イベントそのものも成長していけるのではないだろうかと思っている。
それを実現させるための軸にあるものは、「楽しそう」「売れそう」「かっこいい」などの外から見たイメージから「出店料を払うから出店させて欲しい。」というただの催事の場としての場を提供するのではなく、会場へ足を運んで、イベントの雰囲気を肌で感じてもらい、イベントを楽しんでもらった中でのコミュニケーションから、新たな出店者や協力者が広がっていくような、つながりを育む母体として運営を続けられたらと考えている。
これから、より多くの方にMARKESTAを知っていただきたいという気持ちがあるため、プロモーションにも多くの工夫が必要になる。とにかくMARKESTAの雰囲気を体験して共有することで広がってゆきたいからだ。
先日の開催の後、友人・知人から「商店街のより広範囲で開催したら」とか、「出店数を多くしたらもっと大きなお祭りとして楽しめる」という声もいただき、期待してもらえることに感謝している。
しかしながら、イベントそのものの規模は、3名が中心となって回せる規模くらいがちょうど良いという感触もある。らんぶる街での開催は、今回の開催規模がちょうどよい感じだったのではとも思っている。規模を大きくすると、警備などスタッフの人員確保が必要になってくるし、言葉では説明できない何かが薄まっていくような気がするのはどんな組織でも同じではないだろうか。それよりは、内容を濃くして、より多くの人にもっと楽しんでもらえるように、印象(思い出)に残る充実したコンテンツを盛り込んでいきながら、常に変化を楽しんでもらうことの方に注力したい。
もしももっと大きな規模で開催するのであれば、場所や開催時期を変え、それに合うようなコンセプトを別立てし、そこでの新たなフェスティバルを作り上げていく方が良いのではと考えている。
実際に、別の場所で開催しないかという誘いもあり、すぐには実行できないものの、新たな場所で、その土地にマッチしたイベントを適材適所で考えるのも楽しそうだとワクワクしている。
これからのビジョン
今回の開催を経ていちばんに感じたことは、他に類を見ない藤沢駅前の独特の雰囲気を、良い意味で爆発させ、老若男女や世代を超えて多くの人に楽しんでいただけたイベントとして成功できたということ。たくさんの反響をいただき、それだけで開催した甲斐があった。
街には盆踊りや商店街のイベント、市が開催するフェスタなど、多くのイベントごとが存在する。継続するものや、なくなるものものある中で、このイベントが多くのファンを作りながら、毎年の楽しみとして定着していくことを目指したい。私たちがさらに楽しいイベントとして盛り上げ、特に10代〜20代の世代にも足を運んでもらえるようなコンテンツを盛り込み、バトンを渡して永続的に繋がってゆくことができれば何よりだ。
実際に、遊びに来てくれた大学生の数名が、MARKESTAに感化され、見習ったマーケットイベントを開催したいという気持ちが生まれたということを聞くことができた。その際に、もちろん同様のイベントが増えていくことも望ましいが、まずは私たちのイベントの制作に関わってみないかと誘ってみた。昨今カルチャーがミニマルになってゆく中で、それらを集約しながら育む器としての機能こそがMARKESTAであると考えるからだ。
そうした新たな世代の声や意欲をも取り込みながら、地域らしいカルチャーが育ってゆき、世代がスライドするたびに変化しながら継続していけるような器こそが、これから重要になるだろうと考えている。
最後に
かれこれ住み始めて11年の月日が流れるこの街は、気がつくと第二の故郷のような場所になっている。そんな藤沢の街に、地域の感性を刺激し続けるようなイベントが継続し、そこに行けば街のハイセンスなことが丸ごと体感できるような場所として育っていくことこそが今の時点で目指す未来だ。
次回は9月の開催が決まっている。それまでに、オウンドメディアや動画撮影の構想に取り掛かりたい。まだまだやりたいことはたくさんある。
MARKESTAへ、これまで培って来たデザインを通して関われていることを誇りに思う。メンバーや参加者一人一人の成長が垣間見えるイベントとして、これからも大切にしたい私のライフワークだ。