2023年12月29日
繋がるひろがるスパイラル
~『ものさすビールをつくろう』第3弾@2023~
今を遡ること3年前、2020年。
ビールに極熱の情熱がある私と大久保さんが、ものさすサイトの予算を使ってやりたいことに挑戦する「探究型」の制度を活用して、常陸野ネストビールの手造りビール工房にてものさすビールをつくる機会をいただきました。その体験からさらにビールに賭ける想いが膨らみ、2022年、ものさすビール第2弾に。そして、今年2023年に第3弾に挑戦しました。
これらの体験で得た気づきや学びについての熱い振り返りを、対話形式で2回の記事に分けてお届けしています。
今回はその後編。第3弾の振り返りとなります。(前編の記事(第2弾の振り返り)はこちら)
はじめに:第3弾のコンセプト
第3弾のビール造りをはじめる前に、今回やりたいことは何か、改めて整理しました。
- ①さらにもっとおいしいビールがつくりたい。
第1弾、第2弾での反省を踏まえ、ただただビールをつくるだけではなく、提供する場や提供のしかたも丁寧なプロセスを踏みたい。 - ②社内のコミュニケーションを活性化したい。さらに、社内だけでなく、ご家族や身の周りの誰かとのコミュニケーションの鎹(かすがい)になれるとうれしい。
そのきっかけとしてビールがあったらいいな、と。
社内のみんなや身の周りの誰かとのコミュニケーションが滑らかになる・輪がひろがるひとつのきっかけを、ものさすビールを通して地道に丁寧につくっていくことで、いろんな血行が少しずつ(気がついたら、雪だるま式?いもづる式?に展開していく感じで)促進されるといいなと思っています。
こんな想いをまとめて、第3弾がスタートしました。
OGA BREWINGさんとの出会い
児嶋 第2弾のビール、ホワイトエールの方はもう、ほぼ完璧!いい感じにできた印象なんだけど、IPAの仕上がりがなんせ心残りで。もしかしたら、あのワークショップ的な枠組みだとガツンの限界値を迎えてるんじゃないかってことで。第3弾はちょっと別のブルワーさんで挑戦してみようと。
大久保 三鷹にあるOGA BREWINGさんに飲みに行ったときに相談をしたら、オリジナルのビール造りが出来る、というのでやってみよう!となりました。
児嶋
大久保さんに紹介してもらってOGA BREWINGさんのWEBサイトを見たら、
"「世代間を越えたコミュニケーションと笑顔が産まれる場所」をビールで創りたい"
って書いてあって。
このブルワーさんとだったら、同じ想いでビールを造れるかもしれない!って思って。
お店に伺って、ビールを飲みながらお話させていただいたんですが、ビールもおいしかったし、すごくいい雰囲気で。ぜひお願いしようと決めました。
最大の課題:800本!~ピンチが突破口に!
大久保
ただ本数の問題が出てきてしまって。
常陸野ネストさんのときはホワイトエールとIPAで合計90本だったんですが、OGA BREWINGさんの最低ロットは800本で。
児嶋
800本をどう捌くか?が、今回の最大の課題でしたね。
で、どういう提供の場があってそこに何本だせそうか?って2人で鉛筆なめなめ皮算用表を作ったんですが、350本くらいしかリストアップできなくて。。
どうしよう、、飲みやすい感じに仕上げた方がいいかな。IPAじゃなくてホワイトエールでいった方がたくさん捌けるかもしれないね、って話まで出たり。
大久保 それでも800本っていうのはさすがに捌ける自信がなかったですね。
児嶋 それでビール会議を招集することにしたんです。
大久保
ビール会議は、社員食堂や給食、グローサリーのお店を運営しているMONOSUS社食研の統括をしている荒井さんと総料理長の飯野さん、クラフトビールに詳しい原澤さんに参加していただいきました。
800本の悩みを話したら、「もっと本数あると思ってました。大丈夫ですよ!」って即答していただいて。お店での販売はもちろんのこと、たくさんの本数を捌けるケータリングも年末に向けてたくさんあるということで、全く心配なしと。モノサスに食の事業が出来て心から頼もしい!と思えた瞬間でした。あっという間に悩みが吹っ飛びました。
児嶋
そこから、プロジェクトがごろごろ展開して広がっていきましたよね。
定期的に飲める場があるといいな、"バーものさす"やりたいな、って話から社食の話がでてきて、それが"居酒屋ものさす"に展開して、あれよあれよで毎月開催することになり。
ちょうどタイミングよく11月に周防大島オフィス主宰のワークショップ合宿があって、そこにもビールを送らせてもらうことになって。
大久保
運動会でもビールを楽しみにしてくれてた人が多くて、結構飲んでくれたよね。みんなのビールへの期待を感じました。
あと、今回新しく社内販売もやらせてもらうことになり。
おもしろかったのが、1本から買えるのに、1本2本の人は少なくて、6本パック2つとか、大量に買う人が多くて。やっぱりビール好きな人は、値段とか関係なく買いたいんだなぁと。1本あたり結構高いので。誰がビール好きなのかも分かりました。(笑)
もうひとつの課題:パンチ~つくりたかった味を求めて
児嶋
第1弾から継続の課題は味、「パンチ」。
第2弾の振り返りであれほどヒヨらないって決めたのに、800本の重みで迷走しかけました(苦笑)
でも、ビール会議での「大丈夫!」の言葉のおかげで本道に戻ってこられました。
大久保 代表の林さんからも、「みんなのことを思うのも大事だけど、まずは自分たちでつくりたいもの造らないとだめだよ」って背中を押していただきました。
児嶋
ということでね、パンチの探求に集中!
まずはプロに相談!OGAさんに第1弾・第2弾のレシピを見ていただいて、これまでの反省点とかこだわりポイントを細かくお伝え&相談して。対話して擦り合わせつつ今回のレシピを決めていきました。
大久保 OGA BREWINGさんのビールをいくつか飲ませてくれて、どんな感じでいこうかっていう相談をしたよね。
児嶋
まずは、とにかく"パンチを出したい"ってのと、"柑橘感を出したい"って話をして。
柑橘感って、松っぽい(パイニ―)とかレモンぽい感じの方向と、オレンジとかトロピカルな方向とあって。それで使うホップが違うのね。で、パイニーな方じゃなくてトロピカルな方で、ニゴニゴジューシーな感じにしたいって相談しました。
大久保 飯野さんから出たたくさんの質問にも、OGAさんに答えてもらったりして。
児嶋 できあがったビールの味は、課題はありつつも、かなり理想に寄ってきたと思ってて、80点ぐらいまでは来てる感じ。
大久保 そうそう。来てる来てる。
児嶋
一口のむと、最初にふわ~って香った後、コクというか味の濃ゆさがきて、最後にIPAの苦味が来るんだけど、今回意外だったのが、締まりのよい後味。IPAって、苦いえぐみが残りがちなんだけど、スーっと消えてく感じが爽やかで、アルコール度7%を感じさせない驚異の飲みやすい後味だったんです。
ただ、願わくばもう半歩ぐらいパンチが欲しかったかな。でも第2弾よりも格段によく仕上がったと思ってます。
ちなみに、みんなに「呑んだ後、ぜひゲップしてください」って言いまわってる(笑)
大久保
鼻からね、ふわーっと香りが抜けるんだよね。
でも確かに少しパンチが足りない。
児嶋 お料理とはすんごく合うけど、ビール単体だともう半パンチくらい。
大久保 ですよね。でもかなり精度は高くなって、売れるビールになってきた気がしますね。
児嶋
みんなの飲みっぷりをみて、本当においしくできたんだなって思えました。
先日、周防大島でのワークショップにあわせて"居酒屋ものさす"をやることになったので、1ケース(30本)送ったんだけど、参加者15人くらいなのに全部なくなってびっくり!!
児嶋
あと、今回初の試み、ビールサーバーで生ビール!
これがね、香りも味も濃くてさらにおいしかった!!
大久保
おいしかったー!
あっという間に飲んじゃったね。
児嶋
あと、クラフトビール特有の変なオラみ(個性的な強い味の主張)がなくてよかったなと。
運動会では、遠くから集まってきたりお久しぶりの人もいたり、っていうみんなのワイワイの中にビールが馴染んで居る景色にじんわり感動しました。
居酒屋ものさすも、まず飯野さんの料理がとにかく美味しいってのがあるから、みんな来てくれてると思うんだけど、そこに寄り添わせてもらえた感じがうれしかったし、「料理とビールがよくあうね」って言ってもらえたのがうれしかった。
から、いろんな鎹のひとつになれたんじゃないかな、と思ってます!
繋がるひろがるスパイラル①
児嶋
ビールが人と人を繋げてくれたのは提供する場だけにとどまらず、"造るプロセス"でも体験しました。
ビール仕込み当日は、ラベルデザインを担当してくれる竹田さん・林洋介さん、バックオフィスの田崎さんが参加してくれました。
仕込みのプロセスは、前回までのように最初から最後まで全部人手で造るのではなく、OGA BREWINGさんの本場の設備で、基本的にはOGAさんが、要所々々のグルグルとか測ったり投入したりのお手伝いを我々がして、約1日かけて麦汁を造りました。
児嶋
今回の仕込みですごいなと思ったのは、我々のトラウマ、"スーパージング"!
第2弾まではじょうろとピッチャーを使ったスクワットな手作業だったんですけど、OGAさんの釜の中にはシャワーみたいなのが付いてて、全自動スパージング!!
本場の設備、ステキ♡でしたね。
もういっこ思ったのは、OGAさんってやっぱビールオタクなんだな~と(笑)
仕込日から何日か経った日に、「酵母が元気に糖を食べてくれてるよ~」っていう動画を送ってきてくれて。
大久保 タンクから出ているチューブが水に浸ってて、ちゃんと発酵しているとそこからブクブク炭酸ガスの泡が出てて。それを見ているだけでお酒の飲めるって言ってたよね。(笑)
児嶋 ビールに愛があるなと。ほんといい人に巡り会いました。 OGAさんね、"居酒屋ものさす"で完成したビールをお披露目する回にも来てくれて。
大久保
どこにいるかわからないくらい、ふつうにモノサスに溶け込んでたよね。
人が好きだね。オガさんは人もビールも好き。
初めてOGAさんのお店に相談に行ったときも、なんか初めから知り合いのようにフレンドリーだったよね。
児嶋
寄り添ってくれる感じがあって、気さくでね。
OGAさんとモノサスのみんなが繋がるというか、造り手と直接会って話ができたのはうれしかったです。
繋がるひろがるスパイラル②
大久保
第2弾と同じように、デザイナーさんにも現場に来てもらった方がやっぱりイメージ湧くんじゃないかというので、竹田さんも洋介さんも参加してくれて、一緒に麦汁をぐるぐるしました。
ラベルのデザインの作り方も聞きましたが、一緒にビール造りをしなければそんな話を聞く機会は無かったと思います。
児嶋 普段のお仕事では領域が違うから接点がなくて、まさか一緒に仕事できるなんてね~ト。
大久保 その後、ラベルデザインを4パターンぐらい作ってくれて。一つのデザインをさらに色も変えて、いくつも考えてきてくれました。
児嶋
あがってきた初稿の完成度が高くて、最初ちょっと面食らったんだけど、その後説明うかがったり、ビール瓶につくったラベルを貼ってみたりしたら、じわじわイメージするものの感覚が細胞に浸透してきて(笑)
なかにはコーディングされていて、ビールの配合を入力すると形になっていく、一緒につくっていくようなものもあって。どの案も良くて、途中すごい悩みました。
で、会社で通りすがる人たちに声かけて、どう?って意見聞いたりして、絞っていきました。
最後は、色ですごく迷ってて。黒地に白の方が、今後の展開が拡げやすいかもって、打算というかヒヨりかけてたんです。
で、デザイナーミーティング(月一で開催しているデザイナーさんの集まり)で、相談して。「"鎹(かすがい)"が人と人を繋ぐって意味なら、ピンクの方が血が通ってる感があるよね。背景の緑は、ホップを想起させるし。緑にピンクっていいんじゃない?」ってご意見いただいて。
それまでは、ビールで緑にピンクはちょっと挑戦的だなと思ってたんですけど、そのコメント聞いて、色みがある方がモノサスっぽいな、ってスッと腹落ちして。あのラベルに決めました。
大久保 あとは実際に販売してもらう FarmMart & Friends のメンバーにも見てもらったんですよね。商品棚に置くときに、この色合いだと目立つとかってアドバイスをもらいました。
児嶋 ドヤガヤした主張の強い感じにはしたくないと思ってたんだけど、他の商品と並んだときに、クランプの形と色がちょうどいいあんばいの存在感で映えててイイ感じでした。
大久保 竹田さんも洋介さんも、デザインしたのが楽しかったと言ってくれたのが、本当に嬉しかったよね。
児嶋 これもビールが繋げてくれたご縁ですよね。竹田さん洋介さんをはじめ、みんなが知恵や知見やスキルやできるとこを持ち寄って、手を貸してくれて。人と繋がっていくごとに形ができていく、というか厚みを増していくことがうれしかったです。
総括:第4弾に向けて
児嶋
第3弾プロジェクトの中でいろんな人が関わってくれて、誰よりも私と大久保さんが鎹(かすがい)の恩恵を受けた気がして、みなさんに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
こういうのを続けていくと少しずつ事業に育っていくのかも、旗を振るってこういうことなのかもしれないな、と思いました。私にとってこの体験はすごく大きくて、仕事だけにとどまらず人生のなかで大きな学びをもらいました。
この年になると、っていうか経験積んだ慣れた仕事をしてると、仕事がどう進んでいくのかある程度想像がつくじゃないですか。そんな中、ビール造りに挑戦させてもらって、知らないことに出会える機会が増えて、めちゃめちゃ楽しかったです。新たに職場体験させてもらってる感じがとても新鮮で。酒販の仕組とルールから始まり、本格的な設備での仕込み、社販のフォーム作成やらケータリングのバックヤードまで!ご縁がなければ触れることのなかった世界が盛りだくさん。
大久保 ビール造りは本当に楽しいよね。飲むまでのワクワク感がたまらないんだよね。
児嶋
緊張することもあったけど、ワクワクの連続でした。
で、今後も続けていきたいな、と。
ということで、来年第4弾をやりたいと思っています!
第4弾では、プロジェクトが自走できる方法を真剣に模索してみようと思っていて。鎹(かすがい)を今後末長く続けていくためには、循環させないとな、と。最低限利益を生まないと自走できないから、それに向けてちょっとずつさらに拡げていきたいなって思ってます。
あと、先日、MONOSUS社食研の富田さんと飯野さんからケータリングで提供したお客様の感想で「『おいしかった!』って喜んでいただけたよ。」ってお話をうかがって。ビールが繋げてくれるご縁をもっと広げられたらいいな、そのために、いろんなところでお目にかかる機会をつくりたい!って気持ちが湧いてきたのもあります。
児嶋 それから、今回やって思ったのが、ビールって生ものだから、提供するのにちょうどいいタイミングもちゃんと考えないとなって。
大久保 冷蔵品だから保管場所の確保も事前にしないといけないから、けっこう気を使うよね。
児嶋
あと、事前の告知とか説明も丁寧にできると広がりやすいな、と。
扱う数量が増えるほど、いろいろなファクターのタイミングを細かく合わせる計画が必要なんだなっていうのは、新たな課題の発見でした。
大久保
あとは原価がそれなりにかかるからね。
長く造り続けるならそこも考えないといけないよね。
児嶋
味の課題は、OGAさんともうちょっと相談して、こっちかなっていうのをすり合わせられたら整う気がしているので、来年は2回くらい出したいですね。
探究型を卒業して本格的なマイプロジェクトになっていけるように、がんばりましょ!
どうもありがとう。これからもよろしくね♡