サイトリニューアルにおいても、RFPにおいても、目的とターゲットを決めることは、最も重要な要件です。
目次
リニューアルの背景をまとめる
RFPは、リニューアルの背景から始まるのがいいでしょう。
「リニューアルに至った経緯」や「事業上の課題や自社の現状とサイトとの関わり」などをまとめていきましょう。制作会社は「なぜ、リニューアルが決まったのか?」という背景を非常に注視します。目的の理解度が深まったり、提案のアイデアの基となったりするからです。
RFPはリニューアルの要件がまとめられた資料なので、基本的には、機能的な情報がほとんどです。しかし、「リニューアルにかける想い」や「期待」といった情緒的な情報を盛り込むのもいいでしょう。それらの熱が加わることで、制作会社もリニューアルサイトをイメージしやすくなります。
リニューアルの背景の説明から始まると、それ以降にまとめられている情報を理解しやすくなるので、RFPの構成的には最初に置くのがいいです。しかし、作成する順番としては、RFPの仕上げとして、想いを持って最後に書くのもいいと思います。
サイトの目的とターゲットを決める
サイトの目的を明確に定めることは、非常に重要です。リニューアルにおける企画・設計・制作は、その目的の達成のために行われるものです。もちろん、公開後の運用も同様です。サイトに関わる全ての思考と取り組みの起点になるのが、サイトの目的です。
その重要な目的を設定する時の注意点を以下で紹介します。
目的は出来るだけ絞る
一般的に、目的は、シンプルであればシンプルであるほど、数が少なければ少ないほど、達成しやすくなると言われています。デザインやコンテンツなど、サイトの構成要素を一点の目的に集中させることができるからです。採用サイトのように、目的に応じてサイトを分ける方法が有効なのも、このためです。
「サイトで何を達成したいか?」という目的を考え始めると、ついつい「あれも、これも」と欲張ってしまったり、様々な人の意見で増えていったりするかもしれません。何でもかんでも達成しようとすると、結局何も達成できないことになりかねません。本当に伝えたいことが、届かないサイトになってしまいます。
目的とターゲットを一対に考える
しかし、BtoBのコーポレートサイトは、様々な種類の情報を扱うため、目的を絞り込みにくいものです。コーポレートサイトとして、どの種類の情報も必要になることから、複数の目的を設定することは珍しくありません。その際に押さえておきたいポイントがあります。それが、ターゲットと一対に考えるということです。
- 潜在顧客層 ⇔ 商談機会を増やして、業績アップに繋げたい
- 株主・投資家 ⇔ IR情報を強化して、長期保有や新たな投資を促したい
- 新卒学生 ⇔ 応募数を増やして、優秀でマッチ度の高い人材を採用したい
これは、ターゲットを基軸として、それぞれに目的を一つ設定していくやり方です。煩雑に多くの目的があると、達成は難しくなりますが、このように一対になっていると、整合性のあるサイト設計が可能です。目的達成に真っすぐに向かうことができます。
ただ、やはり多すぎると達成が難しくなるという側面もあります。サイト規模にもよりますが、3~5セット以内が妥当だと感じます。
複数の目的を設定する時は、「目的とターゲットを一対に」「3~5セット以内」という点を押さえておいてください。そうしないと、二兎を追う者は一兎をも得ず、という結果になってしまいます。
用途別のポイント
では、それぞれの目的とターゲットの特徴やポイントを紹介します。「サイトをどう使うのか?」という用途別に傾向があります。
マーケティングユース
業績アップなどのために、ユーザーのアクションを目指す使い方です。
- 問い合わせや資料請求など、ユーザーのアクションという行動変容を目指す
- 目的から、数値化した目標設定に落とし込みしやすい
- ターゲットは「潜在顧客」という大きな括りではなく、詳細に具体化した方が成果を得やすい
- ターゲット具体化の切り口は「属性」「行動」「思考」「感情」。これらをまとめたカスタマージャーニーの作成も有効
- マーケティング発想が必要な採用もマーケティングユースで考えた方がいい
広報ユース
文字通り、広く報せるために使います。BtoBサイトではこの用途は多いです。
- 具体的なアクションを起こす行動変容より、思考変容を目指す
- 数値化した目標設定に落とし込みにくい
- ターゲットはある程度大きな括りでよい
- 上場企業など、社会的責任に伴って重要度が増す
ブランディングユース
意図したブランドイメージの浸透や、ブランド構築のために使います。
- 企業・商品・サービスのロイヤリティ獲得を目指す
- 広報ユースの思考変容に対して、感情変容を目指す
- マーケティングユース同様、ターゲティングが非常に重要になる
- Web媒体だけではなく、他媒体との一貫性が重要になる
オペレーションユース
オペレーションの効率アップのために使います。
- 代理店や社内向けの情報共有を目指す
- 顧客に対するアフターサポート情報の充実で、電話対応コストの削減を目指す
- アフターサポートの強化は、生涯顧客化というCRMの観点も入ってくる
- CRMは、マーケティングユース同様、ターゲティングが重要になる
このように用途によって、傾向やポイントがあります。「この目的とターゲットは何ユースになるかな?」と考えるときの参考にしてみてください。
この用途は、サイトの役割とも言い換えられます。目的とターゲットを定めていくと、サイトの役割が見えてくるのです。
複数のサイトを運用している企業も多いと思います。それぞれのサイトの目的とターゲットをまとめ、役割を定義してみてください。「サイト群の中で、今回リニューアルするサイトにどんな役割を持たせるか?」という観点も、目的とターゲットを定める助けになるでしょう。
目標設定をする
目的が定まったら、それを達成するために実現したいことを考えます。それらを目標として設定できるといいでしょう。
例えば、「商談機会をつくって、業績アップをしていく」という目的なら、相談数や資料ダウンロード数が目標になるでしょう。更に、この目標を達成するためには、「フォームページのアクセス数」や「アクション前に見る製品ページのアクセス数」も重要な指標になるかもしれません。このようにプロセスを追いながら、目標指標を細分化していく手法もあります。これらの指標を、一般的にKPI(Key Perfomance Indicatorの略、重要業績評価指標)といいます。
細分化した指標は、アクセス解析をしながら検討した方が効果的なので、RFPの段階では必要ありません。RFPでは、相談数や資料ダウンロード数のようなアクションの目標を設定できるといいでしょう。
このように目標は、数値で設定・測定できるものがいいです。効果測定をしながら、次の施策を検討することができるからです。
しかし、BtoBサイトは上の用途別のポイントでまとめたように、目標を数値化しずらいケースも多いです。その際は、以下のような方法も考えられるでしょう。
- アクセス解析から取得可能で、仮説をベースにした行動を評価する
- ユーザーの声を定期的にアンケートで収集し、評価する
サイトを調査するでも触れた弊社の実績からの参考値も参考にしてみてください。
RFPで目的が定まっていれば、目標設定はプロジェクトの中で制作会社と一緒に考えていってもいいものになります。
まとめ
サイトに関わる全ての思考と取り組みの起点になるのが、サイトの目的です。プロジェクトが始まり、原稿の作成や社内調整など、目の前のタスクに追われてくると、ついつい「何のためにリニューアルをするのか?」という当初の目的を忘れてしまうことがあります。そんな時に、RFPに記されたサイトの目的は、プロジェクトを正しい方向に戻す役割も持ってくれます。